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不適切にもほどがある#7 考察して観ちゃダメですか?(回収不要)


市郎と純子が阪神淡路大震災で亡くなっていることがわかってから、一気にタイムトラベルの意味づけが切なった。
タイムトラベルものにおいて、過去を変えてはいけないという大原則は、あらゆる切ない状況を作り出す。

”時をかけるな、恋人たち”の記事でもちょっと書いたけれど、スマホのおかげで物理的距離と心理的距離がイコールではなくなった令和の世。切ない遠距離恋愛を描きたいとしたら、やはり時を越えるしかないのだな…。
筒井康隆先生のフォーマットが、令和でもなお健在だというのが逆にすごい。

時恋は、時間軸のずれによる恋の行き違いの大回収をするストーリーだったのだが、それでも人の死だけは回避できなかった(というか、しなかった)
さて、ふてほどはどうするのだろう。
自分がいつどんな形で死ぬかを知っていて、さらには自分だけでなく最愛の娘の死を知って、それを回避しない選択なんてできるのだろうか…。

地震の前に、娘家族を東京に呼び寄せないの?せめて、飲み明かした朝、駅に行くのはやめるでしょ。絶対に。
でも、そんなことをした時点で、渚っちは”今の”渚っちではなくなるかもしれないし…。
これ、どう回収するんだろう?
この想いが、溜まりに溜まったところでの”回収しなきゃダメですか”。
やられた!

7話は、考察視聴スタイルに対する苦言との捉え方もあるようだけれど、どちらかというと、作り手がそれに囚われすぎるなと言いたいのではないかと。
だって、ドラマはあーだこーだ展開を予想しながら観るもんでしょ、視聴者としては。

私も、昔から、あーだこーだ考えながら見るのが好きな筋金入りの昭和のテレビっ子。身近にいた話せる友人が転勤してしまい、反動でnoteなんぞを初めてしまったわけで…。
で、そのあーだこーだに”考察”という名前がついてしまったところで、あーだこーだが市民権を得てしまったのかな。

考察するのはいいけれど、気になった全てが回収されないと作り手側の不備かのように批判することは違うのだと思う。

* * *

自分も”感想”ではなく、”考察”とタイトルに書いちゃってる時点で、ブーメランw
そういえば、おっさんずラブチームが手がけた"unknown"。
正統考察系の顔をして登場したので、一生分の"unknown"って文字を打ったと思うぐらい、ガシガシ考察記事を出してしまったのだけれど、結果、最終回を見終わってこうなった↓

あのドラマの真のメッセージは、”わからないことをわからないままに抱えていくことこそ、読み解くことよりも大事”ってことだった。
だから"unknown"。

VIVANTも大好きゆえに、めちゃくちゃ考察しちゃったけれど、福澤克雄監督は、「考察系だと思って作ってない」とインタビューの中でおっしゃっていたよなあ。

でも、何かのドラマのように、”張り巡らされた伏線!”とか銘打っちゃって始まった場合、一応回収望んでしまう気持ちもあるのよ。

ドラマの現場では、考察視聴について、色々と思うところあるのだろうか…と思わされたふてほど7話。
どうせ市郎が言うように、リアルタイム視聴ハッシュタグつけて呟く最中は、ちゃんと観ているわけないの。勝手な感想をぶつけている視聴者ひとりひとりに寄り添おうなんて思ったら、物語はブレブレになるはず。
だから、どんなドラマも作り手がやりたいことをやりたいようにぶつけてほしいと、ドラマ好きとしては思ってしまう。

考察する時は、回収されなかったことに対する批判は己の考察に向けられるべき、と思っている自分。故に、毎回反省会を開くことになるw


*  *  *

でも、これがドラマじゃなくて、人の人生に対して、表から裏まで考察しちゃって過去から未来までも非難の対象にするとなったらどうだろう。それってもう、考察じゃなくて揚げ足取りと呼ぶのではないの?
これは、8話の”1回しくじったらダメですか”にもつながるような気がする。

一億総批評家・考察家のような空気の中で、純子が出会った美容師ナオキは異質とさえ思える。
純子が昭和からタイムトラベルしてきたと知っても、そこを全く追求しない。ふわっとした情報を飲み込んで…いや、もう飲み込んでもいないのかもしれない。
辻褄とか裏の裏とか、そんなことには全く頓着しなさそうなナオキ。たまたま観た回が面白ければ、それは好きなドラマと彼は言う。

彼の中の純子は、切り取った情報でしか構成されていない。けれどナオキは、ドラマの第6話だけでも楽しめる人。全てを理解していなくても、いまここにいる純子との時間を大切にできる。
ナオキの頓着のなさというか、物事を受け止めるゆるやかさこそ、生きにくさを解消していくものなんじゃないかと思ったりもする


なーんつって。
こんな風に、ドラマに対して、あーだこーだ言っちゃって楽しむのは許しくれないかなー。
だって、作り手の意図を読み解きながら見るのも楽しいんだもん。回収しなくていいんです。
だから、考察して観ちゃダメですか?


ふとほど考察ではなくて感想まとめ


令和の遠距離恋愛は時空ごえ 時恋の感想はこちら


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