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何もできない大人の初めての伊勢神宮一人旅 (一つの記事にまとめました版)

人生に行き詰まった。何をどうしたらいいかわからなくなった。メンタルも不調で頭も全然まわってない。そんな中で急に思い立った。

「伊勢神宮に行こう」

前々から行ってみたいとは思っていたが、結局行かずじまいのまま。新幹線に1人で乗ったこともないし、チケットの買い方もわからない。そういう類のことが何も出来ない。ゆえにびくびくして出来なかったのも原因のひとつだったが、そんな不安やどうしようすら吹っ飛ばし、半ば取り憑かれたかのように出かける準備をした。

このままぐだぐだしてるより、行っちゃったほうが良い気がする。何時間か経って、行ってたらなぁとか思うより、頭がまわってなかろうがもう行っちゃった方がいい。今日行かなかったら行かないかもしれない。行こう!
 
伊勢神宮に向かう以外何も考えられなくなった私はさっさと準備を済まして家を後にした。新幹線のチケットも買ってないし、ホテルの予約もしていない。全部道中でやればいい。

何もわからない私の一泊二日の伊勢神宮の旅はこうして始まったのだった。

 
無我夢中で家を出て、駅に着いた私は初めてのミッションに取り掛かった。
そう、新幹線のチケットを買うのである。

YouTube見て予習したし、以前駅で少し券売機に触れていたのでなんとなくの使い方は理解していた。

新幹線で向かうは名古屋、そこから伊勢市だが、ひとまず名古屋まで買って名古屋からは丁度いい時間の電車を調べて乗ることにした。
初めてだからこんがらがらないように無茶はしないスタイルである。

東海道・山陽/九州
東北・山形・秋田・北海道
上越・北陸
西九州
 

どれだ…
 

このレベルである。さっそくわからないことに直面してしまった。 

事前に見ていた乗り換え案内を確認するも、のぞみとしか書いてない。
nozomi…
のぞみだけじゃわからない。ちくしょう、常識だって言うのか…

ない知恵を振り絞るも確定に至る知識は出てこず、頭の中では多分クリスマスの時期に山下達郎のクリスマスイブと共に見たのであろう新幹線が走ってゆく映像が流れていた。

東海道な気がする。気がするんだが…

一旦、確認で上越・北陸を押してみる。

…違う…!

やっぱり東海道・山陽/九州だった。

とりあえずクリア出来たことに安堵し、購入手続きを進めていく。指定席の発想はなかったので自由席で購入した。

お金を入れてあとはチケットを手に入れるだけである。

ふふふ、予習したから乗車券と特急券の二枚が出てくることは知っているぞ。こういうことでも知らなかったらどきどきしてしまう。

チケットが発券された。

え、一枚?

なんでかわからんが一枚しか出てこなかった。嘘だろ…二枚じゃない…だと…

とはいえ初心者の私が間違えてることはあっても、券売機が間違えることはないだろうと券売機を信じて深く考えず、何故かはわからないが一枚しかないチケットを手にし、そのまま改札に通した。

電車に乗り込み、一段落したので目星をつけていたホテルを予約することにした。普段は口コミとかしっかり見るところだが、そんなに悪くもなさそうだしとにかく予約がとれるところで交通の便が悪くなさそうなところにしようと深く考えず勢いで予約をとった。

そしてこれが後に仇となるのである。

無事にホテルの予約もとれ、新幹線の駅に到着した。見つけた新幹線の改札をくぐり抜けてホームに向かう。

自由席は1-3号車なので、1-3号車の方へ向かった。こういう風に◯◯席は◯号車ということですら、今まであまり意識していなかったのでもはや初めて知った気持ちである。
端っこの方が空いていると聞いたことがあったので、端っこの方へ並ぶことにした。乗車時刻になり、新幹線に乗り込んだ。どこの席を選べばいいのか全くわからないのでなんとなく適当に座った。

一人で新幹線に乗ってる…

数時間前までは思いもよらなかった現実が今ここにあった。

発車時刻を迎え、私を乗せた新幹線は名古屋へ向かって走りだした。

窓の外を見ると、見慣れた景色がどんどんと後ろへ流されていく。

いよいよ旅が始まった気がした。

道中何をしようと一応持ってきた本をパラパラとめくるも、外の景色が気になって結局ほとんど読まずにかばんにしまった。

良し悪しがわからず適当に選んだ席の後ろのおじさんはバリボリ音をたててお菓子?を食べ、がっつりお酒を飲んでいるタイプだった。音は気になるが仕方ない。私はどうにもこういうヒキがある。

