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法学系以外の人向け法学勉強法(法学系以外の人のための法学入門その2)

今回は,法学を専攻する人以外に向けた法学勉強法について書いてみようと思います。
法学を専門的に勉強し,司法試験やその他の法学系試験の受験を考えている方は,合格者等が書かれた他の記事をご参照ください。

1 オススメしない法学勉強法

「何でオススメ勉強法のnoteを書いてるのに、オススメしないことから書き始めてるんだよ!」と思われるかもしれませんが,地雷の位置は最初に知っておく方がいいですよね?
そういうことです。

①目的なく勉強する
範囲が無限に広がり詰みます。「何のために」やっているのかを考えると,学習効率もモチベーションも上がります。目的は「何となく人生お得に行きたい」とかでも大丈夫です(それなら,民法・労働法あたりの薄めの入門書でも読んでみるといいと思います)。

②難しい専門書・本格的な法学書を最初から順番に読もうとする
入門書ならいざ知らず,本格的な基本書(法学の学者の先生が書いた教科書はよくこう呼ばれます)を,前から順に読もうとすると,間違いなく,ただの睡眠導入剤になって,最後まで読み切れません。
入門書をザッと読んで全体像を掴んでから,その後で基本書の必要なところや気になるところを読んでください。

2 法学系マンガを読んでみよう

法律の本って何であんなに文字ばかりなんでしょうね?笑(文言を解釈する学問だから仕方ない)
そこで,学びたい法律のイメージを掴む,法学への抵抗を減らすために,まずはマンガから入ってみてはいかがでしょうか。

例えば,以下のようなものがあります(ガラ悪い民事法系多め)。

①『ナニワ金融道』(青木雄二)

https://www.amazon.co.jp/ナニワ金融道-1-青木-雄二-ebook/dp/B009KWU7O8

有名所ですね。街金を舞台としたマンガです。
お金を借りる(消費貸借契約),貸金に関する規制(貸金業法),お金を返せないときにどうやって回収するのか(債権回収,担保物権)とか民事法の知識盛りだくさんです。
ただし,登場する固有名詞が卑猥なものが多いので(登場人物の名前だと,地上げ屋の「肉欲棒太郎」とか),そういうのが苦手な人は苦手かと思います。あと,民法が改正前なので,今と違うのですが,イメージ掴む上では,そこはあまり気にしなくて大丈夫かなと思います。
kindle unlimitedに入っていれば,読み放題の範囲内です。

②『カバチタレ!』(監修:青木雄二,原作:田島隆,作画:東風孝広)

https://www.amazon.co.jp/カバチタレ!(1)-モーニングコミックス-田島隆-ebook/dp/B009UT5WC8/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&dchild=1&keywords=カバチタレ&qid=1627636826&s=digital-text&sr=1-1


行政書士事務所が舞台のマンガです。以前ドラマ化もしてましたね。
①は金融メインでしたが,こちらは行政書士業務が出てくることもあり,かなり広い範囲の民法や行政法の知識が出てきます。
ただ,これも民法は改正前のものです。あと,行政書士法や弁護士法ギリギリのライン攻めてる業務やってる話も何話かあるので,これを読んで,このマンガに書かれている内容が行政書士業務の実情を完全に反映しているとは思わない方がいいです。

③『難波金融伝・ミナミの帝王』(原作:天王寺大,作画:郷力也)

https://www.amazon.co.jp/ミナミの帝王-1-天王寺大-ebook/dp/B00AZVWRE6/ref=sr_1_3?__mk_ja_JP=カタカナ&dchild=1&keywords=ミナミの帝王&qid=1627636860&s=digital-text&sr=1-3

これも有名所ですね。舞台は闇金。ということで,もちろんガラは悪いです。
ただ,闇金といっても,ちゃんと民法上の知識使って回収している場面もあって,割と勉強になります。なお,これも民法改正前。

④『リーガルエッグ』(原作:河村ほむら,作画:木綿八十子)

https://www.amazon.co.jp/リーガルエッグ(1)-イブニングコミックス-河本ほむら-ebook/dp/B08L3CKFB7/ref=sr_1_1?__mk_ja_JP=カタカナ&dchild=1&keywords=リーガルエッグ&qid=1627636888&s=digital-text&sr=1-1

