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へぐら紀行

1発目の投稿はプロフィール紹介、というのが定番かと思いますが、とにかく早く舳倉島の思い出を綴りたくて仕方がないので、自己紹介は割愛させていただきます。それではどうぞ。

テクスト>>>写真 のバランスで作成した長文記事なので、PCあるいはスマホを横にして読まれることをお薦めします。野鳥の写真は是非タップして見てみてください。



事の起こりは決行2日前の木曜日。職場でお弁当を食べているときに家族からLINEが届く。
「週末に舳倉島行けないかなーなんて」


バードウォッチングを始めたのはちょうど一年ほど前のことだ。元々は航空祭の戦闘機撮影を目当てに超望遠レンズを購入した家族が「なんか普段レンズ持て余しちゃうし…」と野鳥を撮り始めたのがきっかけだった。

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↑家族が撮影。小松航空祭のブルーインパルス。

自分もそれに便乗して付いていくようになり、最初は「カモってこんなに種類多いんやな…」とか言っていた頃から季節がめぐり、カワセミのダイビングを眺め、南から渡ってきたカラフルな夏鳥たちを追いかけ、残暑厳しい海岸で千鳥たちが嘴を砂につんつん突っ込んでいる様を喜々として見つめていた。
そして最近また湖に現れてふよふよと風に流されているカモ類に(おかえり~)と心の中で呼びかけている。

自分達が住む石川県は海へも山へもアクセスがよく、且つ金沢の中心街にさえ兼六園や金沢城公園のようなオアシスがあるので、気軽に探鳥を楽しめる地域だと思う。

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↑家族が撮影。トモエガモ♂(左上)、カワセミ♂(右上)、オオルリ♂(左下)、ヘラシギ(右下)。


01 舳倉島とは?

<へぐらじま>と読む、石川県最北端の島の存在を知ったのは、今年の年明けあたりだっただろうか。輪島の北方約48kmに位置する有人島のことである。

さて、前述のバードウォッチングと舳倉島に一体何の関係があるのかというと、なんとこの島では、ロシアに向かうものオーストラリアに向かうもの多種多様な渡り鳥が渡りの途中に立ち寄って羽休めするという。
2時間も歩けば一周できる小さな島にわんさか野鳥が集まるわけだから、とにかくヒット率が高いうえに珍鳥の目撃情報も多いためバードウォッチャーの聖地となっている。初心者バーダーの我々も興味津々。

家族と「春の渡りのシーズンに行ってみたいねー」なんてのんびり言っていたが、ご存知のとおりCOVID-19の感染対策ゆえ、4月14日~6月10日までは渡航自粛が呼びかけられていたので、今年は叶わず。


02 リサーチ編

秋の渡りのピークは過ぎてはいるが、今は冬鳥が続々と飛来してくる時期だろう。冒頭の突然の家族の提案に驚きつつも、計画を実行に移すべくまずは船の情報リサーチを開始した。
一般人が舳倉島にたどり着ける唯一の手段はへぐら航路㈱が運行している定期船のみである。1日1往復、輪島港と舳倉島を結んでいる。

木曜時点でHPに掲載された運行情報は「欠航」。
(ん? 金沢方面は別に天気悪くないと思うが、奥能登はそうでもないのか?)と思い、輪島の天気を調べるもこちらと大差はなさそう。どうやら、運行のGOサインが出るハードルはかなり高いらしい。調べてみると、波の高さが2m超えになるともうアウトということが分かったが、その理由は船に乗ってから理解することになる。
週末の波の高さの予報を見るに、2日後の10/31(土)が条件が良さそうである。その日を狙ってスケジュールを組むことにした。

舳倉島へ行くにあたって、まず船のチケットを入手することがやや難儀である。というのも、その日運行するかどうかは当日7:30のチケット発売開始と同時に発表されるのだ。つまり輪島市民でない限り、見切り発車が必須ということ。

前入りで宿泊?それとも車中泊?などと家族と話し合いながら、万一の天気の急変で<土曜運休→日曜出航>となるケースも想定に入れた方がよいかも、ということになり土曜夜の宿を予約することにした。
飛び石を埋めて四連休を獲得した人が多いのか、旅行サイトでチェックした奥能登の宿は、満室だったり残り1,2部屋だったりとなかなか人気な模様。探した結果、輪島から1時間ほど離れた珠洲にある風情豊かなお宿の部屋を予約。