気を取り直して窓の外に目を向ける。

富士山見えるかな…

車窓といえば富士山である。どのタイミングで現れるかわからない富士山を一生懸命探した。

しばらくすると車掌さんの声が聞こえてきた。どうやらチケットの点検のようだ。これも初めての経験である。自分のところに来るまで少しそわそわした。

車掌さんが来たのでポケットからチケットを取り出して渡した。手元に返ってきたハンコが押されたチケットを記念に写真に収めた。

後ろでバリボリ音を立ててたおじさんは、あらかた食べ終わったのかいつのまにか静かになっていた。

結局富士山は見えないまま、新幹線は名古屋に到着した。
新幹線を降りたら今度は乗り換えだ。全部全部新しいことなのでとても新鮮である。

ホテルの夕食はないので名古屋でお弁当を買っていくことにした。

カツサンドにするか悩んだが、名物がたくさん入ってるらしいお弁当にした。

お弁当を手にし、いよいよ伊勢市へ向かう。ホームを探して予定通りの電車に乗り込み、途中の乗り換えも難なくこなし、無事に伊勢市に到着した。

着いた時にはすでに薄暗くなっていて、もう少し時間遅れてたら怖かっただろうなと思った。

ホテルの場所をマップで確認したあと途中で飲み物とチョコレートを購入し、へとへとになりながら見えてきたホテルへ向かった。

周囲の薄暗さも相まってか、着いたホテルは写真で見ていたよりもなんとなく薄暗い感じがして申し訳ないがウキウキする気持ちはわいてこなかった。

中に入ってチェックインの手続きをして、自分の部屋に向かった。ホテルは中も薄暗く、なんだか怖い気持ちになったがまあこういうもんだろうなくらいに考えていた。

自分の部屋の鍵を開け、中に入る。部屋の電気をつけると、ゾッとする汚れが目に入った。

嫌だな…と思ったが、一晩過ごす分にはまあ見過ごせなくはない汚れだったので一旦飲み込むことにした。

荷物を置いて部屋の中を見ていた時、

あ、無理。

本当にゾッとした。一ヶ所ならまだしも二ヶ所目を見つけてしまったらもう見過ごせない。この部屋で過ごすの無理だわと瞬時に思い、フロントにお部屋を変えて欲しいと電話をかけた。

しばらくして係の人がきて、違う部屋に変えてくれた。

変えてくれた部屋も正直綺麗とは言い難いがホテル自体がそもそも新しいわけじゃないので仕方ない。窓を開けて換気しようとしたがなかなか窓が開かない。こもってるようなむわっとした空気を一刻も早く入れ替えたい…なかなか開かなかった窓が勢いよく開き、さっきとは違うベクトルにゾッとして肝が冷えた。

お弁当食べて気を取り直そう…とお弁当を開けて食べ始めた。伊勢に来たのに名古屋のお弁当を食べてることに気付いたが味噌カツが美味しかったのでなんら問題はなかった。がんもどきの汁がガッツリとズボンにたれたので悲しくなった。

お弁当を食べていると壁にちらほらと虫がいることに気付いた。

このホテルは虫もいるんか…

部屋は電気が全部つかないから薄暗いし…聞こうにも部屋変えてもらったから聞きづらいし…

なんとも重い気持ちのまま黙々とお弁当を食べ終えた。

初めて伊勢神宮に行くのだからとちゃんと着替えも持ってきていたのだが、お風呂に入るのは諦めた。怖いし。無理だった。入れなかった。

お風呂に入らないで行くなんて神様に失礼になってしまう…ちゃんと身を綺麗にして行きたいという気持ちは山々だったが本当に今回ばっかりは神様も許してくれるんじゃないか…と思って入らない選択をした。それぐらい本当に無理だった。

