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ビジュツノゲンバ -梅津庸一個展「遅すぎた青春、版画物語(転写、自己模倣、変奏曲)」、版画工房カワラボ!編 その1

梅津庸一さんが作品集『ポリネーター』の刊行を記念した展示を「銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM」で開催しています。作品集に収録されてない新作どころかこれまで作ったことの無い版画表現の作品を展示する今回、何があったんでしょうか。


https://twitter.com/parplume/status/1627979543276568576


「上田勇児・梅津庸二人展 一フェアトレード  現代アート産業と製陶業をめぐって(KANDA & OLIVEIRA)」が終わって間もない2月の下旬頃より梅津さんが版画制作の模様をツイートしていたのですが、その制作現場が、Kawalabo! Kawara Printmaking Laboratory!、通称版画工房カワラボ!でした。十数年前に梅津さんは一度訪れた程度で、ここ最近はパープルームメンバーのシエニーチュアンさんが制作に通っているという版画工房です。

そして、3月の上旬、カワラボ!の代表である河原正弘さんと対談収録するので撮影に来てほしいと梅津さんから打診を受け、初めてその制作現場へうかがいました。今思えば制作が佳境でそのぶん技法を自分のものにしていた頃だったのではないかなと思います。


版画工房カワラボ!

状況がわからないまま町田に向かい、町田市立国際版画美術館が近い場所にある工房へ着くと、梅津さんが制作に追われていて、大きな銅版へエッチングを施しながらいきなりいろいろと解説を始めたので、手伝いに来てくれていたあんどーさんととりあえずカメラをまわし始めました。


大きな銅版へエッチングをする梅津さん



入口から入るとすぐに銅版の制作スタジオがあります。
奥にインクを塗る台などがあります。

手前に銅版を刷るプレス機があります。


銅版制作のスタジオの奥にはリトグラフの制作スタジオがあります。
リトグラフを刷る大きな機械が見えますね。



アクアチント

複数の作品制作が同時進行で行われていて、エッチングをしていたかと思うと、別の作品のシュガーアクアチントという技法を使った表現に挑んでいました。

カワラボ!は地形の高低差を利用した多層構造の建物で1Fから下層へ降りると、銅版を腐食させたり洗ったりする機材が置かれている場所があります。
そこでは加筆したり水でシュガーを落としたりしていました。


外から併設されているアクアチントをする部屋に移動して、松ヤニを振って下から銅版を熱し定着させる作業をしています。

熱したあとの銅版。
熱してるところは動画に収めているので展示会場の制作風景動画でご覧ください。



エッチング

過去の自分の作品を参照しつつそれを模倣しエッチングをしています。


そして地下の腐食液へつけに行きます。
10~15分と時間を決めているのですがだいたいそのまま忘れてしまい長い時間浸していることが多かったですね。
銅版はこのような作業を繰り返すので梅津さん、河原さんは何度も作業場を往復していました。



写真製版

別の箇所では銅版に写真製版する作業が進行していました。過去に制作された陶の記録写真が選ばれているようです。


版を硬化させるため紫外線照射中。
通常はカーテンを閉めていますが、撮影のため特別に開放してもらいました。直接見ると危険です。

溶剤で除去しています。


この日は他に大型機械を使ってリトグラフを刷っていたり、10~20分くらい梅津さんと河原さんが対談しています。動画中心で撮影していたので記録写真がないためそちらは動画で確認してください。展示で流れている制作記録の様子を映した動画に一部収録されています。もしかしたら後日パープルームTVなどで流れるかもしれません。

他にも手彩色を施している制作現場も見せてもらっていますが、これは次の記事で書くことにします。


いったん作業を終え、町田駅前に遅い食事をとりに行きました。



対談だけ収録するはずで訪問したにも関わらず流れで制作現場の記録となったこの日の撮影はここで終了しましたが、梅津さんは工房へ戻りまた制作をしていたようです。改めて記事にしてみると大変な作業量ですね。しかしこの圧倒的な作業密度の濃さは書ききれてないように思います。

そして後日またカワラボ!へ撮影に訪問することになったのでした。

続く




撮影をするあんどーさん。
撮影だけでなく、制作手伝いから動画編集までサポートしてました。





ビジュツノゲンバ その1

ビジュツノゲンバ その2

ビジュツノゲンバ その3

ビジュツノゲンバ その4

ビジュツノゲンバ その5

ビジュツノゲンバ その6




​梅津庸一作品集『ポリネーター』刊行記念展
「遅すぎた青春、版画物語(転写、自己模倣、変奏曲)」


会期 :2023年4月1日(土)〜4月19日(水)※終了⽇は変更になる場合があります。
時間 :11:00~20:00
会場 銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUM(イベントスペース)
主催 :銀座 蔦屋書店
協力 艸居、Kawara Printmaking Laboratory Inc.、安藤祐美、みそにこみおでん、シエニーチュアン、阿部宏史、美術出版社
お問い合わせ :03-3575-7755(営業時間内) / info.ginza@ccc.co.jp
https://store.tsite.jp/ginza/event/art/32671-1314100327.html


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