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おかたづけの極意#5 お人形の巻

 昭和の昔、田舎の家にいくと、床の間や箪笥の上などにお人形が飾ってある家が多かったように思います。

 我が家にもありました。市松人形や洋風のお人形など、ケースに入ったものから、こけしや木目込み人形、大きなもの、小さなものと、常時数種類が飾ってありました。たいていがどこかからいただいたもの。

 成長するに従い、お人形に加え、ぬいぐるみなども増えていきました。二人姉妹の家だったからか、よりそういう傾向が強かったのかもしれません。とにかく昭和時代はお雛様などのお祝い系のモノも大きく華美でした。

 さて令和の現在、趣味でお人形を好む人はもちろんいると思うのですが、都市伝説や怪談などと結びついたせいもあるのかお人形は敬遠される時代のようです。

 人形を簡単に捨てられない、という感覚は、家や人に寄るので一概に言えません。生ごみの袋に一緒に入れて捨てるもいれば、綺麗な袋に塩を振って捨てる、という人もいます。お寺などで人形供養をしているところに持っていく人もいます。

 人間とお人形の関りを考えると、特に日本人には「自分の身代わり」であるという感覚が、染みついているのだと思います。いわゆる「しろ」というものです。神社などで人形ひとがたに息をふきかけて、そこに禍を移して流すなどする風習が多くあったり、藁人形に呪いをかける習俗など、人の形をしたものには、自分の身に降りかかる禍を代わりに受けてもらう存在を見出してしまうのかもしれません。念がこもるとか恩を忘れて放置してはいけないとか、祟られるとか呪われるとか、そういう概念が染みついているのが人形のイメージなのだと思います。

 実際、人形をプレゼントするという習慣には、昔は子供が健やかに成長しますようにという意図や意識があったのかもしれません。今でこそ子供は生まれたら成長するのが当たり前になっていますが、江戸明治の時代までは、子供が大人になれるかは賭けのようなところがあったと思います。だからこそたくさんの子供を産まなければならなかったし、その成長を祈る気持ちもより強かったのかもしれません。

 しかし現代、あまり好まないお人形が家にある、というのは少々気づまりなものです。インテリア的に置きたくない、人形の類が好きになれないなど趣味嗜好の点でもそうですし、ぬいぐるみなどはホコリをためやすいという衛生上の問題や、スペースの問題もあります。

 私自身はもともとあまり人形が好きではありません。ぬいぐるみも、そんなに好きではありません。飾るならば、絵や花の方が好きです。これまでもだいぶ、処分してきました。やはり新しい袋に入れて塩を振るなどして、捨てたものです。

 それでもどれほど引っ越しを繰り返しても捨てられないお人形がありました。くださった方を知っているし、その姿がどうしても捨てにくいものであったため、長年、捨てられなかったもの。

 他にも、お守りやお札はお正月に神社の「お焚き上げ」の箱に入れてくるのですが、ああいったところではプラスティックや金属類が不可なので、鈴の付いたお守りや、鈴そのものの姿のお守りなど、捨てられないものがいくつか残っていました。

 ある程度割り切って捨ててきたのに、それでも残った者たちは、「捨て戦線」を潜り抜けた勇者たちです。なかなかのツワモノ。どうしようか、と思案するうち、こんなサイトを見つけました。

 なるほど。「お焚き上げ」を請け負ってくれるネットサービスがあるのかと、びっくりしましたが、これだ、と思いました。

 いかにお人形であろうと、モノはモノ。
 結局は人間側の「お気持ち」次第です。「人形に情をかける」という心情が理解不能、という人もいると思います。こんなことにお金をかけるなんて!ばかばかしい!という人もいると思いますが、ネットを見ていると、結構利用者がいるのだろうなという気がしました。中には「心霊写真も受け付ける」とあったので、持っていると嫌な気持ちになる物をこういう形で手放す、という人もたくさんいるのだと思います。

 とにかく、私はこれで、このお人形とのけじめをつけようと思いました。
 呪われるとか、祟られるとか思ったわけではないのです。ただ、何度も捨てるチャンスがありながら、なぜか何十年もどうしても捨てることができなかったものでした。
 ずっと捨てたいと思っているのに持っているのも良くないと思いましたし、ゴミとしてはどうしても捨てられないのだったら、これしかないんじゃないか、と。

 それにちょっと「やってみたい」好奇心があったのは確か。

 金額は、本心を言えば「ちょっと高いかも」と思いましたが、この際、試してみることにしました。

 申し込むと、伝票の入った封書が届きます。
 こちら側では、箱を準備し(レターパックには入らないサイズでした)、伝票を貼って集荷を待つだけ。簡単です。

 中に、メッセージを書く紙が入っていて、お世話になった人形やぬいぐるみにメッセージを書いてください、とありました。また、どうしても供養を見届けたい人のためのサービス、というのもありました。カメラで移してくれるそうです。本当に念には念を入れてお祓いしたい人もいるんだなと思います(私は全てお任せすることにしました)。

 結果的に「きちんと手続きを踏んでお別れした」という感覚があり、私は気持ちがスッキリしました。それでよかった、と思います。ひとつの方法として、こんなサービスがあるんだ、と知ったのが、今回の学び。

 後悔はしませんでしたが、ただ、この後別の団体を知ることになり「そっちでもよかったかも」と思うことが起こります。それはまた、次の話——。

 

 

 

 

 

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