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おでん酒企業戦士の彼悼む

突然の訃報に思わず神様を疑った。 

俳句仲間で親友だった彼は銀行勤めで一歳年下。

企業の泥戦の中で毒されているぼくに比べて、真面目で誠実な彼の性格は一服の清涼剤のような存在であった。

バブル景気がはじけてから仕事が大変になったらしくほとんど会えなくなり、やがて不良債権処理のために故郷の四国へ転勤になったという情報が入ったのも人伝えであった。

安否が気になりながらも音信のない日々が続いていたが、突然俳句結社の事務所から急逝の連絡が 入って仰愕、幻でも見ているような気持ちで車を飛ばし、彼の実家を弔問した。

故人の思い出を語りながら、お父さんは自分の背中の傷跡を見せてくださった。戦禍の名残だそうだ。

腰に挿していた軍刀のつばに流れ弾が当って助かったことや、二度、三度と九死に一生を得た体験を話して下さった。

平和なこの時代にどうして息子が・・・。

と、逆縁の運命を呪われて絶句された。

ぼくはお父さんを慰めてあげる言葉が見つからなかった。 

 

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