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負けの数

加藤一二三九段が引退した。

14歳7か月で四段に昇段、これは当時のプロ入り最年少記録。のちに18歳で順位戦A級に昇級し、「神武以来の天才」と呼ばれたらしい。

僕は小学校から中学校まで将棋を指していた。対局相手はよし君。小学校時代は始業1時間前には登校し、誰の足音もしない教室で、ふたり夢中になって駒を追った。

彼の得意戦法は四間飛車。それは当時、羽生竜王の得意技だった。そんなプロ棋士まがいの闘い方に負けじと、僕も棋符をあさった。その中に加藤九段のものがあった。居飛車棒銀のバリエーションを学んだ。ただ、当時の僕には、おもしろい名前のおじさんだなー、くらいの印象だった。

そんな加藤九段の通算成績を見て驚いた。

1324勝(歴代3位)
1180敗(歴代1位)
— YOMIURI ONLINE

天才は、歴代で最も負けていた。

キャリアの長さを考えると当然かもしれない。でも、負けの中から得た何かを、確実に勝利に結びつけていたんだと思う。マイケル・ジョーダンはこんなことを言っている。

I’ve missed over 9,000 shots in my career. I’ve lost almost 300 games. 26 times I’ve been trusted to take the game-winning shot and missed. I’ve failed over and over and over again in my life. And that is why I succeed. 
— Michael Jordan

きっと、負けや失敗の数は問題じゃないんだろう。いちいち湿っぽくなる暇はない。見るべきは、次のこと。今のこと。

にしてもこの加藤一二三九段、猫にえさをあげてただけで訴訟起こされたり、ネクタイを長くするのがジンクスだったり、ネットで「ひふみアイ」といじられたり、ネタが豊富なおじいちゃんだ。


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