見出し画像

日米”遊び度”の違い 100/120

ニューヨークのTVニュースは、今日明日にも実施となるファイザー製ワクチンと、40年前の今月この地で起きたジョン・レノン射殺事件で慌ただしいです。

映画制作プロダクション(ブルックリン)でのインターン時代の同僚アンドレアがabcテレビに就職したこともあり、私はabcが一番のお気に入り。

タイムズ・スクエアにスタジオがある同局の国民的人気番組 Good Morning Americaで、看板局アナ?のジョージが言ってました。彼はジョン・レノン事件当時、私のアパート近隣エリアの高校生。登校の道すがら、やるせない気持ちを持て余したそう。

その頃、日本で英会話学校の講師をしていた私。事件翌日は、ジョンを失い傷心の高校生S家くんと、授業も忘れて語り合っていました。S家くんは学習科の生徒で、私は会話科の大人用に用意していったジャパン・タイムズ一面の該当記事を彼に見せつつ、慰め役。ジョンは、純な少年たちを魅了せずにはおかない脆さを持っていた気がします。

セントラル・パークでファンに囲まれるジョン・レノンのPV。事件直後、2000人のファンがここに集まり、歌い、沈黙しました。私はこの曲が1番好き。

さて、今日はそんなアメリカについて、在住7年目に改めて気づいたあれこれを、徒然なるままに……。

まず始めに、アメリカでの実業を知らない私は、アメリカ社会の基本を理解していませんでした。最近ある在米日本人の方のツイートを見て開眼。日本人は100個の製品を作る時、いかに不良品をゼロにするかに尽力。一方アメリカ人は、120個作っておけば中の100個はオーケーであろう、と……!

この視点でものごとをみると、全て説明がつくのです。

例えば先週、トレーダー・ジョーズ(お手頃自社ブランドが人気のスーパー・チェーン)にお買い物に行った時。レジで「バッグは持ってきた?」と訊かれて、ショッピング・カートのポケットに挟んでいたエコバッグをどこかに落としたことに気づきました。

「このショップが開店した時の記念にもらったバッグで……」と慌てて説明する私を、メタルフレームの眼鏡が似合うスタッフ青年は「ちょっと待ってて」と制してサッとレジを離れました。

「探しに行ってくれたのかな?でも店内で落としたかどうかもわからないし」と気を揉んでいると、ほどなく戻ってきた彼の手には売り物のオリジナル・エコバッグが……↓

画像1

こともなげに値札を引きちぎった彼は、”This is from me. I can do it for you” と自分の胸を叩きました。そうです、100/120の法則……。

いえ、「ここは自分が」っていうのは、こんなスタッフ権限の場合に限らないです。

私もあります。コーヒーを買ったレジでクレジット・カードを出すのに一瞬手間取った時、後ろにいた紳士が「彼女の分は私が。私にもコーヒーを」と、カードを渡してしまいました。

お店の人も心得ていて、私が何か言うより早く支払いは完了。それは下記の書店イベントに参加した時、会場だった店内のカフェで。心暖まるイベントの素晴らしさが、更に暖かい想い出となりました。

アメリカでは珍しくないこんなことも、男性のダンディさに加えて100/120の法則があるかな、なんて……。

だって、男女間ばかりではありません。私がセフォラ(オシャレ系コスメ・ドラッグストア)のレジに並んでいたら、後ろの女の子に「セフォラのポイント持ってたら使わせてくれない?」と頼まれたことも。セフォラのノベルティ・ファンの私は、心狭くお断りしましたが……。

画像4

ポイントでもらえるこんなに可愛いオリジナル・ノベルティが続々と!

驚くべきは、値段の張る製品についても同じなこと。数年前、私のiMacのキーボードが不具合になりました。ほんのちょっと防水カバーから水が漏れてしまい……。保証期間はとっくに切れていたので、気落ちしてグランド・セントラル駅のアップル・ストアに持っていきました。

対応してくれたエージェントは「直すこともできると思うけど、新しいのにした方がいいんじゃない? それならすぐ渡せるし」と……。

キーボードが使えないと困る私は「確かに」と、エージェントの案に同意しました。新品を用意してくれた彼は”You’re all set”(これで終わりです)と。え? 支払いは??