03 準備編

前日、仕事を終えて買い物に走る。
まずは薬局へ。今回の旅の不安要素1つめは船酔いだ。船なんて久々に乗るうえ、これまでも車ごと乗り入れられるような大型のフェリーしか経験したことがない。使うかどうかはともかく、お守り代わりに酔い止めを。

次は防虫グッズのコーナーへ。不安要素2つめの対策である。聞くところ舳倉島の蚊はとにかく強靭らしい。噂はかねがね、虫除けスプレーが効かないとか、ジーンズの上から刺してくるとか、刺された瞬間むっちゃ痛いとか、蚊界のラスボスの名をほしいままに…。

ところが、今やすでに肌寒い季節。当然、虫除け用品はシーズンオフだ。携帯できそうな蚊取り線香か電池駆動の虫除けデバイスが売っていたら御の字だったが、スーパーやホームセンターをはしごしても全然見当たらない。購入は断念して、とりあえず自宅にある虫除けスプレーを車に積んでおくことに。ついでに虫刺されに効く軟膏薬も鞄に入れておいた。


04 移動編

果たして舳倉島行きの船のチケットはどれほど人気なのだろう?
Twitterで事前に調べてみると「7:30の発売開始と同時にチケットが売り切れた」という嘆きの呟きも…。まして10/31は夏季の運行時間が適用される最終日。(11/1からの冬季運行は現地滞在時間が1時間短い) こぞって人が集まるに違いない、たぶん。

このチャンスを逃さぬよう(とはいえ運行するかどうかは7:30まで分からないのだが)、当日は朝4:30に起きて5時前には家を出た。未明の道路はどこもスカスカ…と思いきや、さっそく金沢市内でパトカーが交通事故の処理をしているシーンに出くわす。嗚呼、明日は我が身…。
朝ごはんは前日にスーパーで買っておいたパンを車内でほおばり、6時前には完食した。

のと里山海道を走っていると、東の空が徐々に白んできた。視界がよくなった頃、道路脇にイノシシらしき動物が倒れているのを2度見かけた。さすがに高速道路では車も止まるに止まれない。かわいそうに。南無南無。

ナビを見るたび、予定到着時間がぐんぐん前倒しになってゆく。7時くらいに輪島港に着く予定が、6時半には輪島市内に入っていた。車のメーターに表示された気温は3度。うっ寒い。


05 出航待ち編

ひとまずへぐら航路㈱に到着。目の前の港にはやたらとトンビが飛んび交っている。
通りを挟んで薬局が見えた。きっと、あそこには酔い止めの在庫が沢山あるのだろう…。

周囲には県外ナンバーの車も見受けられたので、ひょっとしたら前入り・車中泊の方々かも。案内所の前は特に行列ができているわけでもなかったので、一旦離れてコンビニで買い物とお手洗いを済ませてから戻ってきた。

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↑へぐら航路㈱。右のトンビは家族が撮影。

7:15頃、社員らしき方がチケット販売所のドアを開錠。フライングかなと思いつつも、ひとまず販売所の中に入ってあらかじめ乗船者名簿に必要事項を記入しておいた。
間もなく、釣り竿やら望遠レンズを携えた方々が続いた。バードウォッチャーだろうか、若い方々もいる。
販売所の壁には舳倉島で撮影された野鳥の写真が展示されていた。この写真がまた珍鳥揃いなものだから、これからの渡航に期待せずにはいられない。

7:30、チケット販売カウンターの横に<本日出航>のプレートが掛けられた。よっしゃ。
早速、チケットを購入。
大人片道 2,300円 × 2名 x 2(往復) = 9,200円
このタイミングで検温して乗船者名簿を提出する。ついでにカウンターにあった案内リーフレットを1部頂いてポケットにしまった。

出航は9時だが8:50までに乗船しておくようにと促された。車は、へぐら航路㈱から案内された輪島朝市駐車場にて待機。

のりば

まだまだ時間に余裕があったので輪島朝市へ。美味しそうな干物や青果、輪島塗の食器などなど目移りしてしまうが、買い物に夢中になって乗船しそびれてはいけないし…と自分を戒める。
ちなみに舳倉島には商店がないので、基本的に昼食は予め買っておいて持参することになる。

