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オープンキャンパスについて

OPとは

 オープンキャンパス(以下OPとする)は、その学校がどんなところなのかを進学する前に知ってもらい、入学した後に「こんなはずではなかった」と後悔しないための機会である。とはいえ、OPを経験せずとも学校選びに苦労しない人がいないわけでもない。
 例えば、例年4月頃に前年の新卒者の就職状況が徐々に報道される。そうすると、どこどこの有名企業にどこどこの有名大学出身者が何人入社したといった内容が自然と知るようになる。そして、このようにして知った知識を参考にして「自分はどこの大学へ進学しようか」「私の子どもはどこの大学へ行かせるべきか」というふうに大学受験に対する意識が強まっていき、受験先の学校を選ぶのである。この例から分かるように、一部の人はOPを経験せずとも学校選びができると言える。

 私が学生だった頃のOPは、それぞれの大学のオリジナルグッズを収集する機会であった。その大学オリジナルのクリアファイルや鉛筆、中には昼食を振る舞うところもあったと聞いたことがある(私はその恩恵を受けなかったが)。そうして持ち寄ったお土産を見せ合って、あそこの大学はケチ、ここの大学はセンスがある等と勝手に講評していた。ちなみに、最近の地方の私立大学の場合、OPは入学希望者を増やすために貴重な機会であると考え、バスを貸切ってツアーを企画するところもあると聞いたことがある。
 要するに、受験生側の視点に立てば「入学前後でのギャップを予防する」目的があり、大学側の視点に立てば「入学者増を促す」目的があるということになる。


理想と現実

 さて、このようなOPは、最近では夏休みだけに集中して開催されるものではなくなっている。一年の間で複数回が予定されている学校が目立つ。この背景には先ほど指摘した大学側の視点もあるだろうが、どちらかと言えば複数の学校を体験する機会を受験生に提供することによって後悔しない学校選びをして欲しいといった受験生側の視点が色濃く反映しているのだろう(と、一応言っておきたい)。

 しかし、そうすると冒頭で述べたように、その大学の卒業生がどんな就職をしているのかといった進路状況を確認すれば後悔することは少なくなるのではないかと気づくのではないか。確かに有名な大学へ進学すれば卒業後のの進路の可能性は比較的高いはずであるから、後悔しないかもしれない。それが合理的な判断であると言われれば、そのとおりであろう。正にそこには理想の未来がある。

 では、その大学へ進学した全員が同じ結果・果実を得られるのかと問うと、どうだろうか。答えは明確で、全員が同じ結果・果実を得られることはない。その原因は様々に指摘できるが、募集人員に限りがあることを指摘すれば十分であろう。その企業へ就職したい、その職種を得たいと希望する新卒者の数とその企業が雇いたい人数、その職種に必要とされる人数が等号(=)で成り立つことは理想でしかない。

 以上のことは、自分が進学したい考える学校についても同じことが言える。入学者数は決まっているから、受験した全員が入学できるとは限らない。そうだからといって、前年に定員割れをしている学校をあえて受験先に推薦する人がいるとも聞く。定員割れを解消しようと合格水準を下げるだろうから入学しやすいだろうというのである。しかし、これも絶対ではない。デマを解消するために書き留めておくと、受け入れる学校の立場からすれば「入学後に、弊学の授業についていけるかどうか」を中心に評価するのが大前提であって、そのために一期一会、一人ひとりの受験生と向き合って合否の判断をしている。

 したがって、月並みではあるが次のように言われることは意識したい。すなわち、第一志望に合格することを目標にすべきであるが、第二志望および第三志望でも、例えば卒業後のなりたい自分の姿などを想像し目的をもって選ぶべきである。

OPで確認したいこと

 以上の枠組みを前提にすると、これから皆さんが参加するであろうOPにおいて、オリジナルグッズ集めやツアーを楽しむことも大いに大事であるが、その合間に次の点を確認し、後悔しない学校選びを進めて欲しい。

 第1に、ドア・ツー・ドアのトータルの時間を有効活用できる学校を選ぶことである。自宅を出発し、バスや電車等の移動手段を使って大学へ行って授業を受け、授業後に友人知人と遊んだり、バイトをしたりした後、自宅に帰るまでの経路を確認して欲しい。
 私の教え子にも大学まで2~3時間かけているという学生が毎年いる。卒業後に自分の希望する職業、職種に就いた人の多くは、トータルの時間の中にあるスキマ時間を有効活用していたことが印象に残っている。自宅生で通えるところ、あえて下宿生となった子もいる(保護者の方の金銭的な支援にも敬服するが、その支援を感謝しながら自分の夢を実現した教え子に素晴らしいなと今でも思っている)。

 第2に、その学校で自分が実現する目的を見つけることである。「自分を探す」という自分探しも立派な目的である。しかし、そこから先が問題である。(可能な限りOPに参加している最中だけでも良いので)探し当てた自分がその学校でどのように成長し卒業していくだろうかを想像して欲しい。その為に多くのOPでは「進学相談会」「個別相談会」が実施されている。
 たとえば、公務員になりたいという目的があるとしよう。最近の学校の周囲や駅前には、大なり小なりの資格試験予備校を見つけられる。前述したトータルの時間を前提に通学するという、所謂「ダブル・スクール」という対策もないわけではない。しかしながら、予備校の学習方法がハマる人もいれば、ハマらない人もいる。後者の多くは、そもそも勉強したことがない。学習の方法が分からない。そうすると、ダブル・スクールは無駄な金銭を支払うだけの徒労に終わる確率が高くなる。どうすればよいだろうか。

 そこで、第3に確認すべきことが役に立つ。有名な学校はその雰囲気や過去の実績からの経路依存性が働くし、一定程度以上の学習の方法を知っている学生たちが集まっているため「勝手に成長していく」。一方、有名でない学校は、どういう学生が集まるかを観察し、入学する学生たち一人ひとりを、どのように導いていくかを試行錯誤している。
 たとえば、1つの理想は「学生に無理矢理の意識をもたせず学習できる習慣をつけさせる」仕組みを導入している学校であろう。そうして伝統的なスタイルが確立すると、有名な学校と同じように一定の雰囲気や過去の事績から経路依存性が働き始め、それが一定以上の学習の方法を知っている学生たちが集まる学校へと変貌していくことになる。つまり、このような将来的な計画を示している学校を選ぶ。できれば、受験生(つまり皆さん)の目線で計画が示されている学校について知って欲しいし、調べて欲しい。

OPで会いましょう

 以上3点ほど確認すべきことを書いてみた。今年のOPのどこかで、皆さんと会えることを楽しみにしている。そして、皆さん一人ひとりが、後悔しない学校選びという目的を達成できるよう祈念してやまない。

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