早く寝よう…

元々朝早く起きて参拝する予定だったので寝る準備をしてベッドに入った。

電気消すのも怖いなと思い、全部消さないで寝ることにして携帯をいじりながら寝る体勢に入った。

どれくらい経ったかわからないが、ウトウトとうっすら眠りに入っていたときだった。

「うあぁぁぁああああ!!」

びっくりして目を開き、心臓がバクバクしているのがわかった。

「うあぁぁぁああああ!!」

女の人の叫び声だった。廊下から聞こえる。ずっと叫んでる。

酔っ払ってるような感じには聞こえず、キャー!とも違う、今までに聞いたことがない異様な叫び声だった。

フロントに電話するべきか?警察?足が少し震えてるのがわかった。

どうしようどうしよう…

考えながら何かあった時にすぐに出られるように少し身支度を整えた。

一瞬の出来事ではなく、怖かったからかもしれないが、叫んでる声は結構長く聞こえていたように感じられた。

どれくらい経っただろう。しばらくして静かになったが怖いままだったので友達に連絡をしたら友達はすぐに返事をくれた。

神社に行きたくなった時は神様に呼ばれてるという説を少し信じていた私はまさかこんな思いをすることになるとは露ほども思ってなかったし、頻繁に旅行してるわけでもないのに初めて旅行してなんでピンポイントでこんな怖い目に遭ってしまうんだと思って鬱々とした気持ちになっていた。

友達に言ったら

いいことが明日まとめてくるかもしれない

と言ってくれた。

色々な話をして、結局一時近くまで付き合ってくれた。本当に怖くて心細かったのですごくすごく助けられた。
外も静かになったし眠ることにした。

予定では早く起きて参拝するつもりだったが起きられるだろうか…

寝ようと思ってから記憶がなく、気を失うようにいつのまにか眠りについていた。

一時に寝たにもかかわらず、五時にかけていた目覚ましですんなりと目は覚めた。

熟睡できてなかったのだろう。頭は痛いし体もだるい。ぼんやりとした頭でこれからどうするか考えながら窓を開けた。
外は曇っているが、朝の空気は清々しい。

昨夜の出来事が嘘だったかのように早朝のホテルは静まり返っていた。

ぼんやりとしながらも気持ちは固まっていた。

一刻も早くこのホテルから出たい…!

歯を磨いて身支度をして、糖分をとろうと昨日買ったチョコレートを食べた。買っておいて正解だったなと思った。

忘れ物はないか念入りに確認し、周囲を気にして怯えながら部屋を出た。

さらばホテル。二度と来る事はない。

フロントに人がいたので鍵を渡してチェックアウトした。

外はスッキリとしない空模様だったが、ホテルから出た瞬間、すべての恐怖から解き放たれて憑き物がとれたかのようにスッとした。

たった一夜の出来事だったが、すごく長い時間だったような気がした。今回の出来事は今後の宿選びの際の教訓にしようと心に誓った。

ホテルを出たら、もう怖いことはなにもない!

朝の空気を吸い込みながら、早朝参拝へ向かった。まずは外宮からだ。

念願の伊勢神宮に到着し、手水舎で身を清めて歩き始める。

よくある紙のマップを貰おうと思っていたが見つけられず、丸腰で訪れていた私は伊勢神宮のホームページのマップを頼りに歩いてまわった。

早朝ということもあって人が少なかったので、ゆったりと巡ることができた。

正宮にお参りしたあとは多賀宮でお願いごとをした。

伊勢神宮内には立派な木がたくさんあり、度々足をとめて眺めた。

一通り巡ったので今度は内宮へ向かう。事前に調べていなかったにもかかわらず、バスの時間がちょうど良くって良い感じである。

バス停でバスを待つ。自分以外居ないので不安である。

来ない…遅れてるのかな…でも時間合ってるし、大丈夫大丈夫。

私の後ろにもう一人バスに乗る人がやってきた。

バスが来ない…

これもし私が間違えててこの人に乗れると思わせちゃってたらどうしよう…でもこの人もきっと自分で時間確認してるだろうし…乗れるから居るんだろうし…大丈夫なはず…

不安になって話しかけようか悩んだが、大丈夫だ自分を信じようと思ってバスを待った。

少し遅れてバスはやってきた。

良かった、合ってた。安心した。

名古屋で電車に乗る時も不安になったんだが、こっちでSuicaは使えるのかがいまいち分からない。(きっと常識なのだろうが、名古屋の電車でSuicaは使えた)あとバスだと乗り方も違かったりするし…わからん…