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↑輪島朝市は早朝に行ったので、まだ人の往来が少なめ。

車に戻って必要な持ち物を鞄にまとめ、気温が上がってきたので朝着ていたジャケットを脱いだ。最後に願掛けしながら虫除けスプレーを全身に浴びて、いざ船着き場へ徒歩で移動。


06 航海編

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8:40くらいに船に乗り込んだ時には既にほとんどの席が埋まっていた。一般客の船室は、2つ。2~4人掛けの席が並ぶ部屋と、その地下にあるじゅうたん敷きの船底部屋。船底の方は、部屋の壁際に2段の段差があってそこを長椅子のようにして腰掛けられる。
じゅうたんの上を選んだ人達はみな横になり、備え付けのブランケットをかぶって出航を待っていた。上の客室では、4人掛け椅子を平気でベッド代わりにして寝転ぶ人がほとんどで、一目見て辟易してしまったのが正直な感想である。(え、これ船員さん誰も注意しない感じ?)と内心思ったが、こんなにも寝転びたい人ばかりいる理由を自分も後で知ることになる。

全然空席がないぞと焦っていたら、有難いことに、出入口に近い椅子で座ってらっしゃった方が荷物を寄せて二人分のスペースを空けてくださり、自分と家族はそこにお邪魔させていただいた。これ、もしチケット完売して満席だったらどうなっていただろう?

隣席となったバードウォッチャーの方は、わざわざ関西からお越しになられたそう。自分達よりもずっと野鳥に関する知識が深く、情報が多く、経験が豊かな方。お話できてとても楽しかった。

船が揺れだした。アナウンスもないので気付かぬうちにもう出航していたのだろう。同じ席の3人であれこれ喋りながら10分ほど経った頃、きた。
どぷん。

やや高い波を乗り越えたのだろう。脳みそと消化器官がぐらりと揺さぶられる感覚があった。うー、これは不快。
酔い止めの副作用には眠気があるので、事前に飲むかどうかを迷っていたのだが、背に腹は代えられないとすぐさま1錠服用。左右に座っていたお二人に「酔いそうなので離脱します…」と断って、座ったまま上半身を右側にひねり、横に置いたリュックの上に腕を乗せて、そこに頭を預けて目をつむった。
お二人は「甲板に出て海鳥を探してくる」と船室を後にした。ここから試練が始まる。(適当に読み飛ばしてください。)

時おり大きな揺れがきて、平衡感覚がトチ狂っていくのを実感していた。(まぁ船やしね、揺れるのは仕方ないよね。こんなもんよね。にしても漁師さんすげぇな、いつもこんなんに耐えて美味しいお魚を獲ってきてくれてはるんやな。ほんまに頭上がらんわ…。) ひたすら漁師さんへの敬意がうなぎ上りになってゆく。

この船の出航条件に波の高さと風速があるが、確かにこれ以上波が高い時に出航なんかしてしまったら、犠牲者多数となることが容易に想像できる。じゅうたんの上でも4人掛け椅子でも寝転ぶ人があんなに多いのも納得いく。そうだとしても他の客に構わず一人で椅子を占拠するのは迷惑だと思うが。

(そういえば、へぐら航路の販売所に<船で酔わないためのアドバイス>的なことが書いてあったな、一つ目だけ覚えてるぞ。)
「船酔いに対する不安をもたないこと」
確かそんな感じのことが書いてあった気がする…。予期不安というのは時に恐怖より厄介だ。まだ大変な状況に陥っている訳でもないのに、先走ってそんな気になってしまう。ならば不安にならない為に有効なのは、楽しみに思いを馳せることだろう。

そもそも舳倉島に行きたいのは何故か。滅多に見られない野鳥たちに出会いたいからだ。野鳥を発見して、家族が撮影した写真を見ると嬉しくなるからだ。某片づけコンサルタントではないが、心がときめくかときめかないかで判断すると、ときめくからこの船に乗り込んだのだ。
ここ数日欠航していた船が、今日、まるで自分達が乗るのを待っていたかのごとく出航できた。こんなにどぷどぷ揺れている波でさえ、一応今日はまだ大人しくしてくれている方で、自分達の味方に違いないのだ。朝早起きして、家族も運転を頑張ってくれて、やっとここまで来れたのだから、舳倉島を楽しまない訳にはいかないだろう。(船酔いなんかに負けないぞ…!!)

