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学校法人関西外国語大学事件(令和3年1月22日大阪高裁)

概要

被控訴人・学校法人が設置する本件大学の教員であり、かつ、控訴人組合の組合員である控訴人X1、X2、X3、X4、X5が、被控訴人から、平成29年1月17日付けで受けた懲戒(けん責)処分について、
〔1〕控訴人らが、被控訴人に対し、それぞれ自身に対する本件懲戒処分が無効であることの確認を求めるとともに
〔2〕被控訴人が本件懲戒処分の内容を本件大学のキャンパス内の4か所に掲示したことは、控訴人らに対する名誉棄損及び控訴人組合に対する不当労働行為に当たるとして、
控訴人らが、被控訴人に対し、民法709条に基づき、それぞれ損害の賠償請求及びこれらに対する遅延損害金の支払並びに民法723条に基づき、名誉回復措置を求め、原審が控訴人らの請求をいずれも棄却する旨の原判決をしたところ、控訴人らが控訴した。

結論

棄却

判旨

1.組合及び教員らは,A,B,C及びDが,学校法人との間で,義務として週6コマ,任意に週2コマを担当する旨の契約を締結し,Eについては,担当コマ数を週10コマとする内容の労働契約が締結されたものの,かかる契約は,継続して効力を有するものではなく,就業規則の定める労働条件を下回るものであるから無効であり,就業規則の定める週6コマの限度に減縮されると主張するが,教員らと学校法人との間の労働契約上,担当コマ数を週8コマとする旨(うち,Dについては週8コマと決定できる旨,Eについては週10コマとする旨)の合意をしたことが認められ,週6コマが義務としての担当であり,それを超える分は任意に担当するものであると解することはできないから,組合及び教員らの主張は理由がない。

2.組合及び教員らは,B及びCが,学校法人担当者あるいは部長から,入職に際し,委員会業務は一つに限定される旨の説明を受けているなどと主張し,委員会業務を1つに限定する合意が教員らと学校法人間の労働契約の内容となっている旨主張しているが,学校法人担当者がA及びCに対して採用時に,委員会業務を1つに限定する旨の説明を行ったとするA及びCの陳述ないし供述は,教員らの委員会業務の担当に関する客観的状況と符合せず,また内容的にも不合理なものであるから,信用できず,他にB及びCらの委員会業務を1つに限定する旨の合意があった旨の原告の主張に係る事実を認めるに足りる証拠はないから,B及びCと学校法人との労働契約の内容として,委員会業務を1つに限定する旨の合意があったとはいえない。

3.組合及び教員らは,本件36協定において,時間外労働をさせる必要のある業務の種類について,「事務」とのみ記載され,休日労働に関する内容のように「事務・教育」とは記載されていないから,本件36協定において,時間外労働をさせることができるとされている業務は,事務職員の従事する労働であって,教育職員の従事する労働ではないと主張するが,本件36協定は,時間外労働を行わせることができる対象となる労働者を「事務職員」及び「教育職員」,業務の種類を「事務関係」,時間外労働を行わせる具体的事由を「一時的な業務多忙」などと定めており,教員らは,「教育職員」として,本件36協定の対象になるから,教員らの労働時間が週40時間を超えたとしても,その事自体が直ちに違法であるということはできないこと等から,学校法人が教員らに発した本件業務命令を違法と解することはできず,また,本件業務命令の拒否をもって懲戒権を行使することが,懲戒権の濫用に当たるとも解されないから,組合及び教員らの主張は採用することができない。

4.本件争議行為は,組合及び教員らの団体交渉における担当コマ数を週6コマとするという要求を単に自力執行の形で実現する目的に出たものといわざるを得ず,また,態様においても,長期間にわたり業務命令が発せられている授業科目のうち特定の授業科目を担当せず,その結果,学校法人としては,その授業科目を,他の教員に担当させざるを得なくなったことに照らすと,本件争議行為は,その目的及び態様に照らして正当なものであるということはできず,また,本件とは別の争議行為は,本件争議行為と同様に,これによって団体交渉における交渉の行き詰まりを打開するなど団体交渉を機能させて要求を実現することを目的としたものとは認め難く,組合及び教員らによる委員会業務を1つに限定するという要求を単に実現する目的に出たものといわざるを得ないもので,態様においても,年度を通じて業務命令が発せられている委員会業務のうち特定の委員会業務を担当せず,その結果,これによって他の教員の負担が増加したことに照らすと,結果として学校法人の人事管理権を害するものといわざるを得ず,当該別の争議行為も,その目的及び態様に照らして正当なものであるということはできないから,本件懲戒処分が正当な争議行為に対してなされた違法無効なものであるということはできない。

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