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地域ブログと運営者のひとつの例

夫婦で「地域ブログ」というものを運営している。
http://www.misatopi.com/
『どこどこで○○ってイベントがあるよ』だとか、『○○に○○ってお店ができたよ』だとか、ローカルなニュースをローカルに向けて発信するブログだ。
気づけば、スタートして8年目を迎えている。

「地元愛に満ちている」
なんて声をいただくことも多いのだけれど、そんな声には若干の後ろめたさを感じている。

そもそものスタートは
『地元での発見・再発見を、同じ地域で暮らす人達と共有したい』
というものだったのだけれど、実はもうひとつある。

一緒に運営している妻みさ子は北海道石狩市出身。
吉祥寺や下北沢など東京西部でのシャレオツな人生を夢見ていたらしい。
(そもそも一箇所に居着くつもりすらないタイプでもある)

シイノキ一族が市内に土地を持っていて、そこそこのコストで自分たちの考えた家を建てて暮らすことが出来るという条件で渋々埼玉県の端っこに家を建てて暮らす道を選んでもらった。
シャレオツライフへの熱の多寡はさておき、ある意味夢を諦めることになったわけでもある。
地域ブログスタートの提案は、妻みさ子が自分が暮らすことになった土地を好きになるキッカケのひとつになれば良いなという罪滅ぼしでもあった。

「奥さんのコトを思ってなんて素敵!」
なんて感想を抱いてしまった人には、キッカケだけ与えて結果は担保しない無責任な罪悪感の解消の仕方だという事実だけは知っておいてもらいたい。
「あとは知らねぇぜ!へへ!!」
だ。
スタート以降、友人や立ち位置などを得て楽しそうにはしてるのである程度成功したんだろう。

そしてシイノキだ。
地元は嫌いではない。大阪で暮らしていた頃、「地元に戻りてぇな」って思っていたくらいには好きだ。
ただ、もしも自分にありあまる富があれば
・帯広あたりに家を建てて夏から秋は北海道暮らし
・宮古島あたりに家を建てて冬〜初夏は沖縄暮らし
・年に数回は海外で数週間の旅
・帰りたい時だけ地元に帰る
という暮らしを選ぶ。

地元とはなんだ

では、自分にとって地元とはなんなのかを考えてみた。

地元にはシイノキ少年が隠れている

行政上の区分である「地域名」に愛情は一切ない。
川の向こうの隣町も地元だ。
けむり玉を放り込んだサランラップの筒を結びつけた自転車で「バイクだぜ!」つって走り回ったりもした。
ヤンキーにカツアゲもされた。

もはや呪いに近い

地元の景色の中に幼少期の自分を見ている。

  • 爺ちゃんの車に乗せられ蓮の実を取りに行った道。

  • 年に1度あるかないかだった父親との寂れた喫茶店ランチ。

  • 名も知らない謎の魚を捕った田んぼ。

  • 幼馴染が落ちて大騒ぎになった川。

  • 花火大会の翌朝、落ちている小銭をあさった河川敷。

  • 女の子にチョコレートを貰った通学路(確かもらった。ハズ。)

  • 秘密基地のあった空き地。

  • みんなで隠れてタバコを吸った神社。

  • 親に捨てられた公園。

他人のことはわからないけれど。
シイノキにとって、30代40代は少年時代の自分との対話だった。
シイノキ少年は寡黙でシャイな人間だったが、反面、怒りと不満に満ち満ちていた(厨二だった)。
学校から乗って帰ってきた自転車を意味もなくコンクリの壁に投げつけて、それを目撃した父からぶん殴られるような少年だったのだ。
非常に性格のややこしい少年だ。

  • こんな仕事をしているよ

  • こんな人と仲良くしているよ

  • ここでこんな活動をしているよ

  • 子どもがふたりいて、こんな子でこの学校に通っているよ

  • お前の憧れていたハーレーに乗ってるよ

シイノキは少年シイノキと和解したいのだ。
「お前の怒りの根源はコレだった。だからコレをこうすることでそれはおさめられた。」
「お前の憤りはコレをすることで分散できる。」
「お前の抱えていた不安は今も変わらないけれど、今も解決に向けて思考はやめていない」

地元にはあちこちに少年シイノキが潜んでいる。
オッサンになったシイノキを物陰から冷たい目で蔑んでいる。
ここで、彼と仲良く暮らしていきたい。

地元とは半径10メートルの世界

インフルエンサーの先駆け、はぁちゅうさんが「半径5メートルの野望」という著書を出版している。
彼女のことはよく知らないし、活字が苦手で本も読んでいないので内容も知らないけれど、タイトルから受ける印象にはとても共感している。

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世界には不秩序と理不尽が溢れていて、手がつけられない。
ただ、目に見える範囲内くらいであればどうにか出来るかもしれない。
世界のゴミ、日本のゴミはどうしようもないけれど、目に見える半径10メートル以内のゴミなら撤去可能だ。
隣の人の抱える問題も、自分ができる範囲内であれば解決の力になれるかもしれない。

市のことは正直どうでもいいし、どうにもならない。
偉いおじさん達が、その偉さを発揮してどうにかすればいい。

地元とは瞬間瞬間の半径10メートルの世界だ。
よく行くお店の気のいいシェフ、良くしてくれる人が運営するイベント、子どもたちが築いた社会、お世話になってる人が運営する活動。
足元の土に思い入れはないけれど、シイノキにとってはそれらが『地元』で守れるものなら守りたい。

地域ブログの活動と副産物

地域ブログの活動は、妻みさ子の夢への贖罪と、シイノキ少年へのプレゼンテーション。

「みさとぴを見て引越を決意しました」
「みさとぴを知ってから地域で過ごす時間が増えました」
「みさとぴ経由でこんな人達と繋がれました」
こんな声が届くと、それはそれは光栄でもあり、驚きでもあり後ろめたくもあり。
この活動で半径10メートルの世界が良くなるのであれば、それは幸せな副産物。

みさとぴがきっかけで誰かの半径10メートルが素敵なものになるきっかけになれたら、それほど嬉しいことはない。
みさとぴがきっかけでとんでもない目にあったら、それは誠に申し訳ない。ごめんなさい。
実は、この活動は地元愛というよりも自己愛だ。
「地元愛に満ちていますね」
なんて言われると、実はパンツをはいていない変態なのに真面目さ誠実さ清潔さを称賛されるような後ろめたさで胸がいっぱいになる。

真面目さを称賛されたことはないし、一応パンツははいているけれど。
あまり変に持ち上げられるのは避けたい。

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