映画『夜明け告げるルーのうた』感想
2017年6月
当初全く見る予定ではなく、公式サイトを見ても「ポニョの焼き直し?」ぐらいにしか思ってませんでした。
が、ひょんなきっかけで見に言ったら、映画館の座席が揺れるくらいの嗚咽が漏れる号泣っぷりを発揮した映画です。
3日後ぐらいにもう一回見に行きました。
見る前の自分を猛省したい。
ちなみに私はジブリ映画をほとんど見たことがなく、トトロとラピュタともののけとナウシカが金曜ロードショーでやってる時にかいつまんでチラ見するぐらいです。
人魚幼女とか、洪水(海辺の街)とか、幼女が「すきー!」っていうあたりとかで「ポニョっぽい」って思ってたのですが、監督的には全然意識してなかったらしい。
テーマとしては「思ったことを率直に伝えることの大切さ」がメイン。
http://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1495095334
この作品、クレヨンしんちゃんなどでも有名な湯浅監督の初オリジナル作品なのですね。
あまりクレヨンしんちゃん見たことないのですが、
・独特のアニメーションの動き
・音楽演出
・絵本のような色彩
なんかはすごく特徴的だなー、と感じました。
きっと監督やアニメーションスタジオの特徴なのでしょう。
このへんは詳しくないので、脚本廚の私らしく脚本の話をば。
監督が意識してない、とは言え、あえて深読みするならば、
ポニョは『母体の中で守られる話』で、ルーのうたは『母体から出て生まれる話』という感じでした。
「しがらみにとらわれず素直に伝えること」というテーマを踏まえると、『新しい誕生』っぽく感じたのは、なんとなく納得。
話の詳細も含めて、この映画の良かったなぁ、と感じたポイントをいくつか挙げます。
■若者と老人(負い目というものについて)
主人公は高校生なのですが、話全体を通して主人公側の高校生たち(とルー)vs 町の大人、の構図があります。
そして大人の中にでも特徴的なのは老人たち。
・母親を海に持って行かれた主人公の祖父
・恋人を海に持って行かれた老婆
たち、って言っても2人か(笑)
そして彼らはどちらもその出来事から海に対して特別な思いがあるのです。
憎さだけではない、半分負い目のようなものに近いのではないかと思いました。
■日無町から日の出町へ
最初は日の当たらない街「日無町」でしたが、日を遮っていた岩が崩壊したことで、街に日が当たるようになります。
これは、「胎内からの誕生」なのかなー、と思ったり思わなかったり。
■「母親」のいない街
この街には総じて「母親」という存在がいません。
姉のような存在ならギリいたり、道端で井戸端会議する奥様、みたいなものはいるのですが、メインの登場人物に関しての「母親」はことごとくいません。
主人公の母親は遠いところにいて、物語の最後に母親に会いに行く(向き合う)ことになりますが、これは「海」にこの町が守られていることとやっぱり関係があるんだろうなぁ。
■人間じゃないもの=圧倒的な善
そしてこの世界では、人間の悪意によって「人ではないもの(=ルーたち)」が迫害されることはあっても、「人ではないもの(=ルーたち)」は徹底して人に報復したり襲ったりしません。
それどころか、人間を助けてくれます。(ルーの友達の種族だからなのかもしれませんが)
これがまた、世界をとてもきれいに見せています。
「許す」存在なんです。
そんなこんなで、「夜明けを告げるルーのうた」ぜひあなたもご覧くださませ。
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