「&×$%"#=!(%}$#」
船室内に誰かの悲痛な音が響いた。(あぁかわいそうに。いやー分かる、分かるよ、こんなに揺れてるもんね。出ちゃうよね、絶対辛いよね。もうこれハンター試験やん…。)
しかし同情に流され過ぎると、もらいゲ●のリスクが増してしまいそうな気がしたので、誰に対してかも分からないけどとにかく(すまねぇ)と思いながら全力で耳を塞いで再び自らの殻に閉じこもった。

脳内でひたすら音楽を流す。歌詞を覚えるほど聴きこんだ酸欠少女さユりさんの「十億年」。
「♪巨大な巨大な不安と 戦ってやっと出会えたんだ」
(いやー今まさに巨大な不安と戦っとるでな。これを乗り越えればきっと素敵な野鳥に出会えるに違いないぞ。さユりさんありがとーありがとーー…ウェーーシンドイ。)

あくまで個人的感想だけれども、舳倉島に行くならば何かしら確固たる目的があった方が航海中に心が挫けずに済むかもしれない。職務(郵便配達、インフラ整備など)、探鳥、釣り、離島制覇、その他学術研究などなど。
「島ってなんか面白そうじゃね?」とか「大自然満喫してみたーい」みたいなふわっとした動機の場合、よほど三半規管に自信のある人でなければ舳倉島はおすすめしないと思う。他にもっとええとこいっぱいあるやで…、と別のネイチャースポットを推しただろう。

(そういえば同席の二人が戻ってこないな。)
甲板で海鳥を見つけて楽しく望遠レンズを振り回しているのだろうか。現れるとしたらカモメ属?ウミウ?チドリの群れ?
それにしてもこの揺れだ。もしかしたら撮影どころじゃなくリバースモードに入ってしまって、船室に戻る階段すら下りられないほど疲弊しきっているかもしれない…。

いや、家族は自分がこれまで出会ったなかでも群を抜いてタフな人だ。愛用のSDカードだってTOUGHだ。たぶん前者なのだろうと信じて、また酸欠少女さユりを脳内再生した。

しばらくして水も滴る家族が船室に戻ってきた。髪もびしょびしょ、カメラも濡れてしまって放っておくと黒いボディに塩の結晶ができそうだ。嬉しそうに、撮ったばかりの写真を見せてくれた。船が揺れ過ぎてピントはまあアレだったそうだが。

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↑家族が撮影したオオミズナギドリ。

本人曰く外の空気に当たっている方が酔いがマシだそうな。それに加え視覚情報と体感がリンクするのが良いのだろうか。アスレチックが好きで体幹が安定している方は是非お試しあれ。

ほどなくして舳倉島の着岸が近いことを知らせるアナウンスが流れた。安堵してふぅーっと息を吐く。無事、到着。


07 上陸編

島に到着して船から下りると、港には沢山の人が。船で運ばれた物資を待ちわびていたのだろうか。立派なビデオカメラで撮影している人もちらほら。何を撮っていたのだろう。

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海水のかかったカメラをウェットティッシュで軽く拭いて出発しようとしたら、バードウォッチャーとおぼしき人々が複数名集まっていた。中には、以前に鷹の渡りの観測でご一緒した方も。ご挨拶を済ませて、いざ島の周遊へ。

まずは港のすぐそばの公園へ。早速カメラを向けている人々の姿が見える。何がいるのだろう? わくてかわくてか。
舳倉島で出会った最初の野鳥は、ツグミンとそっぽ向くジョビ子!

