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どうかわたしを映画館デートに連れて行かないでください

映画が好き。暇さえあれば映画を見るし、映画に救われてきた。
でも映画館は苦手。
映画を見たいのに、映画館に行きたいのに、映画館が怖い。

 「映画」という、ふたりの共通点があっても、
どうか、映画館デートには連れて行かないでください。

そんな、映画が好きなのに映画館が苦手な私、田中美咲と
同じく映画が好きなのに映画館が苦手な僕、山中康司が
「見えない障害」について話します。

私たちの、「映画好きなのに映画館が苦手」

私たちはずっと友達だったけれど、最近初めて見つけた共通点があります。それが、二人とも、「映画が好きなのに映画館が苦手」ということ。それぞれの「映画館が苦手」がどんな背景からそう感じるのか、一緒に話しました。 

康司:簡単に言うと閉所恐怖症というか、逃げ場がないところが苦手なんだよね。20代前半の時にパニック障害になって、逃げ場のないところに行くと不安になる(広場恐怖というらしい)。例えば、飛行機や電車に乗ると、汗が止まらなくなったり、すごく不安になるんだよね。今は付き合っていけるようになってきたけれど、一度不安になるとネガティブにどんどん陥って、「やばい」ともっと不安になってしまうようなかんじ。映画館もその「逃げ場のない場所」として苦手なんだよね。 

美咲:私も似てる。私は、コロナ禍でストレスやプレッシャーも重なって、双極性障害とパニック障害になってしまって。どちらかというと場所に対する恐怖というよりも「心因性頻尿」といって、実際にトイレに行きたいわけではないのに不安で頻尿になっている”感覚”になって、何度もトイレに行かないと不安が続いてしまうという症状がでるようになったの。だから長距離移動が全部だめになって。映画館に入ることはできるけれど、何度もトイレに行かないといけないから、映画に集中できないし、悲しいんだよね。 

恐怖の映画デート

康司:実は、すごく見たかったSTERWARSの最新作を見ることになったんだけど、そんなタイミングで「逃げ場がないと感じる不安」に陥ってしまって。どうしようもなくて、逃げることができなくて、どうにか眠ることで気にしないようにできないかとトライしたんだ。その時はちゃんと眠りにつくことができてことなきを得たけれど、映画は見れないし、辛かったんだよね。

美咲:わたしは、良かれと思って映画が見やすい席を事前予約してもらったことがあって。相手にとってその席とは、映画館のど真ん中だったんだけど、私にとっては他の人の前を通らないと抜け出せないし、何度も出入りできない場所だし、不安でいっぱいでずっと苦しくて、全然映画に集中できなかったことがある。
 
二人とも、その映画が見たいという思いはあって、映画館も映画に集中できるし楽しい場所だとわかっているけれど、その体調や状況によって楽しさが不安に変わっていった経験をもつ。

「大丈夫だよ」は、大丈夫じゃないの

美咲:私はもうどんな場所でも出入り口に近くて、すぐに逃げることができる場所にいるようにしてるよ。

康司:僕も実は中学の頃に「心因性頻尿」になったんだけど、あれってフィジカルな尿意ではなくて「不安」によるものであることが多いから、周りの人から見ると「あれ、さっきトイレ行ったんだから大丈夫だよ」と感じるかもしれなけれど、こっちからすると「そういうことじゃない」ってなるんだよね。 

美咲:うんうん、それでいうと、私は映画館だけじゃなくて、トークセッションなど登壇をするときも、クライアントとのミーティングのときとかもそうなるから、工夫しないと生きていけないんだよね…。 

自分だけの魔法で解決してる

康司:不安になっている時って、自分自身に集中しているから負のループから抜け出せないんだけど、できるだけ「自分を俯瞰する」ようにすると少し不安がおさまるんだよね。 

美咲:私は、自分自身にいろんなパターンの未来予想をして、どれもリスクないよねっておもうようにしてる。

康司:たしかに…リスクなんてないはずなんだけど、リスクがあると感じちゃったりするんだよね。実は周りの人はそんな気にしていないのに、なぜかすごく見られている感じがする。 

目に見えない障害、気づかれにくい障害

目に見える障害とちがって「見えない障害」は、当事者が発言したり、表現しないと気づかれにくい。困っていることも気づかれないことで助けられないこともしばしば。 

美咲:目に見えない障害・症状をもつことから、なにか困ることってどんなことがあった? 

康司:行動は制限されるよね。映画館も、舞台も、飛行機の離陸して安定するまでの間に動けない時とか怖い。それが嫌でそれを選択しないようになるから、行動範囲がどんどん狭まっていく。 

美咲:あー私は、長距離の高速道路はもうのれないし、遊園地とかももういけなくなってしまった。本当は行きたいのに、不安でたまらない。だいたいこういうのって、デートで行く場所だったりするから、楽しめなくなってしまう。

康司:かっこつけたいときにかっこつけれないということがあると、たしかに悲しいよねー。 

見えない障害のパートナーシップと働き方

美咲:私は、友人やパートナーには過度なケアはしないでほしいし、むしろ「ケア」になってしまうと、助ける人助けられる人という関係性になってしまって、どこか「対等」ではない感じがしてしまうの。あくまで対等に、その状況を「一緒に楽しむにはどうしたらいいか」と一緒に楽しんでほしい。 

康司:聞いてケアするのと、一緒に考えるのって、似ているけれど別だよね。「この映画見たいと思っているけれど、映画館不安だよね、どうしたら気持ちよく見れるかな?」といった、1人の問いを2人で解決するのではなく、2人の問いを2人で解決するほうがいいよね。 

美咲:これは友達でも、パートナーや顧客やクライアントでもそう。そして私たちのようなパニック障害だけでなく、だれかにとってはたいしたことなくても、誰かにとって大ごとのことってたくさんあるから、そう捉えて行動していきたいよね。 

映画デートに行きたいです(まとめ)

私たち二人とも、パニック障害さんと心因性頻尿さんと共に暮らしている。
本当は映画デート、遊園地デート、演劇にもいきたい。でもそれがすごく不安で。でも自分の「見えない障害」を伝えることで「ケアする対象」として見られたいわけではない。 

障害に限らず、勝手に決めつけてしまうのではなく、それぞれ全く異なる存在であり、異なる価値観や体調や特性をもつのだという前提にたって、まずは聞くこと。そして一緒に楽しめるために模索することがこれかたとても大切なのではと思いました。

自分の中にいろんな見える世界に対する「目」を持つことが大切なのではないでしょうか。


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