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子連れ出勤は可能かどうか?これは子どもの目線で語られてほしいなと思う

先日、宮腰少子化担当大臣が、政府が子連れ出勤を前向きに検討しているという内容の発言をし、話題になっている。

わたしがSNSでフォローしているワーママたちからは、軒並み否定的な意見が続出した。肯定的な意見は、ごくごく限られた一部でしか見られなかった。

子連れ出勤が難しい理由

なぜ、こんなにも働く女性から子連れ出勤が現実的でないと批判されたのか。それは、以下のような理由があると考える。

1.子連れ通勤が大変すぎる
2.子どもの面倒を見ていたら仕事にならない
3.同じ職場に働く同僚み迷惑がかかる

これらの意見は本当にその通りだ。

わたしは子どもの体調不良時にリモートワークをすることが多いのだが、正直子どもが家にいる状況で仕事はあまり進まない。特に3歳の次男が体調不良で休んでいるときはほとんど仕事にならず、子どもにテレビを見せているあいだに仕事をし、終わらない分は子どもが寝静まった真夜中に仕事をするという状況だ。
体調不良の数日だけなら数日の寝不足に耐えれば良いだけだが、これが日常的な子連れ出勤となると話は別だろう。

子どもは母親と一緒にいたほうが幸せなのか?

そもそも「子どもは母親と一緒にいたほうが良い」というのは、はたして本当にそうだろうか?

3歳児神話が科学的に否定されている現在でも、わたしたちは子どもを預けることに若干の後ろめたさを感じているように思う。特に上の世代では、この根拠のない「子どもは母親と一緒にいたほうが幸せ」ということを信じている人が多い。

でも、よく考えてみてほしい。
職場が、本当に子どもを過ごすために良い環境なのかということを。

赤ちゃんは大人に比べて寝る時間がとても長いものではあるが、おっぱいを飲んで寝ているだけという時期は意外と少ない。1歳を過ぎれば昼間に2~3時間お昼寝をするだけだ。

寝返りを打ったりハイハイをしたり、つかまり立ちをしたり、よちよち歩きをしたり…こういうことは子どもの発達にともない必要なことだが、職場にそれをさせられる環境はあるのだろうか?

保育園では、1歳を過ぎた子どもは成長と発達を促すために、午前中に公園に行ったり運動をしたりといった活動をする。規則正しい生活習慣を身に付けられるように、毎日同じ時間にご飯を食べ、同じ時間にお昼寝をする。いくら母親だからといって、職場で仕事をしながら片手間に子どもに必要な環境を与えられるのだろうか?

どう考えても、わたしの中での答えはNOである。
乳幼児のお世話は、仕事をしながら片手間でできるものではない。

子どもの成長を考えれば、環境が整った保育園で、きちんと子どもの発達や教育について学んだプロの保育士にお世話されたほうが良いだろう。子連れ出勤は本当に「子どもにとって」安心できることなのか、その視点で考えれば、待機児童の解消の解決策は子連れ出勤ではないだろう。

子連れ出勤は子どもにとって良くないことか

わたしは、乳幼児の子連れ出勤は原則的には否定的だ。しかし一方で、状況によっては子連れ出勤がセーフティネットになり得るのではないかとも感じている。

長男が小学生になってから、子育てと仕事のしにくさの質が大きく変わった。

保育園は第2の家のようなものだ。子どもは好きなことをして過ごすことができる。また、長男の保育園は1学年10名という少人数の園で1歳からメンバーの入れ替わりもなかったことから、お互いがきょうだいのように成長した。多少子ども同士の喧嘩があっても、それはきょうだい喧嘩のようなもので、次の日に会えばお互いにケロッとしていたものだ。

しかし小学校に入ると、これまでに比べて多くのことが変化する。これまでは保育園で遊んで過ごしていたのが、小学校に入ると勉強が始まる。最初のころは長時間椅子に座ることは最初のうちは大変なことだろうし、授業と授業のあいだの休み時間は10分だけだ。

さらに共働き家庭では、学童という新たな場所にも慣れなければいけない。
とにかく、小学校1年生は、環境に慣れるのが大変だ。その中で子どもが「今日はしんどいから休みたい」と言うことが何度かあった。

また、5~6歳ごろから子ども同士の人間関係は複雑になっていく。うちの長男も、小学校に入ってからちょっとしたお友だちとのトラブルがあった。女の子など早い子では年中さん・年長さんから、人間関係のトラブルで幼稚園や保育園に行きたくないということがあるだろう。

しかし体調不良と違い、子どもの精神的なケアのために会社を休むということは、なかなか難しいことだろう。ただでさえ、共働き家庭では子どもの体調不良のために会社を休み、心苦しい思いをしている人が多いのだ。子どもの気持ちを考えると学校や保育園・幼稚園を休ませてあげたいと思っても、実際には子どもを無理に送り出さざるを得ないというのが実情なのではないだろうか。

そういうときに、子連れ出勤ができればと思う。子どもも、ある程度大きくなったら、職場で静かに過ごすことができる。ときには「お母さん」「お父さん」と声をかけられ邪魔をされることはあるだろう。しかし基本的には、絵をかいたり、動画を見たり、本を読んだり過ごすことができるのだ。

子どもにとっても、気持ちが疲れているときに無理に学校や保育園・幼稚園に行かずに済むこと、親の仕事をする姿を横目に自分の好きなことをすることは、良いリフレッシュになるのではないだろうか。

また、小学校に入ると夏休み・冬休み・春休みという長期休暇がある。共働き家庭の子どもは長期休暇中に学童保育で過ごすことが多い。しかし、学童保育が合わずに長期休暇中に鍵っ子をするという家庭は意外と多い。そうなると、子どもが安全に過ごせているか親は心配だろうし、子どもも親が帰ってくるまでひとりで過ごすのは不安だろう。子どもが学童と合わなかったときに、子連れ出勤ができれば…親にとってだけでなく、子どもにとっても安心・安全につながるのではないか。

そう考えると、一概に子連れ出勤はダメだ、とは言い切れないなと思う。子どもの安心・安全を守りながら仕事を続けるためのセーフティネットとして、企業が「うちの会社は子連れ出勤もできますよ」とするのは、とても良いことなのではないかなと感じる。

「子どもにとって良いことは何か?」をベースに

わたしたちが子どものころに比べ、共働き家庭は確実に増加している。それにともなう待機児童問題は深刻だ。毎年のように、1月~3月には子どもを保育園に預けられなかった家庭の悲鳴が聞こえる。

そのようなな中で今回注目された子連れ出勤だが、待機児童の解消には良い解決方法ではないだろう。残念ながら、乳幼児にとって子連れ出勤は良い環境とは言えないのだ。政府が推進するべきは、子連れ出勤ではなく、質の高い保育園の拡充だ。働き続けたいと考える全ての保護者が、安心して子どもを預けられる世の中をつくることが、行政の役目だと考える。

一方で、子どもが安心して育つ環境を社会で作っていこうとしたときに、わたしたちができることはひとつではないはずだ。子どもにとって良いのであれば、子連れ出勤はどんどん解禁されれば良いと思うし(繰り返すが、これは行政が推進するべきことではないと思うが)そのほかにもいろいろなアイデアはあるだろう。

そのときに忘れてはいけないのは、「それは子どもにとって良いことなのか?」という視点なのではないかと思う。

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