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金に注目せよ。投資としても、金融の動きとしても。②

【ドル基軸通貨を守るG7、離れる新興国】
G7(米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、日本)は協調して「ドル基軸通貨を守る」としていますが、ウクライナ戦争のあとは、G7以外の新興国は「ドル離れ・金買い」に転換しました。

米国が先頭に立って、ウクライナに侵攻したロシアのルーブルをSWIFTの国際決済網から外し、ドル外貨準備の世界的信用の失墜に大きな出来事となりました。G7以外の国は米国の意に沿わないことをすれば、外貨預金を凍結される、ドルは危険であると感じ取ったのです。

米国が戦争をするとき、あるいは支援する時は常に「正義は米国側にある」と主張します。当然、相手国は正義は自国にありとします。ここに争いが起きるわけですが、G7の国々は、第二次世界大戦後78年間、米国側に立っています。とりわけ、日本の岸田首相と、ドイツのショルツ首相にその傾向は強く見えます。完全にバイデン民主党に従属している。ドイツはロシアからの低価格の天然ガス、原油が産業の生命線でしたが、それが途絶えています。日本は多額の資金をウクライナ復興に拠出したり、世界銀行の債務保証をしたりと、マネーを言われるままに出しています。トランプ大統領誕生となった後はどうするつもりでしょうか。

産油国は、反米と見なされるとドル外貨準備を凍結される恐れがあると考えています。銀行預金を凍結することは、国際慣行では違反ですが政治的にはしばしば行われます。国際法は、国連の常任理事国(米国、中国、ロシア、英国、フランス)には有効ではありません。拒否権があるからです。国際司法裁判所も同様に機能しません。

【イラン革命の時には・・・】
1979年から1980年のイラン革命(反米ホメイニ政権の樹立)の時、米国はイランの外貨準備を凍結しました。この時、自国の外貨準備(オイルダラー)も、いざとなれば凍結される可能性が高いと見た中東の産油国は、米国が凍結できない国際通貨である金(ゴールド)買いに走り、金価格は1年で、1オンス200ドルから750ドルへと3.75倍に高騰しました。

その後20年、米国FRBは、G7とスイスの中央銀行にドル基軸を守るため「金価格を下げる金売りの協調誘導」を行って、1999年の300ドルまで下げました。FRBには売ってもいい金がないので、金をブリオンバンク(投資銀行)にリースして、現物と先物で売らせる方法でした。1999年のワシントン合意で、先進国の中央銀行が金の売却を400トン/年に制限しました。それ以降は金は上昇基調に入りました。

金価格の上昇の原因は、ドル離れの傾向がある新興国(中国が先頭+インド+産油国+他)の中央銀行による、ドル外貨準備通貨売り=金買いが年間ベースで1100トン(22兆円)程度はあるからです。世界の金生産量(鉱山3300トン、リサイクル1000トン)の約1/4を、新興国の中央銀行の金買いが占めています。この買いが金価格を上げています。

世界の中央銀行の合計では、1980年から1999年は年600トン以上の売り越しで金価格は下落しました。2000年から2009年は年400トン以下の売り越しに制限があり、金価格は上昇。2010年から2021年は年400トン以上の買い越しで、金価格は上昇。2021年からは普通の時期は買い越しの金融機関の金ETFが、たぶんFRBの誘導で売り越しになっています。2021年189トン、2022年110トン、2023年243トンの売り越しです。

金ETF売り越しの中で、金価格は上がったのですから、現物買いの騰勢は非常に強いと言えます。尚、金ETFの売り越しは、金価格が下がった2013年から2015年の3年間で終わっています。

今後の金の動きはどうなるでしょうか。2024年2月末の中国の金の保有量は約2257トンだった。22年11月以来1年4カ月連続の増加で、この間に16%増やしています。ロシアの金保有量は2330トンと中国よりも多いです。ただ、2022年からはロシアの金の保有量は正確に把握できているかはわかりません。ロシアは金を国民にも推奨していますので、実際の量はもっと多いことも考えられます。

外貨準備におけるドルの比率低下の裏で各国中央銀行は金の保有を増やしています。ワールド・ゴールド・カウンシルによると、世界の中銀による金の純購入(購入から売却を引いた値)は22年に約1082トンと1950年以降で最高となり、23年も約1037トンと高水準が続いています。

金の現物需要は引き続き強く、まだ上昇余地があるように思います。それは、ドルの衰えの裏返しとも言えます。

③へ続く

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