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読書メモ|イーロン・マスク上|ウォルター・アイザックソン

 「手荒にしてくるやつがいたら顔の真ん中に思い切りパンチを叩き込めばいい、そうすれば2度と手荒な真似はしてこないとわかりました。たこなぐりにされても、そこできつい一発をお見舞いしてやれば、次にまたということはないんです」
 イーロンは後に、クイーンズ大学に通った2年間で学んだ1番大事なことは、「頭のいい人々とうまく協力し、ソクラテス流の手法で、共通する目的を達成すること」だと同窓会誌に語っている。
 夜はパロアルトのロケット・サイエンスという小さなビデオゲームメーカーで働いた。最初インターンとして働かせてくれと頼みにいくと、選抜試験がわりに、この問題が解けずに苦労している、なんとかしてみてくれと言われた。(略)マスクはDOSをつかって、BIOSとジョイスティックのリーダーをバイパスする方法をネットの掲示板でハッカーに尋ねて解決した。「シニアエンジニアにも解決できなかった問題を、私は2週間で解いてしまったわけです。」きみはすごい、ウチに就職しないかというお誘いもあったが、マスクは就労ビザを取る為大学を卒業する必要があった。もうひとつ気づいてしまったこともあった。自分はビデオゲームが死ぬほど好きだし。それを作って稼げるだけのスキルもある。だが、人生としてそれがベストではない、だ。「もっとインパクトの大きい仕事がしたいと思いました。」
 「インターネット革命は一生に一度のチャンスだ。鉄は熱いうちに打てだよ。大学院なんて、行こうと思えばいつでも行ける」マスクはパロアルトに戻ると、自分の決断をロビン・レンに伝えた。「他のことは全部保留だ。インターネットの波に乗る」一応保険もかけておいた。入学し、すぐ休学したのだ。「今、地図と職業別電話帳を組み合わせたインターネットソフトウエアをつくっています。たぶん、失敗するでしょう。そうしたら戻ってきます。」と材料工学のウイリアム・ニックス教授にも話を通しにいった。それはかまわんが、君は戻ってこないと思うよが教授の答えだった。
 「彼と一緒に仕事をすることはできるし、彼の友達でいることもできるのですが、両方は無理だったんです。で、このふたつから選ぶなら、後者の方が楽しいかなと思いまして」
 マスクはビデオゲーマーさながらの激しさで戦った。対して(ピーター)ティールは、どうすればリスクが小さくなるか冷静に計算した。いわゆるネットワーク効果があって先に大きくなった方が成長速度もあがる。つまり1社しか生き残れない。であれば『モータルコンバット』さながらの戦いを繰り広げるより合併したほうが得だ。
 銀行という政治的にややこしい事業を進めるにはフィクサーがいたほうがいいと、マスクとマイケルモーリッツでニューヨーク市長を退任したばかりのジュリアーノに会いにいったこともある。だが、執務室に入った瞬間失敗したと悟った「ギャング映画かなにかかと思ってしまいました」とモーリッツはいう。「山のようなアホに囲まれてるし、本人もシリコンバレーのことなどまるでわかっていませんし。なのに、彼もその取り巻きも、懐を肥やす気だけは満々なんです
 「じゃあ、腕相撲で決めようか」プログラミング問題の解決方法としてこれ以上にアホなやり方はない。そう思ったレブチンは正しい。しかもマスクは倍近い巨体なのだ。全体重をかけ一瞬で負ける。
 「その仕事、しなかったら後悔するでしょうね」妻にも背中を押され、ミューラーはスペースXの本格採用第一号となった。この時、ミューラーは報酬二年分を第三者預託にすることを求めた。マスクはこれを承知した。ただ、この件から、ミューラーは共同創業者ではなくあくまで社員だとマスクは考えるようになった。「自分は共同創業者だ、と、二年分の給料を第三者預託にしてくれ、は両立しえません。やる気を汗とリスクがそろわなければ共同創業者にはなれないのです」
 工場は、設計、エンジニアリング、製造を一箇所にまとめるべきしというマスクの哲学に従ったレイアウトとした。「組み立てラインの人間が、設計者の首根っこをつかまえて、なにを考えてこんなことにしたんだと言えるべきなんだ」と説明した。「コンロに触って熱かったらすぐ手を引っ込めるけど、コンロに触れてるのが別の誰かの手だったら、それをなんとかするのに時間がかかったりするからね。」
 (軍の要件などの)要件はすべて勧告として扱え。疑う余地のない要件は、物理学の法則に規定されるものだけだ。
 (エバーハードとマスクは)バディームービーのような展開が長続きするには、似すぎていた。ふたりとも猛烈に働くし、いつもピリピリしていて細かなところが気になる技術者で、だめだと思った相手には容赦ない
 「因果応報というやつでしょうか。元老院で刺されたシーザーのように、私はペイパルのクーデータリーダーに暗殺されたわけですよ。そのとき、なんてことしやがるんだとこき下ろすこともできました。でも、しなかった。こき下ろしていたら、ファウンダーズファンドが2008年に助けてくれることもなく、スペースXは死んでいたでしょう。占星術とかはまるで信じていませんが、因果応報というのはたしかにあると思います。」
 航空宇宙業界のデブった会社には想像もできないことでしょうね。」とブザはいう。「イーロンのあり得ない期日が達成できちゃうこともあるんですよ」
 そして12月22日、2008年という悲惨な一年に幕を引くかのように、マスクの携帯電話が鳴った。NASAの宇宙飛行部門の主任ビル・ゲルステンマイヤーだ。国際宇宙ステーションまで12往復、16億ドルの契約がスペースXに与えられるという。「NASAを愛してる」マスクはこう返した「ロックだねえ」マスクはコンピューターのログインパスワードを「ilovenasa」に変えた。
 フォン・ホルツハウゼンはドアのハンドルをデザインした。ふだんは車体にぴったり埋め込まれているのだが、キーをもって近づくと、飛び出し、光るのだ。機能としてはでっぱっているハンドルでもドアは開けられる。だが、マスクはこのアイデアに飛びついた。