念の為Suicaと現金を両方ポケットに忍ばせておいたが、バスはSuicaで乗る事が出来た。
真ん中から乗り込んでSuicaをピッとして、降りる時は前で運転手さんの横でピッとして降りるスタイルだった。

バスの中には私のように観光に訪れている人や、普段からこの路線を使っているのであろう学生さんが座っていた。

外宮から内宮まではバスで30分くらい。

ずっと外を眺めていると、途中でもう一ヶ所行こうと決めていた猿田彦神社が見えた。

ずっと訪れたかった道ひらきの神様。ふむふむ、あそこにあるのか。

そんなことを考えているうちに、バスは内宮に到着した。

なんとなく人が流れている方向に向かって自分も歩き出すと、内宮入口の、映像で見たことのある橋にたどり着いた。

周囲を見回しながら橋を渡り、手水舎でまた身を清めて正宮へ向かう。

途中で五十鈴川に立ち寄った。五十鈴川の水は澄んでいて、とても綺麗だった。澄んだ川と目の前に広がる沢山の緑に目を奪われた。

正宮にお参りし、荒祭宮でお願いごとをしたあと、風日祈宮に向かった。風日祈宮は伊勢神宮の中でなんとなく一番好きだなあと思った場所だった。

橋で写真を撮っていたら、素敵なマダムに話しかけられた。

「(川の中に建っている木を見て)あれ何だと思う?」

「全然考えてなかった…!なんだろう…」

なんだろう?って視点を全く持たずに見ていた自分に気付き、なんだろう?って興味を持ちながら見ているマダムを素敵だなあと思った。

少し笑って話して別れたあと歩いていると、またマダムが話しかけてくれた。

「流木避けだって」

伊勢神宮の人に訊いたらしい。わざわざ教えてくれたことが嬉しかったのでお礼を言った。

歩いていると、目の前に馬が現れた。写真を撮ろうと試みるも、一向にこっちを向いてくれない。みんながこっち向かないなあと思っていた時、馬に近寄ってきたお姉さんの発言が面白くって、そこにいた皆で笑った。笑っていたら馬がこっちを向いてくれて、また皆で笑った。

順路通りにまた歩きだし、最初に渡った橋をまた渡り、鳥居で一礼して元の世界へ戻った。

参拝できたことも嬉しかったが、なによりマダムが話しかけてくれたことや、その場にいた人たちと笑いあえたことがとても嬉しかった。

一期一会だなあ。こういう触れ合いも旅の醍醐味だよなあ。タイミングだし、ご縁だなあと考えながら、ホテルが怖くなかったら私は早くホテルを出てなかったし、時間がずれていたら、このタイミングじゃなかったら、この出会いはなかったんだと気付いた。

ホテルありがとう!の心境に達するには恐怖体験すぎたので厳しいものがあるが、それでも素敵な出会いがあったことに関しては心から良かったなあと思ったのだった。

内宮を出たあとさてどう進もうかとぼんやり考えながら歩いていると、目に入ったのがおはらい町だった。

マップを持たぬ私の進む方向は、本当に行き当たりばったりである。

今更だが、なぜ逐一携帯で調べないのかと言うとすぐに充電が減ってしまうので本当の本当に必要最低限しか使わないようにしていたからだ。

おはらい町の存在をちゃんと認識したのもこの時が初めてだった。通りの雰囲気に惹かれて通ってみることにした。

入ってすぐ右手に赤福のお店を発見する。

そういえば友達が伊勢神宮では作りたての赤福が食べられると教えてくれたがそのお店だろうか。(後で調べたら、本店はもう少し先にあったみたいだ)

朝ごはんを食べていないのでこれもまた友達に教えてもらった伊勢うどんを食べてみようかと思い、歩きながらお店を見てみるが、時間が早かったためにどこもかしこも準備中なことに気が付いた。

