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「電話貸して下さい」in電車(実録・関西昔ばなし)

♪ぼうや~よいこだ ねんねしな~ いーまもむかしもかわりなくぅ~♪
 そんな懐かしのメロディーにのせてお送りします、今夜のお話は。

妖怪 電話貸して下さい in電車

 それは今から7年ほど前の、関西の某阪急電車の中での事じゃった。
 夕方ラッシュ時間の混んだ梅田発・特急三宮行きに、仕事帰りのわしも乗っておった。

 ほぼ満員の車内の扉近くにわしは立っていた。そして十三(関西ひとくちメモ~これは、じゅうそう、と読みます)についた時、扉が閉まる直前に、一人の若い男が乗り込んできたのじゃ。

 その男は、両手にぱんぱんに荷物の入った袋を持ち、リュックを背負って、なんとなく、あてのない旅人のような雰囲気を漂わせておった。

 急いで乗り込んできた男は、電車に乗れてほっとしたのも束の間、急にそわそわしはじめたのじゃ。
 どうやら、誰かと約束した時間に間に合わない様子。しばらく足元をみつめていた彼は、キッ!と顔を上げると、目の前にいたサラリーマン風の男性にこう言ったのじゃ。

 「すいません、電話貸してもらえませんか?」

 えぇ~~~っ???

 その時、そのサラリーマンも当然ながら、わしも周囲にいた皆の衆も、全員がのけぞった。(心の中で、ネ)
 電車の中で、全く見知らぬ人に、電話を借りようと思い、それを言えるのもすごいわ!
 周りじゅうがかたずをのんで見守る中。そのサラリーマンの方は、携帯電話を差し出したのじゃ~っ!すごい!(いい人やなあ…)

 また、その男が当然のようにそれを受け取り、「あ、○○さん~?ボクですけど~」とか、ナチュラルに話し出すから、皆もうキツネにつままれたような気持ちじゃったのう。

 そうして、電話し終わると、男は丁寧にお礼を述べて、サラリーマンに携帯電話を返し、千円札を差し出したが、サラリーマンはいいです、と受け取らなかったのじゃ。
 どっとはらい。

♪いいな い~いな~ 
にんげんって いいな~♪ (エンディング…)

 電話代もさることながら…
 発信履歴とか残るけど…
 個人情報とか…
 いいのかな…
 でも、目の前で人が困ってたら
 やっぱ、捨て置けないのが関西人やし。
 東京とかじゃありえないかもなあ…
 いや、もう今じゃ関西でも
 むつかしいかもなあ…
 でも、なんか、心のどっかで、
 そういう常識みたいなものをブッこわす、
 関西魂みたいなのを
 求めているわしもおるのぢゃ~!

 ※このお話は、ノンフィクションであり、(当時の)実在の人物・団体にめちゃくちゃ関係があります。

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