  相手の力量を評価するのに都合のいい神経回路を持っているようで、ほんの何点か尋ねただけで(必要な人材か)だいたいわかるんです」
 モズデルはティムブザと廃品を集めてまわった。スクラップの(液体窒素の)圧力容器を150万ドルで手に入れたのです。「いまも第40発射台で使っていますよ」ヘリウムの貯蔵タンクも20台もらい受け、クレーン2基を200万ドルから30万ドルまでコストを圧縮した。ロケット用バルブは自動車用の30倍もするので、航空宇宙以外の企業から買えとマスクは指示した。NASAが国際宇宙ステーションでつかっている留め金は1個1500ドルもする。スペースXはトイレの個室に使う留め金を改造し、30ドルで作ってしまった。(略)今回のファルコン9用施設の改修は費用が10分の1しかかからなかった。スペースXは宇宙を民営化するとともに、そのコスト構造も根本的に変えてしまった。
 「リスクを報告し、エンジニアリングデータを見せれば、本人(マスク)がさっと判断して、責任を我々から自分の肩に移してくれる。イーロンはそういうひとなんです」
 「あなたは私にとってロチェスターなの」シャーロット・ブロンテの小説「ジェーンエア」に登場する物憂い夫ロチェスターのことだ。「だから、ソーンフィールド邸が火事になってあなたの目が見えなくなったら、戻ってお世話をしてあげる」(タルラ・ライリー)
 人は映像データだけで運転しているのだから、機械にもできるはずというわけだ。「グーグルのやり方では、センサーシステムに金がかかりすぎてしまう」
 サムテラーはからめ手に走った。褪せた白線の塗り直しを運輸省にお願いしたのだ。だが、なしのつぶて。こうなれば最後の手段だ。白線の施工機を借りてきて自分たちで塗り直してしまえばいい。だがそのころ、誰かが運輸省にいたマスクのファンに渡りをつけることに成功する。スペースXを見学させてくれるなら白線の塗り直しはなんとかしようと請け合ってくれた。その後はオートパイロットで問題なくそのカーブを曲がれるようになったという。
 「気持ちが落ち込むとなにごともうまくいかないんだよね。だから、問題はそのあたりに流されてしまうことなんだろう」
「いい医者にかかってぴったりの薬をだしてもらえば大丈夫なんだ。そうしろよ。世界はきみを必要としているんだから」だが、結局マスクがそちらに向かうことはなかった。精神的な問題に対してはとにかく痛みに耐え、目の前のことに集中するのが自分のやり方なんだとマスクは語っている。
 「そこの作業員に優しくするのは、自分の仕事をきちんとこなしている何十人もの作業員に対して優しくないことに等しいんですよ。問題箇所を修正しなければ、ちゃんとしている人々を傷つけることになるんです」

・技術系管理職は実戦経験を積まなければならない。ソフトウエアチームの管理職なら仕事時間の20%以上は実際にコーディングをしていなければならない。ソーラールーフの管理職なら、自分も屋根に登って設置作業をしなければならない。
仲間意識は危ない。相手の仕事に疑問を投げかけにくくなるからだ。これは避けなければならない。
・間違うのはかまわない。ただし、自信をもった状態で間違うのだけはやめよう。
・自分がやりたくないことを部下にやらせてはならない
・解決しなければならない課題に直面したら、管理職に伝えて終わりにしないこと。
・採用では心構えを重視すべし。スキルは教えられる。根性を叩き直すには脳移植が必要だ
・気が狂いそうな切迫感を持って仕事をしろ
・規則といえるのは物理法則に規定されるものだけだ。それ以外はすべて勧告である。

ボリュームがあって時間がかかってしまった。まだ(下)もあります💦
マスクはジョブスよりすごい。デザインにこだわるだけじゃなく、技術的なこともわかるしできるし、恋愛も楽しんでいてすごいよくばり、めちゃくちゃな性格だけどまわりのみんなにとても愛されてる。
中国にテスラの工場をつくるとき、間に入ったロビンレンが、マスクを変えるか、中国政府のルールを変えるか、迷って中国を変えたエピソードとかもすごいです。
それから、著者のウォルター・アイザックソンは経歴がすごいです!

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