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母のこと

母が亡くなってから長い年月が過ぎた
晩秋のある日、野菊が咲く小路を歩いている時にふと、うす紫が好きだった母を思い出しました。

四人兄妹の末っ子の甘えん坊だった私は母が大好きでした。
小学生の時、母の誕生日にプレゼントを買うためにお小遣いを握りしめて店に向かいました。
その店は化粧品店なのだけれど片隅に雑貨を置いていて、そこに並べられたハンカチが目に留まりました。

そこからうす紫の花の刺繍が施された白いハンカチを手に取った私。
これなら喜んでくれるだろう…そう思ってプレゼント用に包装してもらい、早く母に渡したくて家に急ぎました。

やはり母はとても喜んでくれました。
「私の好きな色の花…」
私はすっかり嬉しくなって心が満たされました。

ところが…
母が亡くなった後、姉から聞いて驚きました。その時私がプレゼントしたハンカチと全く同じものを実は姉もプレゼントしたことがあったそうです。
田舎で、そういうものを買えるお店は少なかったこともあると思います。
それを聞いて残念な気持ちもありましたが、そのことを私に言わずに喜んでくれた母の気持ちが嬉しく、温かい気持ちになりました。

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「亡き母に  抱かれるごとき心地して  野菊群れ咲く野の路をゆく」




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