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予算の少ない冒険活劇

今回は、テレビドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの感想。

ここ数日、体調不良で伏せっていて、そういう時は身体だけではなく、心も元気がなくなっているし、何よりも思考能力が低下している。そういう時は難しい物ではなく、何も考えずに、ダラーっと笑える物が観たくなる。ふと、「勇者ヨシヒコ」の事を思い出した。


「勇者ヨシヒコ」概要

「勇者ヨシヒコ」といえば、予算の少ない冒険活劇をウリにしているテレビ東京の深夜ドラマだ。

登場人物の服装を見れば分かるが、完全にゲーム「ドラクエ」のオマージュであり、公式でも、「これはドラクエ風だ」と認めている。でも、大丈夫。ドラクエの販売元であるSQUARE ENIXの許可はちゃんと取ってあるどころか、協力のクレジットまで出ている。

内容は、勇者であるヨシヒコが仲間を連れて、魔王を倒す為に世界を冒険するというシンプルな物だが、様々な小ネタをこれでもかと詰め込んだチープでクレージーなギャグ冒険活劇である。

キッカケ

このドラマは2011年なのだが、実を言うと、リアルタイムでは敢えてスルーしていた。当時勤めていた会社の営業さんに、「勇者ヨシヒコ」って面白いよ!と教えてもらったのだが(私がゲーマーなのは社内では有名だった) 人にオススメされるのは、どうにも捻くれ者なので、素直には受け入れられず。そもそも、深夜ドラマだし、ふざけたドラマなんだろうと観なかった。

だが、その時の判断は、愚かだったと後悔する事になるとは。

何年か前に、たまたま旧Twitterで、「勇者ヨシヒコ」で、「FF風」の回があったとツイートがあった。私は気になって、当該の動画を観てあまりにも面白くて衝撃を受けた。

何故、私はこの作品をリアルタイムで追わなかったんだ!!!

とりあえず、「FF回」がある3作目の「勇者ヨシヒコと導かれし七人」をレンタルで全て借りて観た(放送が終わって数年経っている)

ストーリーと世界観

思った通り、非常にふざけている。深夜だからか下ネタ全開だし、「予算の少ない冒険活劇」を謳っているだけあって、セットも小道具も学芸会レベル。モンスターもダンボールだし、糸で釣ってるし(敢えて糸見えてるし)

でも、最初スルーしたの時に思い込んでいた「ふざけている」と、観た後の「ふざけている」の言葉の意味は、まるっきり違う。

そのあまりにもチープでふざけた世界観を、スタッフと俳優さん達の熱量とえげつない演技力でカバーして、逆にそのチープさを上手い具合に笑いに繋げている。

これ、もし演技力が拙い俳優が紛れたら、絶対につまらなくなる。メインキャストの勇者パーティの4人も、仏も、ゲストキャストの盗賊達も、みんな芸達者で、あのくだらないギャグを真剣に演じているからこそ生まれる笑いだと思う。演技力って大事だと感じた。

メインキャスト雑感

勇者ヨシヒコ(山田孝之) 
普段は純粋で優しい真面目な勇者だが、その真っ直ぐな心は時にエロ方面に発揮する。毎回美人のゲストキャラに惚れては振られる。これって本家「ドラクエ」だと、勇者ではなく、他のキャラの役割なんだけどね。彼が真顔で、長ゼリフを言う時は、大抵その表情とは裏腹にゲスでろくでもないことを決意した時である。普通、主役は多少大根でも周りで締めるんだけれど、山田さんは上手いなー。

ムラサキ(木南晴夏)
貧乳のヒロイン。口が悪く、気も非常に強い。服装はビアンカ風だが、性格は全く違う。文句ばかり言ってるが、何だかんだ仲間思いだと思う。ヨシヒコが惚れっぽいから、いつもヤキモキして可愛い面もある。メレブとはいつも口論してるけれど、敵を煽る時は息がピッタリ。この作品で初めて木南さんの事を知ったが、コメディでも、シリアスでも上手そう。

ダンジョー(宅麻伸)
熱血漢溢れる百戦錬磨(自称)の戦士。というか、そもそも宅麻伸さんがよく引き受けてくれたなーというのが素直な感想。作中で容赦なく下品なセリフを連発させられた挙句、ラッスンゴレライとか武勇伝まで踊らされてたけれど。何でもこの作品以降、若い人に「ダンジョー」って呼ばれる事があるみたいで。ファンの年齢層が広がって良かったのかも。

メレブ(ムロツヨシ)
 しょうもない呪文しか修得出来ない魔法使い。一見、パーティの中で1番役立たずなんだけれど、何気に常識人でツッコミ役。メレブの存在が、グダグダを締めたり、進行の上でかなり重要な役割な気がする。それにしても、ムロさん演技が上手過ぎて、作中でも屈指の人気というのも頷ける。さすが、福田組の重鎮。

仏(佐藤二朗) 
勇者達にお告げを伝えて導く仏。性格はかなりテキトー。あまりの面白さに、色んな意味で仏の存在なしでは「勇者ヨシヒコ」は始まらないし、終わらない。佐藤二朗さんのアドリブ力は底なしで、ちょっとくらい噛んでもOKが出てしまうほどで、紛れもない迷優であり、名優である。

メイキング動画

1作目の「勇者ヨシヒコと魔王の城」のメイキング動画は、メインキャスト達の撮影の様子。

現場は和気あいあいとして、みんな仲良く撮影しているのが分かった。この作品は、福田監督が脚本と監督を両方しているので、全ては福田監督の裁量だけで世界観が決まる。だからなのか、ちぐはぐな所はなく、全てが高クオリティのまま全力でくだらない(注: 褒め言葉です)

2作目の「勇者ヨシヒコと悪霊の鍵」のメイキング動画は、ゲスト出演の俳優さんのインタビュー。

「勇者ヨシヒコ」に出てみたいと願っていた方が多く、福田監督も慕われているようだった。ワンカットのゲスト盗賊達は、友情出演が圧倒的に多い。

みんな楽し過ぎてまた出たいと言っており、中には「また厳しい現場に戻ります」って言っていた俳優さんもいた。監督さんのやり方で、厳しくも緩くもなるんだろうなと。緊迫感のある厳しい現場でしか生み出せない作品もあるだろうし、どちらが良い悪いはないんだろう(あまりにもパワハラなのは、今の世ではダメだろうけれど)

最後に

残念ながら、「勇者ヨシヒコ」シリーズは3作のみで、その後は作られていない。最後の3作目からもう7年経っているが、続編を待ち望む声も少なくない。

監督やメインキャスト達も、かなり売れっ子になり、スケジュール調整等が不可能なんだろう。せっかく、予算が少なくても、人気が得られる面白い冒険活劇が作れるという事を世に知らしめたのに、非常に残念。

あんなハチャメチャで楽しい神作品に、今後お目にかかれる日は来るのだろうか。

大袈裟だが、「勇者ヨシヒコ」シリーズは、私の中で伝説となった……。

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

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