私はてっきり彼が何か勘違いしたものと思い、「ラッキー!」と逃げ帰りました。ところが先月、そうではないことが発覚。

日本滞在から戻ってきた今回、アマゾンで中古のMac Book Proを買いました。何日か使うと、キーボードの反応具合がたまに鈍い……。

「中古だしなあ」と半ば諦めつつもグランド・セントラルに持ち込んだところ、製品情報を調べたエージェントは「保証期間は60日前に切れてるね」と。

彼はいくつかの診断プログラム実行の後、「キーボードもパッドも新しく替えることができるよ」と説明。「おいくらですか?」と訊いたら、なんと無料ですって。しかも、できたら家まで配達してくれると……!

たった2日ほどで送り返されてきたMac Bookは絶好調。100/120の法則です。考えたら、半端な課金手続きをするよりも、気前よくスパッとタダにしたほうがスタッフや会社事務の労働負担は少なく済むというもの。そのくらいの誤差は、営業コストに計上してあるのでしょう。

「好き勝手な行動や要求をする人々」が前提でできた社会なので、「人に迷惑をかけないよう」と育てられる日本の社会とは別物。

画像6

ジョン・レノンの木。誰かが写真を撮っていたので、真似して私も。このエリアのもう少しセントラル・パーク寄りが事件現場。

そういえば、ニューヨークに来て暫くした頃に解せなかったのが、金曜日になると人が捕まらないこと。知人の何人かに確かめたら、「それはある」という返事でした。金曜の午後に働いている人なんかいないかのよう。私のアパートのドアマンさんのリッチーも、木曜日にノリノリで言ってました。”Today is my Friday!”って。

このような遊びが日本にないことが、日本製品の優秀な所以ではあるでしょうが……。運転にもハンドルの”遊び”は必須だし。

近年の日本経済の落ち込みぶりや自殺率の高さを見れば、徹夜で勉強しても成績が下がり続ける優等生のよう。日本人の勤勉さを活かす方向にアバウト・シフトしてもいい頃かも……。

例えばPS5は、こちらではクリスマス・プレゼントの一番人気と言われ、上記のような「どこで手に入り易いか」の最新まとめサイトも。欠品による転売詐欺事件まで報道されています。テレビのクイズ番組では「任天堂」が回答となって正解されているのを見かけました。クリエイティブな”遊び”分野での日本の競争力は相当なもの。

画像5

アパート・エントランスのツリーとエレベーター内のリース

こんなふうに、なんだかアメリカを知ったつもりでいたけれど、「まだまだかなあ」と思う今日このごろ。

ちなみに、トレーダー・ジョーズは入店に人数制限があり、屋外で1ブロック先まで順番待ち。アップル・ストアは完全予約制で、入店には検温あり。個人商店やレストランも、これらに準じた対策をしています。

画像7

テレビでは州広報CMが「旅行はウイルスを広げます。Be festive, but stay local! (お祭り気分を楽しんで! でも近隣だけで!)」と繰り返し流れ(州ボード委員の医師)↑、多くの州で飛行機搭乗には3日以内のPCR陰性証明書がマストに。日本はガラパゴス? 

人恋しい季節ではありますが、コミュニケーションはZoomなどでも十分楽しめますしね。

画像5

レストランの臨時テラス席。設営にはニューヨーク市から補助金が出ているそう。

ということで、最後に人恋しいトーンのボーカル曲をご紹介。前述のテレビ関係の元同僚 アンドレアのイチオシ曲でもあります。珍しく作詞も担当していて、私のNYライブや娘との女子会風景など自前素材のビデオです。 

ニューヨーク州ではレストラン屋内席が今日14日から再び禁止に。日米ともに厳しくなってきている状況の中、引き続きどうぞ油断せずに、とびきりの年末を!

画像8

うららかな日曜日、懲りずにテラス席に群がる人々!