空の羽

青い水面(みなも)に 別れを告げて
一瞬の空に舞う

夕暮れの残光 背にして
薄い 羽を振るわせている

いつの日か
水面(すいめん)を見上げて思った
どんなに空は広いんだろ

飛べるかな
まだ 飛べないや
思いを振り切って 泳いだ

銀翊(ぎんよく)の蜻蛉(かげろう)
まぼろしの風
まぼろしの雲
これが
ボクの 望んだ“空”だったんだね
めぐる刻に 追いかけられながら
さいごを ココロ で 噛みしめ

飛ぶよ

少しずつ 上がる体温 まだ
明るめの 地平を

見下ろして 翔る
なんて 美しい生命(いのち)だ

もしもボクが
明日も 変わらず生きてけたら
どんなに空は つまらないんだろう

あと少し
もう少し
一秒 一瞬で いいから

六月の蜻蛉
最期の空
最期の夕日
愛しい
ボクの望んだ“この時”よ
待ってはくれない 刻に溺れて
さいしょを ココロ で噛みしめ

行くよ



水の匂い
草の 囁き
光の優しい 子守唄
もう
触れられなくなってしまうんだね

あと少し
もう少し

飛ぶんだ

銀翊の蜻蛉
ありがとう空
ありがとう雲

これで

もう 満足したんだ そして
キミに逢うため 時間は もう少ないけど
さいごの 世界に 告げる

美しいよ

まだ


飛べる

~ 一瞬のいのち。
儚いけれど 美しい世界を 知った蜻蛉。~

みじんこくんの 夜のお話。