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5-5. 格子線という救い 【ユクスキュル / 大槻香奈考】

大槻さんの作品によく描かれる格子線の意味については、FANBOX記事の『空に線を引く https://www.fanbox.cc/@kanaohtsuki/posts/90049 (※有料コンテンツ)』でも触れられていましたが、今回の読書を経て、ユクスキュルによる視覚エレメントの話とも通じるものがあるように思い、より興味深く作品を鑑賞できるようになりました。

個人的な話になって恐縮ですが、私は「家(実家)」というものがそれほど安心感を以って包み込むものという実感がありません。【自宅】は好きですし、建築物としての「家」は大好きなんですけどね。笑

「家(特に古い家や二世帯以上が住んでいる家)」というもの自体が、そこに住む人たちと密着しすぎていて自他の境界が曖昧であるため、呑み込まれそうな怖さを感じるからかもしれません。

しかし、不思議と大槻さんの描く家からはそういった恐怖を感じたことが無いことに気づきました。それはもしかしたら、格子線が現わすように、鑑賞者との間にフィルターのようなものを挟んでやや客観的に家が描かれているからなのかもしれません。

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「空の集結」
引用元:https://twitter.com/kanaohtsuki/status/818652991800520704

大槻さんの描く家の絵にはあまり生々しさを感じない(と個人的に感じている)から、私はその絵に惹かれるのでしょう。実際の「家」というものは、年月と共に人間のどろどろした澱(おり)を多分に蓄えていってしまうものだと思いますので…(『犬神家の一族』などは好例かと。笑)

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