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地域で育ち、育て合う"おおきなかぞく" 〜熊倉聖子さんに聞く「子育てと介護」〜

小さい頃、夜9時からテレビ放送される映画を家族4人揃って見た。私は一番小さくて大抵は途中で寝てしまったけれど。でも、そう広くないソファでぎゅうぎゅうにくっついたまま、いつの間にか終わった映画の結末を口々に聞かされる時間も、あたたかい家族団らんだった。

聖子さんが語ってくれた取り組みの中でもっとも印象的だったのは、小さいお子さんとお母さん、大学生とそのおばあちゃんなど15人ほどが集まって、ある映画をテーマに語り合うというワークショップ

3歳に満たない子供から、80代のおばあちゃんまで。その人たちは生活を共にしているわけでもないし、配偶者や血縁関係にもない。でも、私は聖子さんが語るその風景に、小さい頃の家族団らんの記憶が重なった。

結婚、妊娠、そして介護が同時に

聖子さんは10年前、結婚と同時に妊娠し、同じタイミングで、認知症が進み始めていた義理のお父さんの介護が始まった。初めての子育て、初めての介護。

孤独な子育ての悩みを誰かと共有したい」と参加した子育てサークルには、同世代のお母さんと子供たちが集まっている。一方、介護の相談で高齢者施設に行けばお年寄りばかりが。

ただ、聖子さんはキラキラした赤ちゃんと、弱りゆく養父と、ひとつの身体で忙(せわ)しなく向き合わなければならず、そのギャップに心が追いつかない。子育てと介護の両方に、同時に関わる人ならではの悩みを相談できる場所は、見当たらなかった。

一方、自宅でふと見ると、認知症の養父が孫といるときは機嫌が良く、表情が和らぐ。孫も手遊びで遊んでもらって楽しそう。その事に気づくと、子供達を園に送る車とデイサービスのバスが毎朝すれ違う、見慣れた光景にも違和感を感じるようになった。

「子育てと介護。家の中では一緒なのに、どうして社会では一緒にならないんだろう」

長女が2才になったとき、山梨県清里で開かれた対話のワークショップに参加。聖子さんが提案した「子育てと介護」というテーマに、「そのふたつの両立ってあるんだ!」と多くの人が関心をもってくれた。

そこで初めて気づいた。「家族の問題って家族だけで解決できないけど、ちょっと外からの風が入って話ができたり、対話ができることでそれだけでも心が軽くなるし風通しが良くなるなあって。そうゆうような活動をしてみたいなあと思って。」

家族の内側の問題を、地域や社会など、家族の外側にまで広げて考えるきっかけになる体験だった。

”おおきなかぞく”の取り組み

そんな漠然とした思いが形になったのはそれから約3年後。東日本大震災後に、家族で関東から京都に移住してからだ。

知り合ったお母さんたちと一緒に、お互いの子供を育て合う自主保育を始めたが、やはり、お母さんと子供だけだと、それぞれの子供に精一杯で心に余裕がなくなってしまう。全員がほぼ同世代ということで、知り得る情報や考え方にも偏りがあることも気になった。

そんな時、「高齢者が地域と関わる場作りがしたい」と話す1人の大学生に出会い、一緒に始めたのが”おおきなかぞく”の取り組みだ。

月に1回ほど、みんなで地域のおばあちゃんのお家に集まって、畑で野菜を作ったり、陶芸したり、冬にはみんなで鍋を囲んだり。冒頭の、映画について語り合うワークショップもそのひとつだった。

おばあちゃんがちょっと赤ちゃんの面倒を見ていてくれる間にお母さん同士がゆっくり話したり、知らなかった知識を教えてもらったり。血はつながっていないけれど、まるで自分のおばあちゃんが隣にいてくれるような感覚だったという。

「それはもうすごい楽しくて。おばあちゃんたち、どうしてるかなあ、とか、会いたいなあ、とか、今でも思う」

”おおきなかぞく”は1年ほど続いたあと、聖子さんが3人目の子どもを妊娠・出産したこと、他のメンバーの状況も変わったため、今はお休み期間に入っている。

多世代が関わり合い、育てあう暮らし

今、聖子さんは、幸せな組織改革を提案するNPO法人「場とつながりラボ home’s vi (ホームズ ヴィ)」に所属し、経理を担当する傍ら、ファシリテーションや、新しい組織・社会のあり方を学んでいる。

学びながら、考えていることがある。
「若い家族と高齢者が、別々の部屋に暮らしながらも、食事は一緒にできるスペースがある集合住宅とか、幼稚園と老人ホームが一緒になっている施設とか。京都でそうゆうのできたらすごくいいのになって。次はそれがやりたいなあって。」

朗らかに、楽しげに、夢を語る聖子さんに、今も続く毎日の育児や介護の苦労は感じない。家族の中だけでは解決できない問題を、家族以外の人との関わり合いによって切り開いた人ならではの快活さと強さがある。

聖子さんがつくった”おおきなかぞく”に参加した子供たちはどう育つのだろう。懐かしく思い出す”かぞく団らん”の記憶に映るのが、お隣のおばあちゃんたちである未来もおもしろい。

(文・写真/西濱萌根)





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