2023年の読書録

自分用なので文章が支離滅裂。文体はその時の気分。
ネタバレしかない。

6月

ヴァイオレット・エヴァーガーデン ~ラスト・レター~

 新しい読む本がなくなって、そういえばアンの話以降読んでなかったなと。
 アンのその後と少佐の話が読みたくて購入。公開恋文と外伝が見れてないから、外伝の話が主で中間に収録されているお話はすごく気持ちが重くなった。見れてないエピソードをすぐに履修したかったのに、ネトフリ独占配信で全然見られそうにない。アナログでレンタルか円盤買うか。円盤も持っておいて損はない作品。
 少佐の話が読みたくて買ったけど、大佐 if が良すぎて。でも、大佐ルートだとふたりの共依存がやばくて、社会的に考えると少佐で良かったな、と。ちょっと冷静な視点を入れないと、大佐ルートが持つ物語の引力がすごい。 
 名前ネタが大好きだから、存在できなかった世界に別の名を与えられて生きているのが最高だった。少佐よりも可愛らしい名前をつけるんだろうなと思ったら、その通りでニマニマした。
 仕事で衣類の注文を受けるんだけど、靴の注文を受けた時に小さな□□□□が「くつくつくつくつ、です」って言っている姿を思い出して、一人でキュンとしてた。
 というか、セーラー服なのやばいな。セーラーだとまた可愛らしさが増して、「その名に相応しい」女の子って感じする。

ある秘密

 図書館の海外の小説コーナーでタイトルから手に取って、裏表紙の推薦文読んで(推理ものだと得意じゃないから)、借りることにした。
 タイトルも表紙も書店で見たことがあって、有名な作品だし、外れないだろうと。あと本の薄さから読みやすそうだと思った。秘密というタイトルで、この厚さとめくりやすそうな紙ということは簡潔にまとめられていて、なおかつ、多くの人の評価を得ているから物語のボリュームも充分なんだろうと。普段は装丁で感じた一瞬のことをこうして文字にすることがないから、自分がこれだけ多くを感じ取っていたことに、驚いてる。そして、装丁って深い。
 めちゃくちゃ読みやすかった。するする読める。でも、重い。あんまり、ナチスについて慣れていない人だと重すぎてつらいかも。でも、重さに反してすごく読み心地が良い。文体?お話の描き方がうち好みだった。こういうお話の書き方好き。景色が綺麗で、文字が綺麗なやつ。
 主人公の両親、罪深すぎて……。両親の最期はすごく納得しちゃった。戦争の影が、ナチスのありえない政策によって起こった悲劇が、両親のきっかけになってしまったのが、ただただ悲しい。つらい。
 主人公が秘密を知る前に考えた物語から秘密を知って考えた物語の構成が良かった。それと、主人公の子供の頃のコンプレックスと成長していくところのサブストーリーの構造。
 うちは、お芝居でこの題材を取り扱ったことがあるんだけど、自分がセリフを読んだことのある人物と同じ名前の人物(もちろんお芝居とは別人)が出てきたときに、ああ、よくある名前なんだって、思って、ずっしりきた。あのお芝居の時をとても思い出した。
 確かに語り継いでいかなくてはならないけれど、口にするには、言葉にするには重すぎる現実に、この本はすごく最適だと思った。無理に話す必要はないけれど、そっと差し出したい小説。
 本当はもっと両親の恋についての話だとかをしたかったけど、ここで締めておく。

7月

獣の奏者 探求編

 人生で一番好きな本、獣の奏者。
 職場のおじさんと好きな本の話をして教えたらおじさんも読み始めたから、前半はアニメ掻い摘まんで復習して、ここから読み直した。
 何度読んでも新しい感情を覚える本。初めて読んだのはたぶん中学生の時だったと思うけど、よくこの内容を理解して読んでいたなと思う。でも、今読んだ方がずっと描写が鮮明に見えて、あの時印象に残らなかったシーンがとても重たい意味を持っていて、ジェシ視点の語り口でありながら、エリン、イアルの気持ちが痛いほど伝わってきた。
 アニメを直前に見ていたから、ウハン村やチムルの村での細々とした描写に気づきがあって面白かった。これから完結編をじっくり読むけど、その前にさっき掻い摘まんで読んでしまって、そこで辿り着いたあとがきに、アニメ化をきっかけに書いたとあって、納得した。アニメスタッフは探求編、完結編のこんな細かなところまで見てあのオリジナル要素を作ったのかと震えていたから。上橋先生の意見が入っているだろうとは思っていたけど、アニメ→探求編の順なら合理的で納得がいく。それにしてもよくできていて震えてしまうけれど。エリンのアニメ脚本と演出はすごい、ほんとうに。

8月

獣の奏者 完結編

 ふとした時や本の背表紙が目に入った時、人生で一番手に取って開いたページから掻い摘まんで読んでいた本を久しぶりに読み通した。前編から続けて最初から最後まで読んで見た景色は、前回そうやって読んだ時とまた違って見えた。何回も何回も読んでいるエピソードなのに、掻い摘まみ読みをしすぎたせいで、前編に描かれた背景との連動性にはとても感動した。
 長い長い本なので、またしばらくは掻い摘まみ読みをするだろうが、2、3年に1回は前後編通し読みをしたい。前半2巻から読み通せたら最高。

ふわふわ

 かの村上春樹の本を初めて買った。下記のものと合わせて2冊。こちらは予定にないものだったけど、手に取って開いた瞬間欲しいと思った。文庫サイズの絵本。村上春樹の言葉ってすごい。例えの説得力と読みやすさ。
 どこかで本当に頭が良い人は難しい言葉を使うのではなくて、誰にでもわかる言葉をわかりやすく組み合わせて説明するというのを聞いたが、それを体感できた。

