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氷室冴子をリレーする 少女小説は死なない!

付き添いのために行った歯医者の待合室のテレビ。
そんな番組があることも知らず、たまたまの偶然で見ることができました。
氷室冴子をリレーする

大好きな作家さんです。
多分、ど真ん中世代。
番組で氷室冴子について語っていた方々同様、物書きになる上で最も影響を受けたのが氷室先生でした。
(自分を物書きなどというのはおこがましいのですが)

投稿作品が受賞して、初めて担当さんがついた時に聞かれました。
「会ってみたい作家は?」
迷わず答えてましたね。
「氷室冴子先生です」

けれど、その頃すでに氷室先生は執筆を控えてらした様子もあり、ついぞその願いは叶うことはありませんでした。
ご病気で亡くなられたことを知った時には、相当に落ち込んだ。
その時の氷室先生の年齢を、すでに自分がこえていたということにも驚きました。
早すぎますよね。
改めて、もったいない…。

氷室先生の小説は、自分の書く小説のみならず、生きる姿勢や価値観ふくめ、それはもう影響受けまくりでした。

<クララ白書・アグネス白書>
氷室冴子のまごうかたなき代表作。
出会いは中学生。
小説家になりたかった私は、”クララ白書”の「菊花」に自分を投影。
漫画家になることを親に反対され、隠れて描いて、実力行使で認めさせる。
今だに、その考え方好きですし、物書きやる者たるや、そのくらいのハングリー必要と思ってます(昭和的笑)

今は、もっとライトに、作品を発表できる場がありますもんね…。
菊花も今ならpixivとかやっているのかもしれない。


<なぎさボーイ>
男子一人称小説を書く上で、”なぎさボーイ”の影響をもろかぶり。
それまで書こうという発想がなかった、男子主人公もの。
なぎさボーイの登場で、格段に描き易くなりました。
結果、デビューのきっかけとなった受賞作は、男子の一人称。
かくして、出版していただいた数冊はすべて男子主人公となりました。

↓Kindleだと表紙を並べられないのが残念!
並べ方で二人がフン!ってしているようにも、向き合っているようにも見える仕様なのです。



<なんて素敵にジャパネスク>

あるあるですが”ざ、ちぇんじ”や”なんて素敵にジャパネスク”は、古典にハマるきっかけを作ってくれました。
”ジャパネスク”の吉野君回では、もう号泣。
立ち直れんくらい泣いた。
つい5年前のこと、職場で出会った同僚と吉野君で大盛り上がりしました。
そのぐらい、私の世代の読書家は氷室冴子の影響下にありましたね。

瑠璃姫を富田靖子でドラマ化された際は、女中役かなんかで一般公募があり、マジで応募しようかと悩んだ覚えが…笑


<シンデレラ迷宮>
”さようならアルルカン”のような、初期の純文学的作品も好きだし、マンガチックな雑居時代も好き。
でも、ひとつだけマイベストを選べと言われたら”シンデレラ迷宮”。

主人公だけが物語の主演者じゃない、という発想が好き。
脇役にも必ず主役のストーリーがあって、たまたま交錯した一瞬が物語として切り取られているだけ。

これ、現職のカウンセリングをやる上でも、かなり大事な視点だと思っています。
目の前にいるクライエントには、その人なりの主役のストリーがあるけれど、彼らの話に出てくる脇役にも必ず自分を主演としたストーリーがある。
なので、彼らの物語の全貌を理解するには、すべての登場人物が主人公になった時のストーリーを想像するようにしています。

そもそも、氷室先生は、視点の転換の物語がとても達者です。
なぎさボーイ、多恵子ガールはその代表作ですね。
同じ場面を違う立場から見ればどうなるのか。
一方から見れば、不当に見えることでも、他方の視点から見るとその行動には正当な意味がある。
人の行動は多面性があって、見方によって、良いも悪いも内包している。
圧倒的な善もなければ悪もない。
氷室作品を通して、そのことに気付かされました。


<少女小説家は死なない!>
破天荒少女小説家火村彩子先生の物語。
小説家って、こんななの?
と思い笑っちゃう。
内容は、はちゃめちゃで面白い。

「少女小説家」というワードについて。
氷室先生がその立場に、色んな葛藤というか、複雑な思いがあったことを思い出します。
やはり、当時は少女小説ジャンルって、ちょっと軽く見られていたのだと。
文壇にも男女差別とか、あったんだろうし。
おっさん作家とかには、オンナ子どもの読むもの…と思われていたのも想像に難くない。


少女小説は、その後、”ライトノベル”と呼ばれるジャンルに合流。
さらにはエンタメ小説と丸められてくると、最近ではラノベだ文学だって敷居もなくなってきてるのではないでしょうか。
小野不由美さんをはじめとした、筆力のあるラノベ出身作家さんの出現も大きいと思います。
が、その話はまたの機会に。

私は「少女小説」というジャンルを、非常に愛おしく思っています。
純文学チックな繊細さと、コミックチックな大胆さを包含しつつ、融合進化させている。
だからこそ、
子どもでありながら大人で、少女でありながら少年性も持っている。
そんな、思春期女子に、寄り添える物語になるのだと思うのです。


* * *

NHK「氷室冴子をリレーする」
非常に懐かしい気持ちにさせられました。

中学生の娘には、なぎさボーイシリーズとシンデレラシリーズを勧めて読んでもらいました。
次は、クララ白書で、スマホのない青春を体感してもらうも良し。
はたまた、平安時代で吉野君にギャン泣きしてもらうも良し…。
(ちなみに自分は鷹男派だった…)

文庫も全巻保管していますが、Kindleでも読めるようだから、自分も読み直してみたくなりました。

それにしても、今、この多様化の時代に氷室先生がいらしたら…
どんな作品を書くのだろうか。
想像することしかでいないのが、本当に本当に残念…。



「海がきこえる」
ジブリアニメにもなりました
オーソドックスに見えて心理描写が細やかな青春小説


「冴子の東京物語」
氷室先生のエッセイは、読んでいた記憶があまりないのですが、懐かしさに今回購入してみました



海が聞こえる

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