私の中の悪魔、2
54歳、大手電機メーカーのシステム部部長、勤務歴30年、栃木県出身、M。
男が私に関心を持つまでは容易だった。
ただ顔を見つめてるだけで、Mは簡単に落ちた。
きっと女性に対する免疫が少ない方だったのだろうと思う。
見た目も、お世辞にもいい男とは言えなかったが、私にとってはそんなことはどうでもいいことだった。
私はその反応をただ楽しんでいたのだと思う。
最初は仕事を教えてもらい、そのうちに社内メールをするようになり、個人の携帯でやり取りするようになって、自然の成り行きで社外でも会うようになった。
管理職とだけあって気前がよく、私が行きたいと言えば高級店や料亭などにも連れて行ってくれた。
最初私はMが既婚だとは知らなかった。
薬指に指輪が無かったし、一人暮らしだと言っていたから結婚したことがないのかと思い込んでいた。
しかしそんなことはなく、栃木に家族がいるが奥さんと仲が悪く、滅多に帰らないと聞いたのは、それからずっと後のことだった。
私はそれを聞いた後も、特に動揺などは無かった。
Mは私が望めばすぐに離婚すると言った。
でも私は、いざとなったらやはりそれは躊躇してしまった。
それに私自身、まだ同棲中の男がいたのだった。
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