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犬や猫じゃなくヤギを飼ってみた

こんなにかわいい生き物があったなんて……
手はかからない。雑草を食べてくれる。甘えくる。それに丈夫だし。
私が車で帰宅すると、「お帰り〜」と言うように「め〜め〜」と鳴く。
近づくとしっぽを振って、もっともっとこっちにきてといわんばかりだ。
さらに近づくと、頭をすり付けてくる。隣に腰を下ろして座ると、横に一緒に座ってくる。

ヤギとお散歩をしてみると、珍しいので皆の注目を浴びる。あちこちで話しかけられ、人気者だ。

ヤギのミルクは栄養満点だとか…時々「私はヤギのミルクで育ったのよ」という年配の方に出会う。田舎では普通にヤギが飼われていたらしい。

普段はひたすら草を食べては一休みしている。文句も言わずひたすらその生活だ。

本当にヤギはかわいい。こんなにかわいいなんて知らなかった。

子供の頃「狼と7匹のやぎ」のお話が好きだったな。寝る前に母親がいつも聞かせてくれたお話。お母さんヤギがお買い物に出掛けたちょっとした隙に、あれほど「騙されてはいけませんよ」と注意したにもかかわらず、狼に騙されて食べられてしまったヤギの兄弟達。このお話を聞きながら、私は絶対に騙されないと子供心に固く心に誓ったっけ。毎晩、私は騙されないぞと誓いながら眠りについた。

そのせいか、私は簡単には騙されない。それに比べて夫はすぐに人に騙される。本当によくもまあ、そこまで人に騙される人はなかなかいないだろうと思う程、今まで騙されてきたことは数えきれない。「人が良い」を通り越している。他人どころか兄弟や親にまで簡単に騙され、お金を巻き上げられる始末。夫は、子供の頃、「狼と7匹のやぎ」の話を読み聞かせされてなかったらしい。「狼と7匹のやぎ」どころか、読み聞かせなんて1回もされたことがないという。

考えてみると、昔話や童話には生きていくための「大切なこと」がたくさん詰まっている。私はこの「大切なこと」を母の読み聞かせの中で学んできたように思う。フルタイムで仕事をしていた母が、毎晩私に読み聞かせをするのはとても大変なことだっただろう。この時間が、私の貴重な時間だった。読み聞かせは道徳の時間でもあり、温もりの時間だ。本当は子供にとって最も大切な時間じゃないかと思う。

今、ヤギといるとその頃の母を思い出す。いつも私を待っていてくれ、どんな時も優しいヤギ。いつも隣でいてくれるヤギ。文句ひとつ言わずに草を食べるヤギ。それは、まさに亡き母だ。

ヤギに「もしかしてお母さん?」って呼んでみた。ヤギは黙ってしっぽを振っていた。


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