今、世界は第三次世界大戦の重大な懸念がある状況になってしまった。

ロシアーウクライナの戦争だけではなく、世界の火薬庫だと思われていた中東で戦火が起きた。パレスチナの武装組織ハマスによるイスラエルへの攻撃、そしてイスラエルからパレスチナへの反撃である。

日本の岸田首相は米国に追随して、ハマスを非難する声明を出し、イスラエル支持を表明している。

しかし、イスラエルは昨年からパレスチナへの入植活動を活発化していた。簡単に言うと、パレスチナの領土を強引に奪い取る行為である。

イスラエルの強硬派がパレスチナ人をどのように思っているかを表しているのが、ハマスへの反撃を宣言したイスラエル国防大臣ヨアヴ・ギャラント氏の声明に出ている。

「私たちは人間という動物と戦っているので、それに応じて行動する。」

信じられないが、「human animals（人間動物）」と呼んでいるのである。これが、イスラエルの国の国防大臣の言葉である。

ハマスの攻撃を正当化するわけではないが、そこに至った経緯を無視してはならない。「人間動物」と見られていたとしたら、その屈辱は計り知れない。それだけではなく、抜け出せない貧困の中にもあるのがパレスチナの人々だ。

一部のイスラエルの強硬派ではあろうが、「人間動物」とパレスチナ人を見ているのではないかと思ってしまうのが、以下の記事だ。

スポーツのように人を殺す。こんなことをできるのは、「人間」としてみていないからではないだろうか。

かつての日本にも「人間」として見られていなかったのではないかと思われる行為があった。

原爆投下である。

原爆投下には様々な議論があるだろうが、あの爆弾を人に落とすのは人を「人間動物」と見ているからできたことではないだろうか。

私は広島県広島市の生まれである。祖母たちは原爆のことを「ピカドン」と呼んでいた。今では、聞かれなくなった言葉だ。

「ピカッ」と光って、「ドーン」という音がしたことから、この言葉が生まれたのだ。

昭和20年8月6日、祖母は爆心地からは10キロほど離れた私の実家でもある家に居た。私の父は昭和20年7月6日生まれ。原爆投下の時は、祖母は父を背におぶって、外で作業をしていたらしい。

その時、今となってはそんな感じがしたということかもしれないが、家の障子がブルブルと震えたと言っていた。

その後、黒い雲が立ち上り、「広島が大変なことになっている」という話が回ってきたという。そして、爆心地から被爆した人たちが助けを求めて押し寄せてきた。

そして、とにかく必死に看病するものの、ひどい全身のやけどで成す術もなく、多くの人が亡くなっていった。私の実家で看病した人の一人は、何とか生き延びて、島根へ帰って行かれたと聞いた。

しかし、沢山の、沢山の、沢山の人々が目の前で次々に亡くなっていったそうだ。

爆心地に近い地域に住んでいた親戚は、私の実家に助けを求めてやってきた。私が子供のころはまだ当時の家だったので、蔵があり、その蔵は改造され、人が住めるようになっていた。畳ではなく、むしろの上で、裸電球が一つ。そして、その奥には、たくさんの人が食べられるように、大きな大きな釜が残っていた。

親戚たちは広島弁で言っていた。「ピカドンの後は、あんたの家で、おばあさんに食べさせてもろうたけーのー。ほんまに助けてもろうたんよ」

祖母の弟は爆心地に近い学校に通っていた。校舎の陰で、かろうじて生き延びたが、多くの同級生は、居なくなったと話していた。「死んだ」かどうかも分からない。とにかく、「居なくなった」という。

祖母の弟は、左肩から腕にかけて、ケロイドになっていた。「生かされた」といっていた。

核兵器の悲惨さを伝えられるのは、日本人だけである。

イスラエルが悪い、パレスチナが悪い、ということを追求していけば、最終的には核兵器の打ち合いになってしまう。

今回の戦争は、イスラエルとパレスチナの争いではなく、イスラエルとパレスチナの背後にいるであろうイランとの戦争になる可能性が高い。

そして、そこには核兵器の影がちらつく。

日本人が世界に言えることは、「人に対して使ってはいけない兵器がある」「人は人であり、人間動物ではない」、人が平和に暮らせる世界を求めることこそ、日本が世界に発信することではないだろうか。

日本から、核兵器の悲惨さ、「絶対に使ってはならない兵器」が核兵器だということを、もっと発信しなければならない。心からそう思う。

ロシアが発表している内容がその通りだと思う。パレスチナ人が安心して暮らせる国家を建設し、そして、イスラエルはイスラエル人が暮らせる場所を確保する。平和な世界の建設にこそ、日本人が貢献すべきではないだろうか。