他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論
一夜のうちに
2ヶ月ほど積ん読になっておったのだけど、ようやくページを捲ると驚異の読みやすさ&内容の素晴らしさであっという間でしたよ。
「戦略」という名の尖った姿勢とは異なる、組織や社会の中で行き詰まったとき、うまく関係性を築けていない時の本質的な解決の仕方。
溝をなくして「あなたと」交流するための4つの対話ステップが紹介されています(Amazonから)
1.「準備」のStepもあるのが実に実践的だな、と思う。
(ここは著者のオリジナルな概念とのこと)
相手や自分、各々の「ナラティブ(=物事を見る時の解釈の枠組み、価値観、見方、その人にとっての常識など)」を理解し、ナラティブ故に生じた溝(交流遮断)を成立過程も含めて認知、分析し、橋をかける。
「対話が日本で起きにくいのは、お互いに同じ前提にたっていると思っているから」(劇作家平田オリザ氏の著者より)
自分のナラティブに文化の違う相手と交渉したり共同作業をする経験が、日本人には少ないのだという(それは確かに歴史的にもそうなのだろう)。さらにSNS等で自分とナラティブが最初からある程度共通性を持った人ばかりとの関係性が増えていることも拍車をかけているのかもしれない(合わないとそもそも対話始まらないし)。
医療ではどうだろう?と考えた時に、そもそもの立場や権力が作用することに無自覚であってはならない、そうでなければ自分が見たい現実だけを観ることになるという言葉はとても響きました(p126)。
医師ー患者間など最たるもので、本当に考えていることなんて最初から話してくれるとはとても思いません。故に波風を立てないように「先生に任せます」と患者さん(家族)側が譲歩してくれているケースが多いです。
正しい説明という暴力
緩和領域で言いたいことが言えない辛さを抱えた患者さんの事例はこころに刺さります。
コメディカル間との関係も同様。各自がもっている決定権や専門領域の知識の差に敏感になり、相手にマウントをとって一方的な、将来の生産性のない「口頭指示(命令)」にならないよう気をつけたいものです。
逆に下の立場としての「正義のナラティブ」への陥りやすさも著者は解きます。上司や組織を「道具」としてしかみていないために起こる一見正当性もありそうな落とし穴で、延長上にある未来は明るいものではなさそうです。
◯◯戦略など血気盛んなビジネスツールや思考法が取り沙汰される現在、そこに疑問をもった筆者に共感を持ちます。
・一体何と戦っているのか
・そもそも戦いなのか、戦う必要があるのか
心を奮い立たせるという意味で「共通の敵」を設定することは一時的な有効性を示しかも知れませんが、代償も多いでしょう。勝敗をはっきりさせ、どちらかが歯痒い思いをしている、ギャフンと言わされている姿が目に浮かぶよう。
それよりも対話による争いのない対立を、と。
過去の経験を鑑みるに全例を解決出来るとは思えないような事例も脳裏に浮かんできますが、少なくとStep1,2(認識と現状の観察)が圧倒的に不足していた、もしくは考えもしなかったことが大部分を占めてそうです。
まずは自分のナラティブの特性をふまえつつ、(こじれた)関係性を見直していこうと思います。
まだまだコンテンツも未熟ですが応援して頂けるとすっごい励みになります!