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自転車

自転車が倒れていたら、
なんどきでも、起こすべきだと思ってきた。
そして、できるだけそうしていた。

あるときまでは。

「風の強い日はね、
がんばって起こしても
その自転車はまた倒れてしまうから、
そのままにしておいた方が
ダメージが少ないんだって。

お友達に教えてもらってね、なるほどと思ったの。」

と、教えていただいた。

そうかぁ、なるほど…
と私も思った。

―――


倒れている人を、立たせる。

放っておけないあなたは、
とてもやさしく、正義感が強い人。

もしかしたら、起こした人は、
また転んでしまうかもしれない。
同じところを打って、もっとひどくなるかもしれないし、
他のところを怪我してしまうかもしれない。

ときには、
倒れたままのその人を、
見守る方がよいこともある。

でも、でもね、
助けたい、力になりたい、と手を貸すあなたの気持ちは、
必ずその人に伝わっている。
ただのおせっかいなんかじゃ、絶対にない。

自転車と違って、
風などの分かりやすい目安はないから、難しい。

転んだままが、楽な状態というわけではない。
だからなお、難しい。

がんばって引き起こしたのに、また倒れてしまったことを知り、
あなたは落ち込むかもしれない。

手を貸してもらったのに、
また座り込んでしまうことに、
その人も申し訳なさを抱くかもしれない。


ひとりだけ、ふたりだけにしないで、
まわりのみんなで一緒に、
考えられたらいいよね。

―――

自転車を起こさずに素通りする人は、
冷たい人でも、無神経な人でも、
急いでいる人でもないのかもしれない。

気にはなるけれど、
あえて寝かしておく人もいるんだ。

知らないことがたくさんある。
決めつけないで、知ろうとしたい。


2024.5.5

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