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鈴木啓太さん(フリーランスWEBプロデューサー)にお話を伺いました(その2)。

(前回から続く)
ここ数年で、鈴木さんの働き方はどのように変化してきたのか?
3年前の2016年は、売上ベースで約2/3の東京案件であったのに対して、今年度は実に85%が東京と長野のプロジェクトとなるまで仕事を拡大してきた。

山梨はまだ分かるが、なぜ長野なのか?

現在鈴木さんは、甲府市上石田にある「studio pellet」のシェアオフィスを仕事の拠点としている。甲府市でのプロジェクトが増える中で、これまでクライアント先や喫茶店などで打合せをしていたが、拠点がある方が便利だとの考えからとのこと。ここには、ペレットストーブを展示販売するスペースでもあるが、建築家や建築写真家、ブランディング会社などが入居しており、お互いに仕事面での情報交換やコラボなどの相乗効果が生まれている。

もう一つ、長野県諏訪郡富士見町にある「富士見 森のオフィス」。ここは、夏の暑い間、甲府を離れて仕事をするための拠点として利用し始めたコワーキングスペース。北杜市でのプロジェクトの打合せなども行っている。

入居者が固定されている甲府のシェアオフィスとは異なり、様々な人が利用する諏訪のオフィスでは、スタッフの方が、お仕事に関係しそうな利用者をご紹介してくれるとのことで、自然とつながりが生まれてくる。そこから、新たな仕事の依頼に発展することもある。実際に、個人名でやっているインスタからも相談を頂いたり、東京の知人から「長野といえばあの人がちょっと近い山梨にいたよね。」と長野の仕事の連絡をくれたりすることもあるという。これまで、仕事を取る=営業するといったイメージが強くあるかもしれないが、実は仕事を取りに行くというよりも、自分の存在自体が「メディア」となり仕事やそのスタイルを伝えていくことで、自然と仕事につながっていく。それが、これまでとは異なる新たなブランディングなのでしょう。

また、時々仕事仲間と一緒に、全国各地のコワーキングスペースを訪れて仕事をしてみるという「実験」もしているという。本当にどこでも仕事ができるのか、また異なる場所で仕事をすることでどんな変化があるのかを試している。WEBという、ある意味で特殊な分野ではあるものの、WEB上での会議や打合せも日常的に行われる今日において、場所に縛られない働き方というものはどんどん普及していくのかな感じました。それとは対照的に、自分自身がリアルにその場にいることが、新たなつながりや仕事を生み出していく上で、実はとても重要なことだと感じました。バーチャルとリアル、この2つをいかに使いこなしていくかが、フリーランスという働き方の鍵を握っているのかも知れません。

今回イベントに参加されたからは、こんなコメントがありました。

これまで出会った移住者は、農業に従事している方など「場所」と強いつながりを持っている方であった。移住というと、どうしても地元住民とのつながりが中心なると思っていたが、それとは異なる移住というものもあるということが新鮮だった。また、地域のしがらみに縛られない「気楽さ」みたいなものを感じた。

確かに、鈴木さんの暮らし方や働き方から見えてくるのは、従来の自治会や産業団体・業界団体といったリジッド(固定的)なコミュニティとのつながりではなく、子育てや働く環境など、自分自身の興味関心や価値観に基づく多様なつながりが重層化する、流動的なコミュニティの姿でした。鈴木さんご自身も、山梨に「移住」したというよりも、住まいや仕事の拠点が山梨に「移動」したという感覚なのでしょう。もしかすると、この「気楽さ」が、これからの山梨での暮らし方働き方を考える上で、一つのキーワードになるのかも知れません。

しかし、こんな働き方ができるのは、これまでWEB制作の第一線で活躍してこられた経験と実績があるからで、それを得るためには、やはり東京での仕事を経験することが重要ではないか、そんな質問をぶつけてみました。

WEBの世界に限っていえば、最新の情報はWEB上で入手することができるし、実際のところ、山梨にも優秀なクリエーターの方もたくさんいる。東京に出ることは、もはやスキルを身につける上での絶対条件ではないという、意外な答えが返ってきた。高みを目指すかどうかは、場所ではなく個人の意識の問題。そして、それを可能にするための場や機会を自分自身がどれくらい持つことができるのかという、つながりの問題であると気づきました。
それは、「今」のつながりの中に留まっているのではなく、「未来」に向けて新たなつながりを築いてもらいたいという、鈴木さんらから参加者へのメッセージのようにも感じました。

最後に、未来の働き方はどうなっていくのか?鈴木さんにそんな質問をしてみました。

フリーランスの働き方が必ずしも主流になっていくとは思っていない。しかし、ネットワーク環境が進化する中で、働き方はどんどん変化していく。それを鈴木さんご自身も新たな仕事の追い求めていくようだ。将来、自分の子どもが成長して仕事をするようになったとき、その時代の働き方について行けない、理解できないようにはなりたくない。そこに、親というよりも一人の仕事人としてのプライドのようなものを感じました。また、それを追い求めていくことが、鈴木さんらしい生き方働き方なのかなと思いました。

今回、2時間余りの中で、鈴木さんの人生を一緒に辿ってみましたが、そこには予め決められた道をひたすら突き進むというよりも、自分や家族にとって心地よい方向へ自然と流れていく「爽やかな風」を感じました。一見、様々なことが偶然に起きているように見えますが、実は鈴木さんの中にある価値観が、「今」の鈴木さんへと導いている、ある意味で必然なのかも知れません。

「予定調和」ではない人生、しかし、それはすべてが「想定外」というよりも、自分自身の中にある価値観やそこから生じる感情が、未来へと導いているのかも知れません。

文責:佐藤 文昭(山梨大学地域未来創造センター特任教授)

※カバーの写真は、鈴木啓太さんのインスタグラムからお借りしました。

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