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ある労働運動指導者の遺言 足立実の『ひと言』第74回「一週間の出来事 民衆の自発的行動」 1992年5月10日

 岡山の「私たちの県政を! 一万人の会」が「岡山県知事になりませんか」と候補を公募したら十九人が応募したそうだ。現知事は五選、県議会は自社公民オール与党で、「議会はチェック機能を果たしてない。候補の選定から県民がやろう」と運動を始めたという。
 大阪の大東市長選では元小学校長が、市民団体の後押しで「市民が主人公の政治を!」と訴えて、五党推薦で五選をめざした現職市長を破った。
 七〇年安保当時の全学連委員長の藤本敏夫氏(夫人は歌手加藤登紀子)がもとの運動仲間の支援で参院選に出馬する。「中小業者のファシズムへのあこがれ」に危機感をもったのが動機という。
 みんな民衆の身銭を切った勇気ある行動だが、偶然の一致だろうか?
 新たな胎動の始まりだろうか?
 自民党に財界・官僚との腐れ縁を断ち切れると信じる人はいない。毒は野党にも流れている。共産党は自分に対する態度で人を選別するから、国民を広く結集できないでいる。茨城県の参院補選の投票率が二二%だったのは、既成政党への失望の現れだと思う。
 「それなら」と民衆が動いて自分たちの政治をつくり始めたのか? 津々浦々でやり出せば日本は変化するだろう。
 注目しようではないか。 (実)

(画像は1992年の参院選に環境政党「希望」を結党し立候補した元全学連委員長の藤本敏夫さんの晩年の画像。夫人の加藤登紀子さんと)

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この年の岡山県知事選挙も自治省出身の官僚長野士郎氏が当選し、結局、長野氏は6期24年の長きにわたり知事職を務めた。

彼は当初は反自民で当選を果たしたが、その後コラムにもあるように「自社公民オール与党」となり、県政の停滞を招いた。

特に、任期終盤においては強引な大規模公共事業の展開により、県財政に約8000億円に上る累積債務という負の遺産を残し、当初「地方自治の神様」とも称されていたが任期後半は「地方自治の悪魔」とまで呼ばれた。

このようなオール与党に対しても民衆の不満が自発的に当時巻き起こったのであろうが、長野県政を引きずり落とすことは出来なかったようである。

また、元全学連委員長の藤本敏夫氏もこの年、環境政党「希望」を結党し参院選に立候補するが落選した。

このように当時から民衆の自発的決起は盛んに行われていたが、現在に至るまで(一時期民主党が政権をとった時期もあったが)腐敗した自民党政権が続いている。

近年にも、安倍内閣の安保法制強行成立の際の国会前における反対行動、また最近においては安倍晋三の国葬に反対する労働者市民の運動が盛り上りをみせたが、自公政権を打倒するには至っていない。

筆者は当時の民衆の動きに「注目」していたが、コラムにもあるように日本の「津々浦々でやり出せば日本は変化する」ことを信じてやり続けるしかないであろう。

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