美鈴かる

傾聴ボランティアさんに自分のとりとめもない話を聞いてもらいたいと感じる40代。 感じた…

美鈴かる

傾聴ボランティアさんに自分のとりとめもない話を聞いてもらいたいと感じる40代。 感じたことや、誰かに聞いてもらいたいことを書きとめます。

最近の記事

真冬の蝶

昨日、窓口に来た、初めて会う女性から聞いた話。 去年の10月、自宅の庭の山椒の木に、アゲハ蝶のサナギが付いていることに気がついた。 サナギのままでは冬を越すことはできないと、女性はかわいそうに思って、サナギが付いた枝を手折り、家の中で育てることにした。 そして、ついに今年の2月、サナギから美しいアゲハ蝶が羽化した。 突然、羽化したアゲハ蝶に、女性はパニックになり、慌てて市役所に育て方を問い合わせたところ、たまたま私が電話に出たそうだ。 わたしはそこまで聞いて思い出した。

    • 救急車を呼ばない覚悟

      今日は初めての訪問診療日だった。 難病の夫は自ら「積極的な治療は行わない」を選択をしている。 主治医と看護師さんが帰ったあと、目を通すように言われた資料を読んだ。 本人(夫)の希望どおりに、自宅で穏やかに最期を迎えらえれるポイントは、「いざというときに、あわてて救急車を呼ばないこと」だと書いてあった。 夫の同居家族はわたし一人。 夫の希望を叶えてやれるだろうか。 日本では、大半の人が病院で亡くなっているのに、少数派の在宅での看取りが、果たしてこのわたしに可能なのだろうか

      • 誕生日

         やっと9月も末になって寝苦しい夜が少なくなった。なので今朝は久しぶりに寝坊をした。休日のゆったりした朝だ。  ポストの新聞を取りに玄関のドアを開けると、ビニール袋に入った夏野菜が置かれていた。実家の母が残り少ない野菜を置いていってくれたのだ。袋をのぞくと、トマトやキュウリに埋もれるようにポチ袋が入っていた。もうすぐ来るわたしの誕生祝いも一緒に入れてくれたようだ。  ポチ袋には、母の字で「50才 お誕生日おめでとう 父、母より」、と表書きされていた。でも年齢が違っている。

        • 胃もたれと社会学部

           この夏、久しぶりに帰省した大学生の娘が、毎食、胃にもたれるものばかり食べたがるので、「ホットドッグを1個食べると、寿命が36分縮むって週刊誌に書いてあったよ」と遠回しにあっさりしたものが食べたいことを伝えた。  ところが娘は「えっ、それってどうやって実証したの。ほんとかな。生涯でいくつ食べて、寿命が何歳でって、どうやって確認して比較するの。嘘っぽいね。」と真顔で返された。  母は、もたれる胃を押さえながら思い出した。受験の前に社会学部で何を勉強するのか調べたら「批判的能力

          サンタクロースは糖尿病

          わたしの夫は、クリスマスの夜は必ずと言って良いほど家にいない。 やれ出張だ、やれ仕事で遅くなる、など理由は様々だった。 結婚当初、家族団らんのクリスマスを期待するわたしは不満に感じていたが、ここ最近は「夫はサンタクロースに違いない」と悟りの境地でいた。 そして、昨年のクリスマス当日。 夫は糖尿病で緊急入院することになった。 10年ほど前から糖尿病の薬を毎日飲んでいたのだが、日ごろの不摂生が祟ってか、食欲不振で痩せ始め、頻尿、喉の渇き、めまい、便秘と下痢を繰り返す、手足の先

          サンタクロースは糖尿病

          郵便局員

          娘の大学受験の願書が入った封筒を幾つも抱え、郵便局に向かった。 窓口で、いかにもベテランという感じの郵便局員が対応してくれた。 書留にしてもらうようお願いして待っている間、自信の無さそうな娘の顔を思い出し、「どれかひとつでも合格するといいなぁ」などと考えていた。 支払いのタイミングで郵便局員から「受験は大変ですよね。でも、合格してからはもっと大変ですよ。」と声を掛けられた。 確かに合格できたとしても、入学手続き、引っ越し、毎月の仕送りと親の負担は大きい。 ところで、どう

          郵便局員