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土壌微生物を考える② (農業)

前回に続いて今回は具体的に根圏にはどのような微生物がいるかを少し具体的に見ていきたいと思いますが、その前に前回の続きとして微生物の増やし方に基本について述べたいと思います。
(前回はこちら→https://note.com/mirainoagri2021/n/na9e98cce49f4

〇堆肥・ぼかし肥で増やす
昔から行われてきたのは堆肥・ぼかし肥の発酵時に種菌を入れて有用菌を増やす方法です。中には発酵時の高温で死滅するものもあるので菌を加えるタイミングを考えましょう。堆肥は完熟のものを使うと良い微生物を安定した状態で多く畑に投入することができます。 土着の微生物を活性化させたい場合は中熟のものを使い土の中で分解を進ませることで畑の土を改良します。緑肥作物を生のまますき込むと効果はあまり長続きしないものの土着菌の微生物を一斉に増やすことができます。いずれも分解を得意とする微生物が増えるのでその後も有機物の分解が早くなり物質循環が良くなります。

〇根と生物の良い共生関係を作る
根の近傍は「根圏」と呼ばれ、養分、水分の吸収や炭酸ガスの生成、微生物の活動など、植物体を維持するための最前線です。つまり、根圏の環境を健全に保つことが作物の健全な生長と安定した収量につながるのです。根の先端は、「根冠」と呼ばれ多糖類を主成分とする粘液質のムシゲルを分泌し、このムシゲルは根と土壌粒子との摩擦を減らし、根を伸長しやすくする潤滑剤の役割を果たしています。根の周辺には根冠から分泌された物質や脱落した根毛や表皮などの有機物が豊富に存在し、これをエサとする微生物が活発に増殖します。このような根の影響を受けた範囲を「根圏」、影響の及ばない範囲を「非根圏」と呼びます。根圏に存在する豊富なアミノ酸や糖類などは、これをエサとする特定の微生物を増殖させ、非根圏の数十倍から百倍の数の微生物を養います。根面に微生物が密生することで、有害微生物の攻撃から植物の根を守るバリアの役割を果たしています。

また根圏に集まっている微生物は死ぬと養分となって根から吸収されます。根と根圏で暮らす生物は互いに利用し合う関係にあると言えます 。

ではどのような微生物がどのように活躍しているかみてみましょう。

微生物にはわかっているだけでもたくさんの種類がありますが、ここでは植物の生長に良い影響を与える代表的な根圏微生物を紹介します。

<共生菌>-----------------------------------------------------------------------
植物の根に侵入して共生する微生物。病原菌が自分だけが利益を得ようとするのに対し、共生菌は菌も植物も双方が利益を得る。

〇菌根菌
菌根菌は植物の根の細胞内に侵入して共生関係を結びます。侵入してってなんだか怖いようにも感じますね。しかし菌根菌は植物の味方です!菌根菌は植物から光合成で作られた炭水化物をもらいその代わりに菌糸を根の2倍程度の長さに伸ばして水分・窒素・リン酸のほかミネラルを集めて植物に供給してくれます。特に植物の成長に重要な肥料分であるリン酸は普段は土壌の中では非常に溶けにくく植物が利用できない状況にありますが、この菌根菌の手助けによって効率よく集めてくれるので植物の成長が良くなります。菌根菌のもう一つの特徴は多くの植物と共生できることです。 周囲の様々な種類の植物と共生してネットワークで結びつけ、各植物が欠けている養分のやり取りを行い、共によく育つようになります。また菌根菌が侵入すると植物は病気に対する抵抗性が高まり 病原菌が侵入しにくくなります。

菌根菌は他の生物との競争に弱いため肥料分の多い畑では増えません。 化学肥料の多用を避けて完熟堆肥などの有機物を中心にした土作りをし、もみ殻燻炭を1㎡あたり400 g から1.5 kg を施します。もみ殻燻炭はほとんど養分を含まず、同時に無数の小さな穴があり菌根菌の良い住み家となります。こうした土作りを秋から冬に行った後は冬から春の雑草を抜かないで育てていると広範な菌根菌ネットワークが形成されます。春に大きく耕さず種まきや苗の植え付けを行う場所の周囲だけを軽く耕してできるだけネットワークを壊さないように植物の栽培をはじめましょう。

〇根粒菌
マメ科植物の根に侵入して共生する菌です。侵入された細胞は分裂を急速に繰り返すようになるためこぶ状の根粒が形成されます。根粒菌は空気中の窒素を同化して植物が使える窒素化合物(アンモニア)に替え、その一方で植物から炭水化物をもらっています。この共生によってマメ科植物は肥料分の少ない畑でもよく育つことができます。 根粒菌は新しく伸びた根に侵入しますが、根粒菌が活発に活動するのは一か月程度でその後は活動を停止し根粒をつけた根が枯れたり、根粒自体が脱落したりすることで周囲の土を肥沃にします。枝豆や落花生などマメ科の野菜を育てた後作として肥料分を好むキャベツ・ほうれん草などを育てると肥料をあまり施さなくても成長します。この他、根粒菌がついた段階で病気に対する抵抗性が高まります。 菌根菌ネットワーク発達した畑でマメ科植物を育てるとさらに根粒菌が増えます。根粒菌はリン酸を多く必要とし、それが菌根菌によってもたらされるからだといわれています。窒素分が多い畑では根粒菌はあまり増えません。

今回は共生菌について記載いたしました。次回は分解菌について記載したいと思います。

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