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AM4:00の後悔

午前4:00。
徐々に紫色に染まる空。夜明けが赤坂に降り立つ。煌煌と輝く蛍光灯の下、デザイナーふたりと朝を迎える。翌日のプレゼンに向けての最後の追いこみ作業。打ち合せを2時間後に控え全員が黙々と手を動かす。

まったく、なんて制作スケジュールだ。なんて、文句を垂れてもしょうがない。差し入れのアイスを食べながら黙々と作業する。正直、20年後に今のような働き方はできないし、したくもない。やり場のない不満や不安が溜まってきた時、よく「何を大切に生きてきたか」について考える。それを忘れなければ、人生を間違えることはないと思っている。

僕にとってのそれは、後悔したくない、ただそれだけ。

生まれつき心臓に二重の病を抱えている。小学校の時から毎年健康診断にひっかかり、病院に通った。中学校に入る時は運動部に入ることすら反対された。即座に命に関わることはないが、歳を経るにつれて症状が悪化すると医者に教えてもらった。小さい頃は布団に入ってすぐに眠れたことなんてなかった。夜は孤独。死を最も身近に感じる時間。将来のことは考えないようにしていた。

小学校の卒業間際、『I'LL』という漫画に出会う。ダサくて、弱くて、寂しくて、一癖あるキャラクターたちがバスケットボールを通じてつながり、それぞれの大切なものを発見してゆく物語。そこに出てくる一節。

I LIKE IT. I'LL DO IT.
理屈はいらない。好きなことを好きなようにやる。

この言葉が、僕の鬱々とした思考をぶち壊した。以来、やってみたいと思ったことに何でも首をつっこむようになる。

でも実際のところ、後悔しない選択なんてないんだと思う。その時に心がいちばん振れている方向へ進んできたはいいが、人をたくさん傷つけてしまったし、もう戻らない関係も可能性もある。でも、その後悔も汲んだ上で、自分が選んだこの道を肯定してゆくしかない。未来の自分ががっかりするような選択を、今この瞬間にしているつもりもない。

窓の向こうのビル群の、そのまた遥か向こう。空が白く滲んできた。
今夜4本目のアイスを袋から取り出す。お腹の調子がちょっと、、、けれど後悔は、、、おそらくしない。しない。

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