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河野あさみ(あおいうに)さんの作家考を書かせて頂きました【前編】

こんにちは、ナツメミオです。先日、画家である河野あさみさん(あおいうにさん)の作家考を書かせて頂きました。

河野さんは色使い・発色と余白美に満ちた抽象画を得意とされています。詳しくはInstagramをご覧下さい。

文章はすでに河野さんのnoteで公開されておりますが、より多くの方に彼女の魅力をお伝えしたく思い、私のnoteでも全文を公開致します。

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画家 河野あさみ/あおいうに考

具象に抽象、そしてサブカルやアングラと、多岐に渡って作品制作を行う画家・河野あさみ/あおいうに。

藝大時代から様々な媒体を通して批評されている(自ら講評を望む)彼女にとって、美術史の文脈から見た立ち位置などに絡めた講評・批評はすでに聞き飽きているのではないでしょうか。たしかに、美術の文脈は作品を評価する上で大切な要素になりますが、河野あさみ/あおいうに氏の作品をそれだけで測ってしまうには少々勿体無いのではないかと、私は感じています。

そこで今回は、河野あさみ/あおいうに氏の描く抽象画に焦点を置いて、美術の文脈や技法以外の観点から作品を読み解いてみようと思います。なお、以下画家名は二つの作家名を含める意味で『彼女』で統一致しますことをご了承願います。

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第一に、色彩と光について。

色彩とその発色、そして余白美にこだわった抽象画は、画家河野あさみ氏の眼を共有できるツールと言えるでしょう。
しかし、発色に拘りながらも箱に拘らない発表スタイルは大変興味深いことです。なぜなら色は光であり、環境光によって大きく見え方が変わってくるからです。

ですが彼女は控えめな照明のバーでも、ホワイトキューブでも展示を行います。そして「その場にふさわしい形で」インスタレーションを行います。この行為は第二の創作とも言えるでしょう。すなわち、展示という「儀式」を経て、作品は何度も何度も生まれ変わるのです。作品の再生は加筆だけではないことを思い知らされます。


こうした、場所に合わせたインスタレーションが可能というのは、抽象画ならではではないでしょうか。もしこれが細密な具象画であるなら、暗い照明やお店主体に選ばれたBGMなどがマイナスに働いてしまう可能性が高く、展示場所は限られてくるでしょう。

しかし彼女の抽象画は光源の違い、音の違いをものともしません。むしろ、光が色を生み出しているからこそ、環境光によってくるくると変化する作品の表情を楽しむことができるとも考えることができます。

これを加齢に伴う眼疾患という観点から見てみましょう。人は誰もが老いていきます。医療技術によって治療できる範囲は広がりましたが、老いの現実は常に誰もが持っているのです。特に眼疾患は、初期に現れやすい症状と言えるでしょう。

そんなとき、彼女の作品は文字通り「ひかり」となります。

大切なのはコントラストと色の配置です。いくつかの眼疾患を患った際、赤と黒の隣り合わせ、赤と緑の隣り合わせは見えづらくなることが判明しています。しかし彼女の作品では、意図してか無意識にか、彩度や明度の調整により巧みにその組み合わせが避けられていることが多いのです。(多作な作家さんですから、多少の例外も有るかもしれませんが…)

また、練り上げた絵の具をふんだんに使い、厚みのあるところ、薄く描かれたところとコントラストある画面は、半立体的な作品とも言えます。触れることで、眼の奥で彼女の絵を思い起こすこともできるでしょう。

これらの事実は、鑑賞者(≒観ることのできる人)を多く持てると同時に、長く付き合っていくことのできる作品を作る稀有な作家だと言えるでしょう。


後編へ続く→

文責:ナツメミオ

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