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↑家族が撮影。ツグミ♂(左)、ジョウビタキ♀(右)。


なにせ初上陸なので勝手が分からないけども、道はきちんと整備されているようなので地図を携帯していれば迷うことはなさそうだ。あと意外だったが4Gもちゃんとつながる。
日頃の忙しなさを忘れさせてくれるようなノスタルジーな光景を楽しみつつ野鳥を探して歩く。

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時折、島民の方々が自転車で通行されるので、道端で撮影するときはお邪魔にならないように周囲に注意を払うことが大切。とりあえず近くにある灯台の方へ向かってみよう。ジョビ子とマミチャンがいた!

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↑家族が撮影。ジョウビタキ♀(左)、マミチャジナイ♂(右)。

その後、西岸周りに島を1周してみることに。普通に歩けば所要時間は2時間。探鳥しながら進むと、滞在時間の4時間をフルに使うのだろうか。
それにしてもジョウビタキをやたら見かける。君たちスズメか?ってくらいめっちゃ出会う。

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↑家族が撮影。ジョウビタキ♀(左上)、マヒワ♂(右上)、ミヤマホオジロ♂(左下)、ジョウビタキ♂(右下)。


天気の良い日だったので(というか天気が悪い日は出航できない)、海がとても綺麗だった。ただ、島全体は高低差が小さいので「海を見下ろす」というよりも「地続きに海がある」といった感じ。

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ドローンがあれば俯瞰できるので、より景色を楽しめたかも。素敵な映像を見つけたのでリンクをご紹介します。


島には、高く積み上げられた石のかたまりが点在している。ケルンと呼ばれるそれは、海女さんたちが潜る地点を確認するための目印となっている。豊漁の願掛けがされている大切な存在なので、ぶつかって崩したりするのはダメ。ゼッタイ。
舳倉島リーフレットにも載っているが、島内には全部で7つの神社(弁財天社含む)がある。島の面積に対して、謎に神社密度が高い。

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道中、ふと手の甲に視線を落とすと、黒いアレがいた。噂の舳倉島の蚊だ。やられたーと慌てて手で払う。やはり虫除けスプレーは奴等には効かないらしい。10月末とはいえ、青空が広がっていたのでぽかぽか陽気だった。そりゃ蚊も元気になりそうだ。
翌朝、宿で確認したら指も含め3か所かまれていた。直径1cmほどにぷっくら腫れて、なかなか痒い。軟膏を持ってきておいて正解だった。

ずっと海岸に沿って歩いていたが、途中で島の中央に向かって林の中を抜けていくことにした。この道は草木が生い茂って鳥の格好の隠れ家になっているらしい。四方から、数種類の鳴き声が聞こえてきた。

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今季初のシメ!!くちばしキタナイ!!! (青い羽根は綺麗なのに…。)

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↑家族が撮影。シメ♂(左)、ツグミ♀(右上)、ノドグロ~ or ハッチョウ~ or (普通の)ツグミ(右下)。 (種類特定難しい…。)

へぐら愛ランドタワーという施設の近くに、舳倉島リーフレットの地図には掲載されていない野鳥の観察舎があり、すぐ傍にトイレもある。(トイレは希少かつ貴重なのでせめてリーフレットに載せてほしいところだった。)
舳倉島に設置された案内地図には両方とも載っていたので、はじめにスマホで写真を撮っておくのがよいかも。

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↑トイレのすぐそばで家族が撮影したイソヒヨドリ♂(左)とジョウビタキ♀(右)。

さて、この島の観察舎は野鳥との距離がとにかく近くて絶好のスポットである。木組みの目隠し壁の穴からそっと向こう側を覗いてみると、ちょっとした水溜まりがあって、入れ替わり立ち替わり小鳥たちが水分補給やら水浴びにきていた。

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↑家族が撮影。アトリ♀(左上)、マヒワ♀(右上)、ミヤマホオジロ♂(左下)、シロハラ♂(右下)。

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↑家族が撮影。ルリビタキ♀ ルリ子は、瑠璃色の尾羽を上下にふりふり揺らす愛らしい仕草によって数多のバードウォッチャーを骨抜きにしてきた、まったく罪なヤツなのである。


ちなみに、当然と言えば当然なのだろうが、本州の留鳥であるスズメ・ハト・カラスの類は、この島ではほぼ全く見かけない。この時期の舳倉島の野鳥マジョリティはジョウビタキ・ツグミ・マヒワ・アトリらへんのようだ。

観察舎を後にして海岸沿いの道に戻ると、船でご一緒した方と再会した。「この辺りにヤマヒバリが出ますよ」と教えていただき、ゆっくりめに歩いてみる。お? さっそく道の先に何かいた…!!

