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リアリティに涙する The measure /Nikki Erlick 感想


The Measure / Nikki Erlick

<あらすじ>
ある日、世界中の22歳以上の人に箱が一つずつ届く。中にはひとすじの紐が入っており、調査の結果その紐は受け取り手の寿命を表していることが分かった。期せずして突然、自らの寿命を知ることになった人々。ある者は宗教にすがり、ある者は希望を失いテロを企み…そして期せずして、アメリカでは大統領選のキャンペーンが始まり、社会は「長寿を約束された人」と「短命を運命づけられた人」を分断し、予期せぬ方向に進んでいく。

Your fate arrives in a box on your doorstep.  
Do you open it ?

突然届いた寿命を示す箱をめぐる、様々な群像劇で構成された本。最初はそれぞれのキャラクターごとにバラバラだったそれぞれのお話が、最後、一つになっていく過程に息を飲みました。

特に、この本の特筆すべきところは「圧倒的なリアリティ」。

最初もっとロマンチックな、お涙頂戴的なお話だと思っていたのですが、アメリカの大統領選の話やこの箱をめぐっての各国の動向(例えば、かの独裁国家では、国民全員に寿命の長さの報告を義務づけたり)、途中「この小説はもしかしてディストピア小説か?」と思ってしまうほど。この設定を思いつき、また面白いと思わせる小説を作り上げた著者の才能に唸りました。

途中思いがけず何度か泣き、自分だったらどうするだろうと考え、胸が苦しくなりました。一体この物語の着地点はどこ?と思って読み進めていましたが、見事に最後、綺麗に着地させた著者の力量には文句なしの喝采です。

人生の価値は長さではないということを、説得力を持って語ってくれた一冊、読む価値ありです。

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