【日経新聞をより深く】中国の22年実質成長率、2.8%に下方修正 世界銀行予想~中国の経済は下振れへ~
1.中国の22年実質成長率、2.8%に下方修正 世界銀行予想
中国経済は不調、東アジア・太平洋地域の新興国経済は好調。その差が明らかになったようです。
中国経済は不動産セクターの不況が大きく影響しています。
2.中国経済における不動産市況の悪化
中国では、不動産市場の不振が続いています。需要は縮小しており、不動産価格も下落。住宅を中心とした不動産の売れ行きは、家電はじめ耐久消費財の購入や、不動産会社の投資、地方政府の土地使用権譲渡収入など幅広い分野に影響するため、不動産市場の停滞は景気全体の大きな下押しとなっています。中国ではGDPの30%を不動産関連が占めます。
中国では対GDPで不動産融資は40%を超えます。この異常な比率の高さが歪みを生み出しました。その典型が恒大集団のような過剰債務問題です。行き過ぎた不動産向け融資や高騰を続ける不動産価格に歯止めをかけようと、中国政府が不動産向け融資の規制強化をした結果、2021年夏以降、一部の不動産会社の資金繰り問題が表面化するようになりました。最も大きな問題が恒大集団です。総額2兆元(約40兆円)という巨額の債務を抱えていました。昨年12月には米ドル建て社債の利払いを期日通りに払うことができず、事実上のデフォルト(債務不履行)を引き起こしました。7月中に経営再建に向けた債務の再編集を公表するとしていましたが、22年内に発表すると先送りしています。
また、恒大集団以外でも不良債権が増加しています。
3.完成遅延で住宅ローンの不払いが広がる
中国では7月以降、物件の引き渡しが遅れていることに抗議して、マンション購入者が住宅ローンの返済を拒否する動きが広まっています。日本と違い、中国では購入契約を結び頭金を支払った段階からローンの返済が始まります。問題が公になったのは、恒大集団が中国南部江西省で手掛けていた物件がきっかけでした。同じように物件の工期が遅れているマンションの購入者がローン返済を拒否する運動が拡大しました。
今後、不動産市場の安定化が遅れると、中国景気の減速が長引くほか、突発的な危機を招く恐れもあります。地方政府・企業・金融機関による「もたれあいの構造」が揺らぎ、ひいては金融システムが不安定化します。あるいは急なバランスシート調整が進むリスクには注意が必要です。
しかし、中国政府もかつての日本のバブル崩壊を研究しています。事態を重くみた中国政府は、銀行に融資を促し物件の完成を促し物件の完成を急がせ、着実に物件を引き渡せるよう支援する方針を示しました。
住宅ローン金利の引き下げや不動産会社向け融資規制の緩和などの措置により、今後、住宅販売は持ち直すと考えられます。
恒大集団の1社だけが破綻したとしても、金融システム全体が機能不全に陥るところまで至る可能性は低いと思われます。それは、中国政府が一定程度関与することによって、連鎖破綻を引き起こさないように慎重に扱うからです。その際、恒大集団向け融資がどの程度焦げ付くかが大きな問題となります。ただ、多くの中国企業には日本のようなメインバンク制度はとっておらず、複数の銀行がそれぞれ一定額を融資しています。仮に債権放棄を求められたとしても、これらの銀行は今のところ対応する体力はありそうです。
このように中国政府は不動産向け融資規制の緩和に働いています。ただ、現在の習近平体制の方針としては、融資規制の緩和は早晩、規制強化に戻ると思われます。不動産市場の調整は長期にわたり中国経済の下振れリスクとなるでしょう。
未来創造パートナー 宮野宏樹
【日経新聞から学ぶ】
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