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MTG向けダイスを作ったはなし

こんにちは、ミルモジャです。
マジックザギャザリング(MTG)というカードゲームのファンです。
プレイヤーとして遊ぶほか、カードに絵を描いたり、変わったローダーやプレイマットなどのサプライを作ったり、MTG文化の中で色々と遊ばせていただいてます。

2年ほど前から、自分が使いたいと思えるダイスを作り始めました。
そして、幸運なことに出資や量産のお話を頂いて様々な準備をしてきました。
ようやく広くお話できる形になりましたので、今回はその経緯や想いを書きたいと思います。

なお、今回の記事は宣伝目的の文章となります。
出資してくれた方々が黒字化出来たら、カラーバリエーションが5色展開になる計画があるので、全力で宣伝します!
ご了承のうえ、読んでいただけたらと思います。

きっかけ ~紙で使うカードじゃないですよね~

どんどん増えるよ硬鎧

MTGはトレーディングカードゲームの中で最も長い歴史を持っており、約2万種類ものカードが作られてきました。各カードは様々な効果を持っており、それらを組み合わせる事でとんでもない結果を机の上に作り出せます。
それはMTGの大きな醍醐味の一つだと思っています。

しかしある日、MTGも遊べるボードゲーム喫茶『天岩庵』で遊んでいた時に、対戦相手の方がこんなことを言っていました。

「いやぁ、これ、紙で使うカードじゃないですよね;…スイマセン;」

盤面には大量の『堅鎧の大群』。
召喚酔い、タップ状態、それぞれを識別しようとして、二人が持参したダイスを合わせても足りない、とんでもない状況になっていました。

…そのころ、MTGでは卓上で遊ぶカードゲームの他に、デジタルゲーム版が盛り上がりを見せていました。そんな状況の中で新しくデザインされたカードには、デジタル版では自動で処理してくれるような"数字"を複雑に扱う効果が増えたように感じていました。
(『旗印』とか、昔からそういうカードはありますよね? という話は一旦置いといて…。)

デジタル処理を前提にしたカードデザインによって、リアルでは煩わしいから使いたくないカードが出てしまうとしたら、悲しい事だと思いました。

試行錯誤 ~数字を表す方法~

どうすれば簡単に数字を管理できるか。

手軽に2桁3桁の数字を管理する方法があれば、デジタル寄りのカードでも使いやすいかも?私はそう考えて、色々な数を表現するサプライを買い漁りました。
10面ダイス、リングカウンター、カード型のカウンター…。
しかし、納得いくものがなかなか見つからなかったので、今度は自作し始めました。

結局は持ち運びの利便性や、すべてのプレイヤーが視認できる事、カードに置けるなどの利点から、ダイスサイズの"何か"であるべきだと思いました。
そこからは、数字の並び順や向き、ガイドラインを付けてみたりと試行錯誤をして、自分が使いやすいと納得いくデザインが出来ました。

ネイルアート用品を用いた試作品。

最大の特徴は、簡単に数字が増減できる数字の並びと向きです。
ガイドラインに沿って右に1マス進めば数字がひとつ増えます。
6~0の数字は上下逆になっているので、ダイスを持ちあげることなく、最小限の動きで前後の数字にアクセスできるようになっています。
手前味噌ですが、このデザインだと簡単に10進数の数字を表せるので、めちゃくちゃ便利でとても気に入っていました。

自分で使う分を手作業で根性量産と修理を繰り返していましたが、同じ作業を延々するのに飽きてしまい…。
今度は、3Dプリンターで作ってやろうと毎晩3Dツールに悪態をつく日々を送っていました。

頭が爆発しそうになる ”正ねじれ双五角錐”

製品化計画始動 ~量産してみない?~


↑天岩庵店主

ある日、MTGも遊べるボドゲカフェ『天岩庵』の店主から…。
「そのダイスいいですね! うちでお金出すので量産してみません?」
「ダイス作家さんの知り合いを紹介しますよ!」
「…ただし採算度外視なプロジェクトにはなると思います。」
と、お声がけいただきました。

量産だって!?どうせなら儲けたいぜ!!なんて最初は考えていましたが…
ダイスを作る初期コストを調べたり(超高い)在庫を大量に抱えたり(超大量)、不良品の検品(多い)などを総合的に考えて、赤字リスクがめっちゃ高い事がわかりました。。
しかも、後からやってきたその他のリスク(戦争、原材料高騰、円安)が直撃してしまい、当初の想定よりもどんどん値段が上がる始末…。
…店長さん。お金出してくれて本当にありがとうございます…。
(ダイス作家を続けている方は本当にすごいです。)

量産するからには良いものをと…デザインの詳細を詰めていきました。
「本当はラインは筋彫りにしたいです!」
「カラーバリエーションが欲しいです。浮きマナを管理したい。」
などなど、妄想を膨らませていきました。

技術的な壁 ~普通の工場じゃ作れません。~


おなじみのダイス作家さん!

デザインについて妄想を膨らませてから、店長さんの紹介でゲームマーケットでおなじみの珠工房さんを紹介いただきました。
さっそく相談してみたところ…

「んー、おもしろいですね! ただ、こんなデザインは見たことないです。普通の工場じゃ作れないでしょうね…。」

通常は無地のサイコロの各面ごとに数字の加工するらしいのですが、今回は面をまたぐデザインが施されているため、非常に難しい。おそらく、型から作る必要がありコストが更にかかる。
また、そもそもこのデザインでは型にするのが難しく、普通の工場では断られるだろう。といった話でした。
…意気消沈したのも束の間、珠さんから想像していなかった言葉を頂きました。

「ですが…。この加工が出来る工場がもし見つかれば、珠工房としても創作の幅が広がります。」
「珠工房としても出資するので加工できる工場を一緒に探しましょう!」

あまりにも予想外!!

完成品に至るまで ~ダイス屋の矜持~

そこからは、珠さんが1年以上にわたり加工可能な工場を探し続けていただきつつ、デザインについて細かい確認をしていきました。
挑戦していただける工場が見つかったら、サンプル制作や工場へのフィードバックを繰り返していきました。

色サンプルや質感の写真、無視できないレベルでずれてしまうエラー。タップすると転がってしまうエッジの改善などなど紆余曲折を経て、納得いく製品が出来ました。
その時、珠さんから一言。
「…ちなみに。通常の10面ダイス。ランダマイザーとしても十分に使えることをテストして確認しています。」
「…ダイス屋の矜持としてそのように作りました。」

出目に偏りが発生しそうな特殊なデザインだったので、ランダマイザーとしての機能は諦めていたのですが、珠さんの矜持に感服した瞬間でした…。

できたー!

製品が出来てきたら、今度は宣伝の為に商品名とロゴが必要。
TCGプレイヤーでもあるデザイナーのナカタヒサさん(@nakatahisa)にお願いして素敵なロゴを作っていただきました!

かっこいいー!

名前を決めるのにずいぶん時間がかかってしまいましたが、機能がわかりやすく、MTGの世界に合う魔法の道具みたいな名前を目指しました🤤💦
カラーバリエーションは青、緑、赤。私がよく使う3色です。
(オルゾフファンの皆様ごめんなさい。)
今後、ゲームマーケット等で、珠工房さん/天岩庵さんから販売されます。
出資者のお二方が赤字から脱出できたら、黒と白のカラーバリエーションを追加して増産する野望があります!是非使ってみてね!!

以上、がっつり宣伝でした。お読みいただきありがとうございました!
また、このような素晴らしい機会を与えてくださった天岩庵と珠工房に感謝いたします!
ミルモジャ

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