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ちょっと振り向いてみただけの宇宙人

真っ白な髪の毛
真っ白な肌
「一番」とかかれた真っ白なTシャツ

気だるげな目元は大きな丸メガネで覆われていて
猫背のシルエットに、細い足首の先にある茶色のサンダル

そんな彼と過ごした夏を、私は忘れられません。




最近、私が息をするように言う言葉
「彼氏欲しい」

それ言ったん今日何回目?という友達からのツッコミまでがテンプレ化してきています。

言う度に、自分の好きなタイプを自問自答。

「私ってどんな人がいいんやろ」という私のほとんど独り言ともいえる問いに
「伊野尾くんじゃないん?」と返す友達。

あ、テンプレ化しているのはここまででした。


確かに伊野尾くんはタイプです。
タイプなんて言葉じゃ片付けられないくらいの、ドタイプです。

中性的な顔立ちに、ふわふわな髪の毛
背も高くて、スタイルもいい。
おまけに名門大学を卒業したエリート。
特徴的な声も、少し変わった、いわゆる「テキトー」なその性格も全てが愛おしい。

私の理想の男性でしかありません。

ですが、これは
よく言う「推しへの好きと、好きな人への好きは違う」と言うやつなのでしょうか。

伊野尾くんと付き合いたい!
伊野尾くんが彼氏になって欲しい!

友達との話の最中、ひとつのネタとしてそう言ったりはしますが
本当に思ってはいないんですよね。

むしろ
「伊野尾くんには私なんかよりずっと素敵な人がいるから…」という遠慮までありますから。

おそらく、伊野尾くんを一種の神として崇め奉っているのではないかと思うくらい、私は彼に対して強い恋愛感情は抱いていません。



でも、彼が神であるからこそ、

彼が神でなかったとしても、自分の中で圧倒的存在感を放つ彼を

非現実的に見たくなる衝動に駆られます。


例えば、

道端に寝そべっている猫を見ると「伊野尾くん、猫になっちゃったのかな?」って思ったり

青くて儚い空を見て、「伊野尾くんだ」と呟きながら写真を撮ったり

漫画の中にいる吸血鬼を伊野尾くんだと錯覚し好きになってしまったり

聞いてる限り、ただのヤバいやつなんですが、

つまり、伊野尾くんみたいなものを見つけてしまうと、
それが伊野尾くんでなくても彼のように愛おしく見えてしまうという事。

これがある限り、
一生独身のフラグがたった暁にはスコティッシュフォールドを飼おうという強い意志も、
カメラロールに溜まっていくいろんな空の写真も、
大学生になってから再熱した小学校の時に読んでいた少女漫画も

私からなくすことは不可能なようです。



そんな限界ヲタクの私が、本当に愛してやまないドラマがあります。


『トーキョーエイリアンブラザーズ』



『トーキョーエイリアンブラザーズ』は、
2018年の夏、日本テレビ「シンドラ」枠で放送された、伊野尾くんとA.B.C-Z戸塚祥太くん主演によるテレビドラマ。
エイリアンの冬ノ介と夏太郎が「地球移住計画」の現地調査を背景に
未知なる生物『人間』を学び、夏太郎に『恋人』と『仕事』をゲットさせるというミッションを通し成長していく、不思議な兄弟の物語です。


ここで伊野尾くんが演じたのは、『冬ノ介』という男の子。
(宇宙人なので、人間の男の子の姿になっているという設定ですが)

真っ白な髪の毛に気だるげなシルエットの彼は、夏太郎より一足先に東京のリア充大学生として現地調査を開始していました。

そんな冬ノ介は、器用でうまく人間に馴染める性格。

不器用で地球での生活に大苦戦をする夏太郎に、地球での生活や人間の性質など、自分が地球にきて学んだことを手取り足取り教えます。



冬ノ介くんは、1話でこんなことを夏太郎に言います。

「人間ってさ未知なんだよね、なんかうまく言えないんだけど、
人間って面白いんだよね」


このドラマでは、冬ノ介くんの言葉にたびたび考えさせられます。

どうして高いビルを建てるのか。
どうして犬を飼うのか。
どうして仕事をするのか。
どうして人を羨んだり憎んだりするのか。
どうして人を好きになるのか。…

彼の飾らないまっすぐなセリフは、今まで私たちが考えたことすらなかった事ばかりで、

それでいてどこか切なくて、

冬ノ介くんには届かない思いを、いつの間にか私たち自身が人間の常識と東京の街を通して考えてしまう。


「こんなのなくても生きられるじゃん。
むしろないほうが生きやすいし。
高いものとか大きいものとか作るのにずっと昔から命かけてるんだよ。
超バカじゃん。意味わからない星」

5話でこう吐き捨てる冬ノ介くん。

人間の果てしない欲望がこの東京という街をつくったと、夏太郎に語ります。

そんな冷たい冬ノ介くんに対し、夏太郎は

「バカか…バカだが…意味わかりたいな」

そうして、2人は、それぞれ違った形で人間について学んでいきます。

冬ノ介は、人間の複雑で入り乱れる『陰』の部分を
夏太郎は、人間の優しくてあたたかい『陽』の部分を

人生で初めて感じるその感情たちに振り回されながら成長していきます。



私は、このドラマを見て、ただビジュアルのよい伊野尾くんに惚れ直すだけでなく、

ドラマを通して、2人それぞれにある不器用さを愛し、第三者以上の視点でいる彼らから少しずつ、人間としてどうあるべきかを学んでいたのだと思います。



そしてなにより、冬ノ介くんは伊野尾くんにしかできない役だった。

伊野尾くんだったからこその冬ノ介くんであったなあと改めて思います。


伊野尾くんに人間の心がないというわけではなく、

冬ノ介くんのありとあらゆるところが伊野尾くんの面影を彷彿とさせていたし

何より、伊野尾くんであれば冬ノ介くんという不思議な役としっかり向き合い、冬ノ介くんの気持ちやこころの変化、そして自分と対比させたときの違いと小さな気づき。

お仕事に対し実は全力で、陰で努力をする伊野尾くんがこれらを考えないわけがないと思います。




「このくそみたいな街も、悪くない」

冬ノ介くんの可愛い笑顔の裏には、思いがけない闇があって

夏太郎くんの不器用な笑顔の裏には、思いがけないやさしさがあって。

究極の決断を迫られた時、よく天使と悪魔が自分の誘惑に口出しをしてくる図を見かけますが、

ほんとうは悪魔の冬ノ介くんと、天使の夏太郎くんなのかもなあ。


1人でいても、人間の気持ちなんていまいちわからないままだし、隠された優しさや思いやる気持ちも生まれない。

2人でいるから、
友達、仲間、恋人がいるから
初めてやさしさを感じたり、気持ちを知れたり、嫉妬したり、振り回されたり。


それはきっといいことばかりじゃないけれど、
だからこそ楽しくて、そんな人生も悪くない。


冬ノ介くんと夏太郎くん

今もどこかで笑っているといいな。




最後まで読んでいただきありがとうございました!

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