法律昔話 ももたろう

 むかしむかしあるところに(ただし,平成30年1月1日時点の民法・会社法の適用があるものとする),おじいさんとおばあさんがいました。

 ある日,おじいさんは山へ芝刈りに,おばあさんは川に洗濯をしに出かけました。

 おばあさんが洗濯をしていると,川上から大きな桃が流れてきました。「これはきっと山で川に落ちた桃で,無主物(民法239条1項)にちがいないわい」と思ったおばあさんは,桃を拾い上げて所有権を取得し,家に持って帰りました。

 家に帰り,桃の溝にそって包丁を入れたところ,桃が勝手に割れ,中から元気な男の子が出てきました。おじいさんとおばあさんは,「まさか新手の乳児遺棄か」と思いましたが,二人には子どももいなかったので,「桃太郎」と名付け,二人の子として育てることにしました。

 桃太郎はすくすくとそだち,やがて立派な青年となりました。ある日,桃太郎が唐突に,「おじいさん,おばあさん,私は,鬼ヶ島へ行って悪い鬼を退治したいと思います。」と言い出しました。

 「嫁をもらって家を継いでくれれば」と思っていたおじいさんとおばあさんには青天の霹靂でしたが,桃太郎は本気のようです。やむなく,おじいさんとおばあさんは,桃太郎の申出を受け入れることにしました。

 ただ,「鬼退治」という事業が失敗したときに備えて,おじいさんは桃太郎に出資金を与え,「㈱ももたろう」を作らせました。おばあさんは,桃太郎の当面の食事として,きびだんごを作ってあげました。

 こうして,㈱ももたろうときびだんごを手にした桃太郎は,鬼を退治して報酬を得るべく,鬼ヶ島への旅に出かけました。

 会社のお金から給料を得て旅をしていましたが,途中で,「やはり鬼を倒すには,組織的な力が必要だ」と思った桃太郎は,ともに働いてくれる人を募集することにしました。

 しかし,応募してきた人たちに「報酬はきびだんごでどうか」という話をしても,だれも応じてくれません。

 桃太郎が途方にくれていると,犬・猿・キジがやってきました。彼らは,「きびだんごじゃなくて,株をくれたら一緒に働くよ」と言ってきました。

 桃太郎は,応募してきたのがもはや人ですらないので,どうしたものかと考えましたが,きびだんごも減らずに仲間が増えるのならいいかと思い,犬,猿,キジにそれぞれ20%ずつの株式を与えました。

 翌日,桃太郎が犬猿キジに鬼ヶ島へ出発しようというと,猿が「そんな危ない事業はもうやりたくない」と言い出しました。桃太郎が,「話と違うじゃないか」と抗議したところ,犬とキジも猿に同調し,「そうだそうだ。そんなあぶないことができるか!」と言い出しました。

 結局,臨時株主総会が開催され,株式の過半数を持っていた犬・猿・キジの提案により,桃太郎は代表取締役を解任され,㈱ももたろうをおいだされてしまいましたとさ。

 教訓:株式は会社経営の生命線!絶対に過半数(できれば67%以上)を確保せよ!

                                 以上