しばらく歩いてみるが、やっぱりどこも開いてなさそうだ。しばらく待っていれば入れるけれど、待つのもなあと思って諦めて足を進め、結局そのままおはらい町を後にした。

マップを確認するといつの間にか結構歩いていたことに気付き、歩いて行けそうだったのでそのまま猿田彦神社に向かった。

入口がどこか少し迷うも、看板通り進むとすぐに見つけられた。ここでもまた手水舎で身を清める。

念願の猿田彦神社を参拝し、続いて佐瑠女神社に参拝した。

佐瑠女神社には有名芸能人の方々ののぼり旗がたくさんあり、ご利益を目の当たりにして凄いなあと思った。

絶対お守りをいただこうと決めていたのでお守りを見に行くも、どれにするかすごく悩んでしまった。結局猿田彦神社のお守りと佐瑠女神社のお守りを一体ずつ授かった。

無事に旅の目的を全部果たせたので、帰路につくことにした。

バス停が見えてくると同時に、見覚えのあるお洋服の人が立っていることに気付いた。

マダムである。

マダムも私に気付いてくれて、にこにこしながら迎えてくれた。

「バスもうすぐ来るよー。駅まで?」

「そうですー!」

まさかまた会えるとは思っていなかったので、本当にご縁があったんだなあと思った。
バスが来るまで、マダムは旅の話を聞かせてくれた。伊勢志摩にある新しく出来た展望台に行ってきたんだけどすごく良かったよー!と、景色の写真も見せてくれた。いつか絶対行こうと思った。

マダムはとても元気で、ポジティブなパワーがあって、すごく素敵なひとだった。

少し話しているとバスがきて、「先に乗りなさい」と言って乗せてくれた。

しばらく乗っていると駅に到着した。マダムも降りるのかと思っていたら別の駅だったらしく、挨拶をして先に降りた。

勝手に同じ所で降りると思っていたのでなんだかご縁を自ら切ってしまった…とかなしい気持ちになった。

それと同時に、あのバスあのまま乗ってたらどこ行ったんだろうと思った。

降りる人私ともう1組だけだったし…

マップ調べた通りだから、この行き方なんだろう。と納得し、駅に向かった。

最後の最後に自らの失態により大パニックに陥るとはこの時の私は夢にも思っていなかった。

駅に着くと電車はすでに停まっていた。よし時間ぴったりだ。しかし電車の中の座席を見て疑問が浮かび上がる。

あれこれ乗って大丈夫なやつだよな…?

電車の中は人が全然乗っておらず、椅子が普通の電車よりふかふかしている。

もう一度調べると電車はこれで間違ってない。時間ギリギリだった為存分に考えさせてもらうこともできず、発車ベルもなってしまったので電車に飛び乗った。

乗り込んでから車両と車両の間の所で改めて自分が乗っている電車のことを調べる。

•特急列車は乗車券とは別に特急券が必要

•事前に特急券を買わずにSuicaのみで特急に乗ることはできない

え。

一気に脳内が大パニックである。

一刻も早くお金を払いたい。神様にお参りしたあとにキセル状態はやばすぎる。

車掌さんを探すべく、車両から車両へと足早に移動する。

どの車両も空いていてこの世界に一人だけのような感覚に陥り、パニックと不安な心が更に煽られる。

どんどん移動するも、なかなか車掌さんが見つからない。一刻も早くこの罪悪感から解放されたい一心で、疲れていたのにすごい早足になっていた。

車掌さんいた…!!

「すみません!Suicaで乗っちゃったんですけどどうしたらいいですか!!」

どこから乗ってどこまで行くのか聞かれ、特急券分の料金を支払った。

良かった…ごめんなさい…

「座席の指定はできないので、誰か来たら移動してください」

「わかりました」

深く息を吐いて席についた。

お金払えた…良かった…

ちゃんとした知識がないと、自分だけじゃなく他の人にも迷惑がかかってしまうということを学んだ。そして特急とか急行とかの違いをちゃんと覚えようと思った。

ようやく座れたものの、特急の料金を支払っただけで席の指定はできていないので、私が座っている席を指定しているひとが来たらどかなければならない。

まず指定席なのに相手に余計なコミュニケーションをとらせてしまうのが申し訳ないし指定席なのに座ってるってなんか怪しいしかと言って一から説明するのもまた怪しいし…色んな考えがぐるぐる巡り、小心者の私はびくびくしていた。

まあ席たくさん空いてるし…

しかしそのたくさん席が空いてる中でミラクルを起こしてしまうのが私である。

電車が停まり、人が乗ってきて、通路を挟んで並びの席に座った人が不思議そうに席の番号を呟いている。

……私が座ってる席…!!

