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学校法人札幌大学事件(令和元年9月24日最高裁)

概要


私立大学を設置、運営している被控訴人と特別任用教員として雇用する旨の有期労働契約を締結し、その後6にわたって更新された後に更新を拒絶された控訴人が、同拒絶は労働契約法19条2号に違反すると主張して、被控訴人に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、未払賃金及び遅延損害金の支払を求めたところ、原審が控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴するとともに、当審において、非常勤講師としての未払賃金及び遅延損害金の支払請求を予備的に追加した事案で、本件説明会における理事の発言が本件労働契約が更新されると期待することの合理的な理由となるものではなく、加えて、本件契約書の「雇用期間をその後1年間更新するものとし、その後の雇用契約を保証するものではない。」との条項については、「その後1年間」とは平成28年度の1年間を意味すると解されるから、平成29年度以降の本件労働契約の更新が約束されていないことが明示されており、さらに、本件契約書案の交付から本件終期条項の修正を踏まえて本件契約書への押印に至る過程を踏まえても控訴人が平成29年度以降の本件労働契約の更新を期待することの合理的な理由となるような事情は認められないなどとして、本件控訴を棄却し、また、非常勤講師としての有期労働契約が締結されていたと認めるに足りないとして、控訴人の当審における予備的追加請求を棄却した。

要旨

元特任教員は、ロシア語の教職課程では、有期労働契約の教員が専任教員として教職課程の担当になったことは過去になかったことから、教職課程の担当となることを依頼された元特任教員は、平成29年度以降も雇用継続への期待を持つことになった旨主張するが、元特任教員が主張するような過去の事例と有期労働契約を締結している元特任教員の労働契約の更新の問題とは客観的にみて関連性を欠くといわざるを得ず、また、元特任教員は、平成26年3月19日の本件説明会における理事の説明は、雇用継続への期待を抱かせるものであった旨主張するが、理事は、本件説明会において、平成29年度以降の雇用の可能性に対する質問に対して、元特任教員を含む特任教員の雇用継続は平成28年度末、すなわち平成29年3月31日までを念頭に置いており、同日までは雇用の継続が確実であるが、労働契約が1年ごとに更新される以上、2年後、3年後の雇用の継続を約束することはできない旨回答しており、このようなやり取りの経緯からすれば、理事が平成29年3月末で契約を打ち切ると断言しなかったからといって本件労働契約の更新を期待させることの合理的な理由となると評価することはできない。


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