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身体の内側から元気になるごはん

冬将軍のお出まし。みるみる間に店前の道路が雪に覆われる。

仕込みの台所ではスタッフが口々にお天気の悪さと今日の客入りについて思う事を話している。

こんな日にわざわざ店を尋ねてくる人はきっと、絶対にくらをのごはんを食べるぞって決めてきた人だと思うから、いつもよりも更に丁寧におもてなししましょうね!って、孝子さんが言って、頷き合った。

何度かお越しくださったことのあるお客様が開店と同時にご来店。
「東京から友人が来たのでね、ここのごはんを食べさせたくって」

肩の雪を掃い、お席までご案内。

今日は大根とさく(山菜)の煮物が美味しくできた。きのこのお味噌汁も畑から直送の葱を薬味になんともいい香り。

食後には あったかい甘さけ でおなかを納めていただく。

ダルマストーブの上のやかんがシューシューと湯気をだして、お客様が楽しそうに笑ったりお話ししながら、ゆっくりお召し上がりになる姿をガラス越しにみるのは、とても楽しい。

煮物、和え物、お漬け物…。その時期に一番おいしい野菜をなるべくシンプルに、素材の味がよくわかるように調理されている。台所のスタッフはもう何十年も身近な野菜を何通りにも調理して、家族の健康を支えて来た本物のお母さんたち。彼女たちの手からうまれる数々のおかずは「名もなき料理」であり、この地に伝わる食べ方の例でもある。

「ご馳走さま、いつも通り美味しかったよ。ここの味付けは全部が優しくて、何だろうね、田舎に帰っておふくろのごはんを食べているような気持ちでね、ゆっくりさせてもらった。もっとも僕の田舎は福島だし、おふくろはもうとっくに居ないんだけどね。不思議だね。」

調理に麹を使うと少しの調味料でちゃんと味が調う。このことを台所のお母さんたちは体感で知っていて、いつも家族にするように、お客様のごはんも作っているのだ。あなたの身体がいつも元気であるようにと。台所に麹が普通にある、私たちの暮らし方。良く噛んで、ゆっくり召し上がっていただくと、必ず伝わる。

口に入れた瞬間美味しいって感じるもの。のどを通って胃袋に全部納まった頃、あ~美味しかった、何か元気出た。って感じるもの。同じようで少し違う。


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