司法修習生が主人公。法曹のタマゴからみた,検察官,弁護士,裁判官を描いてます(検察修習編がかなり長いけど)。
刑罰って何のためにあるの?という,法学部卒の人は勉強しているのに,一般の人は考えたこともないであろうテーマも潜在的に取り扱われていて,法学系以外の人こそ読んでほしいですね。全部で3巻なので,すぐ読み切れます。

他にも法学系のマンガは色々あるので,興味があれば手にとってみてください。

ちなみに,マンガではないですが,『こども六法』『おとめ六法』『シニア六法』というイラストがたくさん使われていて,特定の属性の人にニーズがある法律知識を平易な言葉で条文を噛み砕いて説明してくれている本もあります。
あと,有斐閣がSTART UPシリーズという法学を学び始めた人向けの判例集を出しているのですが,こちらもイメージが掴めて面白いかなと思います(特に選ぶなら,『刑法総論判例50!』とかは,刑法にありがちな「え?こんなことある?」っていう判例の事案が知れて楽しいです。)。ただ,やはり法学部生がこれから判例百選とかより深い判例集を読んでいく前段階のために書かれているので,文字は多めです。


3 身の回りの法学を探そう

「法は社会と共に生きる」ものです。実は身近なところに法学はたくさんあります。「犬も歩けば行政法にあたる」という言葉もあります。

例えば,お買い物しますよね?民法上の売買契約ですね。いくら払うか分からないと怖くて買えないし,売る側も買ってくれるか分からないと困りますよね?つまり,売買契約(民法555条)の成立には売る意思と買う意思の合致が必要です。
町で病院見かけますよね?むやみに病院建てられると,医師免許がない人が医療行為を行うリスクだってあるし,過剰競争になれば医療の安全(医療法1条)が確保されるか怪しくなりますよね?病院開設は許可制にする方が利益という発想になってきます(医療法7条1項)。

どの法律に書かれているのか分からなければ,この便利な時代,「○○  法律」とかでググれば大体出てきます。
ただ,ネット上の知識は不正確なことも多々あるので,具体的な内容については,各省庁や法律事務所等のページではない限り,ザッと参考程度にみるくらいの方がいいです。(法律専門職の人は,多くの場合,TKC,ウェストロー,LLIといった判例や法律情報の検索データベースをお金払って契約しているし,ある程度あたりをつけたら,きちんとした内容は別途法学書や論文を読んで確認しているように思います。法学の専門職を目指すわけでもないのなら,ネット上にこういう情報もあるらしいくらいに留めておいて,特に正確な情報が知りたいなら,関連する書籍の該当箇所を読むくらいで十分な気がします。(具体的なトラブルがある場合は,有資格者にご相談ください。))

4 「何で?」「これがなかったらどうなる?」を考えよう

その1でも書きましたが,法学では「趣旨」が大事です。
自分のまわりの法学知識を見つけるとか,気になる法律分野があってそこの基本的な事項を読んだら,それが「何で?」そうなっているのか考えるようにしてみてください。ただの暗記の要素はかなり減ります。(3でも,かなり噛み砕いて趣旨を書いていますが,そのくらい噛み砕いて自分の言葉で説明できるのは理解しているということです。)

そして,「何で?」がよく分からなければ,「この規定がなかったらどうなるのか?」「この条文がない世界だと?」を一度想像してみてください(法科大学院時代の某倒産法の先生の受け売り)。

5 全体像(体系)を掴む

ただ闇雲にやっても全体が見えないと理解しにくいのが法学です。まず,薄い入門書やその法律について書いた新書を読んで,全体でこんな感じなんだを掴んでください。全体としてどういう章立てになっているのか,というのを頭の片隅におきながら勉強するのがオススメです(これは法学系以外の人にも言えることですが)。

6 終わりに

今回のnoteでは,法学系以外の人に向けた法学の勉強法について書きました。次のこのシリーズは,法学系以外の人のための民事法入門について書こうかなと思っています。

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