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エッジAI

 エッジAIは、端末の近くに設置したサーバーでデータ処理を行う「エッジコンピューティング」にAIを搭載したものです。端末に直接AIを搭載するので、即応性やセキュリティを高めることが可能です。エッジAIは、クラウドAIと比べて通信コストを削減できる、低遅延処理が可能、プライバシーリスクを低減できるなどのメリットがあります。
 サムスン電子は、4月11日にフラッグシップモデルの「Galaxy S24」「Galaxy S24 Ultra」を発売するが、最大の特徴は、Googleの「Gemini Pro」や「Gemini Nano」などをAIモデルのベースにした「Galaxy AI」を端末の機能として密接に統合しているところにあります。サムスン電子は同モデルを「AIフォン」と呼び、スマホの基本ともいえる機能がAIによって大きく変わっています。
 特にインパクトがあるのが、音声通話の通訳機能で、ネットワークや相手の端末に関係なく、端末上で音声認識から翻訳、音声合成までをまとめて行い、リアルタイムで外国語を翻訳できるところです。Androidをベースにした翻訳端末や、スマホにインストール可能な翻訳アプリは多数存在しますが、これらを通じて音声通話をするのは難しいです。その意味で、この機能は端末に深くAIを統合した成果といえます。
 端末の処理能力が、最新のハイエンドモデルの方が使い勝手の良いAIが搭載されていたり、その処理が圧倒的に速かったりすれば、現在、3年といわれる買い替えサイクルより早く買い替えを促すことができます。これまでスマホは、カメラやディスプレイによって差別化を図ってきましたが、オンデバイスの生成AIの登場により、その構図が徐々に変わりつつあります。AIで既存のスマホとの違いを全面に打ち出し、Google, Galaxyに加えて、iPhoneも含めた「AI競争」がさらに進む可能性は高いです。
 同様にAIパソコンも2023年12月に米インテルが発表した、ニューラル・プロセッシング・ユニット(NPU)内蔵のCore Ultraプロセッサーを搭載したパソコンがその一例です。AIパソコンとは、人工知能(AI)とパーソナルコンピューターを組み合わせたパソコンで、AIをクラウドではなく、ローカルのCPU/GPU/NPUなど各種プロセッサー処理できます。従来のパソコンよりもはるかに高速にデータを処理でき、エネルギー効率の向上、クリエイティブ作業のサポート、リアルタイム通訳などの機能を提供します。2026年にはパソコンの半数がAIパソコンの出荷が占めると予想されています。
 エッジAIを搭載する端末は、スマホやパソコンをはじめとして自動車や産業ロボットなど多岐にわたります。たとえば、カメラを搭載したデバイスを道路に設置し、そこで交通量を測定することができます。このようにエッジAIを活用することで、リアルタイムでの交通量の測定や、遠隔地からのモニタリングが可能になります。半導体ではクアルコムのAI対応半導体、パソコンではマイクロソフトがSurface Pro 10, Laptop 6といったAIパソコンを出荷し、クラウドやソフトウェアでのAI優位性を打ち立てており、恩恵を受けることになるでしょう。

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