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ある労働運動指導者の遺言 足立実の『ひと言』第73回「あなたは何をやるか 92春闘」 1992年3月10日

 東部労組の良い伝統の一つは「寄ってたかって闘う」ことだと思う。
 どこの支部でも全員一人ひとりが立ちあがり真剣に闘った思い出がある。
 その力で会社に解雇を撤回させたり、団結権を認めさせたり、違法行為や障害者差別を是正させたり、不当弾圧を粉砕したり、賃上げを実現したりして労働者の利益を守ってきた。大きい闘争は全支部から集まって勝利した。
 このように「寄ってたかって」は大事な武器だが、職場が少し安定すると、少数の執行委員が活動を請負い、多数の組合員は「執行部にお任せ」という良くない現象が生まれ、「寄ってたかって」の力が弱まる。
 「組合をつくって良くなった」と言う人は多いが、私は「一人ひとりが闘ったから良くなった」と言うべきだと思う。
 労働者にとって「一年の計は春闘に有り」で、力が問われる。福祉関係も春闘の成績が公務員の人事院勧告に反映し、それが給与の「差額」になる。
 組合員一人ひとり、春闘でどう要求するか、団体交渉をどう進めるか、職場でどう闘うか、団結と質の強化をどうやるか、他支部とどういう相互支援をするか、地域の労働者とどう共闘するかなどを、真剣に自分から話し自ら行動しよう。
 やはり執行委員や活動家が鍵になる。
 代行主義を厳しく批判し、命令も遠慮もやめ、仲間の中に入り、一人ひとりが自発的に行動を起こすために、困難で忍耐強い活動にとりくもう。 (実)

(画像は「寄ってたかって」のイメージ。ウルトラマンが「寄ってたかって」怪獣をやっつけている)

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92春闘に向けての筆者のコラムである。

「寄ってたかって闘う」は筆者が指導する東部労組の伝統的スローガンであるが、これは労働者の「団結」を分かりやすく表現しているものであろう。

辞書をひくと「寄ってたかって」には「大勢が寄り集まって。みんなで。」とあり『―いじめる』などと否定的な文脈での用例が載せられているが、これは一人一人は資本家に比べて力が弱い労働者が「寄ってたかって団結する」ことによって強いものに対しても対抗うる力を持つことができるということを「逆手」にとった表現であり絶妙なスローガンではなかろうか?

また、このコラムではいわゆる組合活動家の「代行主義」についても厳しく批判している。

すなわち「代行主義」は「団結」とは相反する思想であり戒めなくてはならないと主張している。

コラム最後の節「代行主義を厳しく批判し、命令も遠慮もやめ、仲間の中に入り、一人ひとりが自発的に行動を起こすために、困難で忍耐強い活動にとりくもう」とは現在でも通じる労働運動の揺るがない指針であろう。

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