レキシントンの幽霊

 おそらく初めて読んだ村上春樹作品「トニー滝谷」が収録されていて、初めて読んだ時から手元に置きたいと思っていたので買った。
 トニー滝谷は高専の文学の授業の課題だった。複数回の講義とレポート提出のために、何回も読んだが飽きなかった。言葉のリズム感と人間の孤独に共感した。普段なんとなく感じたままにしておいたものを授業の問題や課題として、ここはこれを現していてと言語化してもらえたことで、より面白く読めた。社会人になって自由にお金を使えるようになってから(さらに母親から服の趣味をあれこれ言われなくなってから)、トニーの妻の異様な服への執着がとても理解できるようになった。
 他に特に印象に残っているのは「緑色の獣」「沈黙」。
 「緑色の獣」は人間のキモいという気持ちの解像度がエグい。気持ち悪いじゃなくてキモいなの。獣、かなり可哀想でちょっとこっちも泣きたくなったけど、でも、女性の過剰な行動もめちゃくちゃわかるし、あの過剰さも当たり前だよね、そうなるよねってなるくらい、獣の容姿と行動はキモい……。
 「沈黙」。読了から数ヶ月経っていて、印象に残ったということしか覚えていなかったので、今かなり掻い摘まんで読んだ。読んでいた時にとても没入してひどく共感したのを思い出したけど、あの没入していた時に自分が抱えていたものを忘れてしまったので、あの時はこういう理由があってここのストーリーや描写に影響を受けたというのまでは思い出せない。ただ、ラストの主人公のまとめ、主人公の意見はどんなに時間が経って自分がどんな状態だったとしても、完全に同意見だろう。うちも大なり小なり「沈黙」に呑まれたことが何回もあるから。

9月

獣の奏者 外伝 刹那

 シリーズの中で外伝刹那が一番好き!!!! 以上!!!!
 (エサル師の話は久しぶりに読んだ。過去編の師と似た年頃になった今、ようやく話の内容が理解できた気がする。当時は中高生なりに理解して読んでたつもりだったけどね。)

10月

私はスカーレット

 本屋で思わず手に取ってしまった本。
 原作の「風と共に去りぬ」は数年前の年末に朝から映画の枠があって、そこで観た。たった1回しか観ていないのに、強く強く印象に残っている作品。好きすぎて、まだ初見からの視聴体験を塗り重ねたくない。
 何度か原作の本を読んでみたいと思っていたが、スカーレット視点で再構成したと聞いて、強い女の子が活躍する物語大好き人間としてはその場で購入しないわけにはいかなかった。
 映画で観たアシュレーの印象は良くなく、なんでスカーレットはこんなやつずっと好きなわけ!っと私は憤慨していたが、大人になったからか、映画の尺の関係で描写が足りなかったのか、この小説では納得できた。頼りない男なのは変わらないが、でも、スカーレットの気持ち、わかるわ。
 メラニーの愛も興味深かった。スカーレット大好きじゃんね。というか、この血族はどうやってもスカーレットに強く惹かれちゃうんだな、罪深いな。血族の中で最も強くスカーレットに惹かれ、愛し、最終的にスカーレットから大切な人だったと想われるのが、メラニーなのが、良い。
 バトラーのスカーレットへの矢印が重い。なんて不器用なバトラー。ボニーちゃん失うのは可哀想すぎるよ……。

11月

ピーター・パンとウェンディ

 もちろん、スタリのミュージカル予習のために購入。ディズニー版は幼い頃に観たという記憶があるし、ピーター・パンのビジュアルといえば、ディズニーのものだ。それと、私の幼い頃のピーター・パン体験にはこのミュージカルがある。

 生身じゃない着ぐるみでパペットみたいな顔のミュージカルを観た記憶だけが残っている。このピーターのつり目がちょっと怖かった。それと、本当にキャラクターが空を飛んでいた記憶。ただ、子供の記憶だからディズニーやイメージで捏造したものだと思っていた。今回これを書くにあたって調べたら、フライングありじゃないか!飛んでた!本当に飛んでた!
 早く大人になって自立したかった私にとって、ピーター・パンはずっと共感できない(気持ちは分からなくはないが)、かわいそうに思う存在だった。それは原作を読んでもあまり変わらない。興味深かったのは訳者あとがきにあった、作者の生涯。ピーター・パンが持つ魅力と大人向けとも言える薄暗い背景やメッセージ性の秘密はここにあった。

12月

ピーター・パンの冒険

 上記と合わせて購入。続編や番外編ではなく兄弟作のようなもの。舞台がケンジントン公園になり、それに合わせた設定になっている印象。こちらの方が先に書かれているのかなと思ったが、調べてもあまりはっきりしなかった。こちらでも「キス」と「指ぬき」のシーンがあり、バリーさんその設定気に入っているんだな。

オズの魔法使い

 ヘブンズのミュージカル予習のために購入。オズの魔法使いの映画はよく覚えている。物語の始まりであなたボス倒してます!の展開は生まれて初めてだった。その魔女の靴を3回打ち合わせてカンザスへ帰る魔法性。オズがラスボスかと思ったらラスボスじゃないし、しかもドロシーと同じアメリカから流されてきた人間! この波のあるストーリー展開が本当に新鮮だった。現代の子供たちはオズよりもネット小説原作のアニメとかでこういうストーリー回しに初めて触れるのだろうか。だとしたら、少し悲しい。
 ちなみに、私は初見から「かかし」が好き。

感想番外編 
 この本の巻末の作者についての解説も面白かった。HE★VENSの「Dreaming of OZ」のテリーが、作者になること、続編の打診はここからきているのかなぁと勝手に思っている。原作への興味を誘う、素敵な仕掛けだ。