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↑家族が撮影したヤマヒバリ♂(右)、わりとレア野鳥らしい。


島の魅力は野鳥だけではない。どこを向いても自然豊かな景色が広がる。あちこちに咲く黄色いツワブキの花は、ちょうど今が見頃のようだ。

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舳倉島を訪れる人の大部分は、我々のようなバードウォッチャーか海釣りを楽しむフィッシャーのようだ。海岸を見渡すと、岩の上で釣り糸を垂らしている人をよく見かけた。
白波が岩に当たって激しく砕ける光景は、なかなか見応えがある。

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平坦なこの地で唯一ランドマークとなっているのが舳倉島灯台。万一地図を紛失してしまっても、灯台の方角を確認しさえすれば自身の位置はつかめそうだ。

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さて、野鳥探しに戻ろう。
ヤマヒバリに続いてもう一羽珍しい野鳥に会えた。シベリアジュリンだ。
「~ジュリン」と名の付く鳥にはいくつか種類があり一目見て識別するのは非常に難しいのだが、撮影後にくちばしの色や形、アイリング等々の特徴を確認したところ、どうやらシベリアジュリンに出会えたらしかった。
(ちなみに二人とも未だ初心者の域を抜けられておらず、見慣れない野鳥の場合は双眼鏡を覗いただけでは種の断定ができないため、あとで撮った写真を拡大して種別を確認してから「やったー! ●●だー!!」と小躍りすることがデフォである。)

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↑家族が撮影したシベリアジュリン(たぶん)♀。

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↑家族が撮影したオオジュリン(たぶん)♂、(ぱっと見同じやんけ)と思わずにいられない。

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↑家族が撮影。ジョウビタキ♂(左)、ベニヒワ♂(右)。


この島での探鳥はとにかく忙しい。歩いていると突然横からヒューンと飛んできて藪に突っ込んでいく。あるいは藪からガサガサと出てきて我々が進む道の先を歩いている。背の高い木が少ないので肉眼で探知できることが多い。民家の屋根に、生垣に、あちこちに野鳥が現れるので全く油断できない。島を一周する頃、もはやジョウビタキを見過ぎて彼等の有難みが薄れつつあった…。

08 帰港編

再び舳倉島の港に戻ったのは14:20頃だった。14:50までに乗船すればよいので、もう少し近くの公園で粘ろうかと移動しかけたとき、島民のおじいさんが「早く船に乗らないと座れなくなるよ」と教えてくださった。
半ば「まさかぁ」と思いつつ乗船すると、殆どの椅子の上に誰かしらの荷物がおかれており、容赦なく場所取りされている…。(いやいや、船員さん注意しはらへんのかーい)と心中でツッコミながら船底部屋の壁際に腰かけて待機した。

ここ数日は欠航続きだったからか、自分達のような日帰り組だけでなく、島民とおぼしき方や、なんらかの事情で島に来たものの船が出なくて帰れなくなってしまった人達も乗船していたようだ。言うまでもなく、往路より船の人口密度が高かった。おじいさんのアドバイスが有難い。

出航前に酔い止めを飲んでおくか、と薬箱の注意書を読んだら「大人1回2錠服用」と書いてある。ん? そういや朝は1錠しか飲まなかったな。だからあんなにキツかったのだろうか。
この日2錠目の酔い止めを飲み、家族から借りたイヤホンからやっぱり酸欠少女さユりを流して、行きと同じ姿勢をキープした。

帰りの波は嘘みたいに穏やかだった。
同室の方の賑やかないびきがイヤホンの向こう側から聞こえてくるのをやや意識しつつも、酔い止めの副作用の眠気にゆだねてウトウトしながら1時間半の航海をやりすごした。
16:30に輪島に到着。ただいま、本州。

一週間経ってあらためて振り返ってみる。舳倉島は本当に素敵なところだった。夢中になって野鳥を探していると、行きの船酔いの辛さもすっかり忘れてしまう。わくわくの連続。
次は、春の渡りシーズンに再び訪ねられますように。

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