めちゃくちゃ謝った。。良い人だった。。本当にすみませんでした…

違う席に移動したものの、もはやまた同じことが起きたらどうしようと気が気じゃなかった。通りかかった車掌さんにこの席は指定されてるか訊いてみたが、購入されることもあるからわからないと言われたので耐えるしかなかった。

本来ならふかふかの椅子で居心地の良い電車のはずなのに、ほとんどの時間を緊張状態で過ごし、旅の余韻に浸る余裕もなかった私を乗せた特急はその後無事に名古屋に到着したのだった。

大パニックな数時間を乗り越えて、無事に名古屋に到着した。Suicaで出ていいのか?とどきどきするも、駄目だったら音が鳴るだろうと突撃したらそのまま出られた。

新幹線の乗り場を探して歩いていると、お土産屋さんを見つけた。

お土産買おう。

そして気付く。ほとんど名古屋のお土産だということに。そりゃそうだ。ここは名古屋なんだから。

三重のお土産ないかなあ…と見ていると、赤福があるのを発見した。昨晩お世話になった友達に赤福好きか確認したところ、好きだったので買っていくことにした。

他にもいくつかお土産を購入し、新幹線の乗り場へ向かった。

さて、帰りのチケットの購入だ。

行きに一枚しかチケットが出てこないことはわかったので、今度は驚かないぞと思いながらお金を入れる。

 
二枚出てきた…

 
だめだ新幹線初心者の私には仕組みが良くわからない…改札にいた駅員さんにこれ一緒に入れて大丈夫ですか?と訊き、大丈夫とのことだったので二枚同時に改札に通した。

その後、無事に新幹線に乗り込み、名古屋を出発した。疲れがドッときたのか、新幹線の中ではほぼ爆睡していた。

いつもは自然が多いところから帰ってくると、帰ってきたー!という気持ちになる反面、ゴミゴミしていていやだなあ…と思うのだが、この日はたぶん初めて、ゴミゴミしていることになんだか安心感を覚えた。

何も食べてないし何か食べて帰ろうと、最寄りの定食屋さんでごはんを食べた。美味しくてモリモリ食べた。

年配のお友達同士っぽいおじさまとおばさまが楽しそうに話しているのが聞こえてきて、ほっこりとした気持ちになった。なんとなく、人を愛しく思えるようになった自分がいるなあと思った。

定食屋さんを出るときに、明るい声で美味しかったですー!と言えた。またお待ちしてます!と言ってくれた。また来ようと思った。

寄り道することなく、重い荷物とお土産を持って真っ直ぐ家に向かった。

こうして私の、何もできないおとなの初めての伊勢神宮一人旅は、無事に幕を下ろしたのだった。

あとがき

ずっと行ってみたいと思いつつ、なかなか踏み出せていなかった「一人旅」は本当に予期せぬ形で本当に突然心のハードルを乗り越えて始まった。
何で今まで行かなかったんだろう?って思うくらい、すべての不安をふっ飛ばし、まるで不安なんてなかったかのように。
一歩踏み出した先は新しいことの連続で、怖いことやパニックになることもあったけれど、どれもよい経験になったし、勉強になった。
ずっと行きたかった伊勢神宮と猿田彦神社に行けて本当に良かったし、素敵な人たちとの出会いは人と触れ合うことの素晴らしさを改めて教えてくれた。マダムが教えてくれた伊勢志摩の展望台、いつか絶対行ってみたいと思う。

行く前と後で状況は変わったかというと変わっていないし、参拝したからって急に生まれ変わることはない。
けれど、一人旅の後に起きた出来事は全部一人旅に行かなかったら辿りつかなかったことだし、参拝に行ってからの流れで起きたことだから、行く前よりも道がひらけてるなって。ご利益があったなあと思っている。

反省点はたくさんあるが、それを上回るくらい一人旅に行ったことは自分にとって良い経験になった。本当に行って良かった。一人旅はもういいや…ではなく、すぐにでもまた行きたい!と思ってるのが、大成功の証だろう。

初めての一人旅。色々あったけれど、結果良い旅をすることが出来たと思う。

次はどこに行こうかなあ。

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