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インタビューを通じて「伝えること」の本質を理解する ~書くことを学び合う仲間と出会う“みんなごと”宣伝部・1日目~

手紙や作文を書いたことは幾度もあるのに、「文章をうまく書こう」とすると途端に手が止まる。これで正しいのだろうか、誰かにを読んでもらえるような“きちんとした”文章なのだろうか、と。

1/12・2/2の二日間にわたって開催された「書くことを学び合う仲間と出会う“みんなごと”宣伝部」。まちづくり推進事業「まちづくり・お宝バンク」の取組提案者の中から「自分の活動をもっと世の中にひろめていきたい」そんな思いをもつ方たちが集い、インタビューを通じて「伝わる文章」を書くために大切なことを学びました。

参加した皆さん一人一人に向き合い、文章と向き合うことの奥深さを教えてくださったのは杉本恭子さん。ソーシャルグッドな活動紹介を行うwebマガジン「greenz.jp」でシニアライターとして活躍し、他にも「彼岸寺」「雛形」など、様々なメディアで多くのインタビュー記事を執筆されています。

受講生の皆さんがこの二日間の講座を通じ、何を学び、どう変化していったのか。レポートを通じてお伝えしていきます。

素直になれば必ず書ける!?自分へのインタビュー

これから始まる講座を前に、参加者の皆さんの受講理由を聞くと「何をどう書けばいいのか悩んでいる」「文章を書くことがそもそも苦手」という答えがちらほら。皆さん、意気揚々と参加したというより、書くことに対してネガティブな印象が強い様子。

早速始まった講義では、まず「記事とは何か?」という学びからスタートました。記事の基本要素は5W1H(誰が、何を、いつ、どこで、どうして、どのようにしたのか)であること、読者は誰なのかを意識することなど、文章を構成するうえで必要な要素を確認しました。

そしてインタビューの基本となるイメージとして、杉本先生が
「インタビューする人の隣に座り、一緒に景色を見て「あれは何ですか?」と教えてもらう」という言葉を共有した時、ノートをとっていた何人かの顔がパッと上がりました。「テクニックがないとインタビューできない」と思っていた人にとって、大きなヒントとなったようです。

続いて皆さんに取り組んでいただいたのは、「自分の声を聞くこと」。「自分がなぜこの講座に参加したのか?」を5分間で文章にするワークです。ルールは、手を止めずに書き続けること。書いた文章は誰にも見せなくてもOKという条件付きでした。

書いた後は「書き続けていると自分の本音がみえてきた」「誰にも見られないから、リラックスして書くことができた」などという声が聞こえてきました。皆さん、自分の気持ちと向き合う面白さを感じられた様子。ここからインタビューの実践のポイントを学んでいきます。

相手の発した言葉の中に必ず道しるべがある

インタビューは自分の聞きたいことを「聞く」のではなく、インタビュイーである相手の声を「聴く」ことが重要だと杉本さんは言います。「相手の言葉の中に道しるべがある」。

ゆっくり話す人や早口で話す人、話すときの表情も人それぞれ。自分のペースで話を進めてしまっては、相手の話したい思いを遮ってしまうかもしれません。また相手の言葉の中には、文章を構成するうえで必要な情報が隠れていることもあります。

相手の話を注意深く聞き、その内容から次の質問をすることで、自然と相手の見ている景色に降りていくことができるようになっていく」と杉本さんは話します。

また、杉本さんは「人はみな固有の歌を歌っている」ということも教えてくれました。例えば好きな人を話すときの声は温かく、若い時の話をするときは溌溂とした声になる。話し方の癖やテンポは人それぞれ。その人オリジナルの歌を歌うように、人は話をしているのです。

人が発する言葉の奥深さをじっと噛みしめる皆さん。インタビューの大切な部分をしっかり学んだところで次のステップ「インタビュー初級編」にうつります。

一つの問いから無限の旅がはじまっていく、インタビュー初級編

「インタビュー初級編」で、皆さんに取り組んでいただいたのは、隣の人同士で7分間インタビューを行い、その内容を200文字でまとめるというワーク。実践前に杉本さんがお手本を見せてくださいました。

インタビュイーは主催者である“みんなごと”のまちづくり推進事業の東 信史さん。「なぜ“みんなごと”宣伝部を作ろうと思ったのか?」という問いを起点にインタビューが始まりました。

ひとつの問いに対する応答から次の問いを立て、7分間のやりとりの中で、東さんの想いをしっかりと聴く杉本先生。今まで学んだことを目の当たりにしたことで、インタビューに対する理解度が増した様子でした。

そして今度は受講者の皆さんがインタビューを実践する番。インタビューの問いは「あなたはどんな活動を?」。お互いにインタビューを行い、さらにそれを200文字の文章にまとめていきます。

時間の制約があったのにも関わらず、終わってみるとほとんどの人が書き終えることができていました。あれ、皆さん、さっきまで文章が書けないって言ってませんでしたっけ?

このワークを終えて「インタビューっておもしろい!」「意外に文章が書けることにびっくりした」という声もでてきました。皆さん、書くことに対する気持ちが少しほぐれてきたようです。

ポートレート撮影に、インタビュー…本格的に記事を作成する実践編

午後からはいよいよ、本格的に記事を作る「実践編」。先ほどの記事作成ではたった200文字でしたが、今度は起承転結を踏まえて1500文字の記事を書いて“みんなごと”宣伝部として発表することになります。

まずは記事に使用するポートレート撮影からスタート。写真は、文章に臨場感を持たせてくれる重要な役割。光の当たり方や、構図などの基礎知識や、「その人らしさ」が伝わる写真を撮影するコツを学びます。何チームかは外での撮影にトライ。背景やポーズに工夫をもたせてポートレートを撮ります。

撮影終了もつかの間、次はインタビューの実践へ。先ほどのインタビューでコツをつかんだのか、どのペアも調子よくインタビューが進んでいる様子。

けれどインタビューをする声に耳をかたむけていると、あれれ…。先ほど杉本さんが伝えた相手の声の聴き方を忘れ、自分の聞きたいことを中心に聞いてしまっている方も。

次回までの宿題は、インタビューの文字起こしを行い、草稿を作成すること。インタビューを実践してみて、改めて「聴くこと」「伝えること」の難しさに直面した皆さん。

3週間後までに作成した草稿をブラッシュアップさせ、記事の完成を目指していきます。果たして、無事に記事は出来上がるのでしょうか。

(写真/東信史、文/三上由香利