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「カネのために生きる」はアリか? 貧困東大生が今の子どもたちに伝えたい視点 

みなさん、こんにちは。
現役東大生ライターの布施川天馬です。

みなさんは「お金のために働いています」という人がいたら、どんな印象を受けるでしょうか?

お金を稼ぐために働いているのだから、当然だと思う方もいらっしゃるでしょう。もしかしたら、「お金を稼ぐためだなんて、そんな不純な動機で仕事をしてはいけない」と思う方もいらっしゃるかもしれません。働くということをテーマにすると、これには多くの意見が寄せられます。

しかし、これを「勉強」にするとどうでしょうか。

「私は、お金のために勉強しています」というと、途端にみなさん手のひらを返して「それはいけない」と言い出す人が増えるのです。

どうもみなさん、勉強には高潔で純情なイメージを抱いている節があるように、私には思えます。しかしながら、それはもしかしたら、あなたが知らず知らずのうちに大変裕福な暮らしをしていたからこそかもしれません。『ドラゴン桜外伝 エンゼルバンク』の五巻に収録されている、あるシーンからもそのような意見が読み取れます。

『ドラゴン桜』にて英語教師として登場した元教師の井野は、元教え子の水野が働いているというカラオケスナックを訪れます。そこでは今や現役東大生となった水野が、きれいなドレスを身にまとい、連日満員に詰めかけるお客をさばいていました。

驚く井野に対して、水野は言い訳するように言います。「家庭教師するよりも稼げるからこのバイトを選んでいる。お金に困っているわけではないが、お金が必要だから、あえてこのバイトを選んでいるのだ」と。

それでも何か裏があるのではないかと勘繰る井野に対して、水野は将来の進路について語り始めました。彼女は、東大卒業後は外資系の企業へ就職するといいます。その理由はただ一点。

給料がいいから。

給料がいいという理由だけで将来の進路を決めようとする水野に対して井野は言いようもない抵抗を感じます。そして、どうにか諭そうとしますが、水野は聞く耳を持ちません。

なぜなら彼女には「裕福な家の生まれの子は志を基に生きて、貧乏な家の生まれの子は野心と金銭勘定を基に生きる」という哲学があったからでした。

元々貧乏な境遇が嫌で、そこから抜け出したいと考えていた水野には、何はともあれまずは「お金を稼ごう」という強烈な意識がありました。

研究者や官僚になって、稼げなくとも世のため人のために生きるという発想は、元からなかったのです。貧乏な境遇を跳ね返し、世の中を見返すために東大に行った水野ならではの発想でした。

世のため人のために頑張る方は、確かに素敵な方でしょう。しかし、そうでなかったからといって、その人を責める理由にはなりません。

勉強や労働の目的がお金であったからと言って、誰が彼、彼女を責められるでしょうか? 僕自身もお金を稼ぐことを唯一の目的として東京大学に入学しましたから、水野の気持ちは痛いほどよくわかります。

僕は、将来について暗い話題が多い現代だからこそ、このコマの重要性はより高まっていると思います。今の子どもたちにとって、将来とは決して明るいものではないからです。

「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)」の調査による、「”今”の人生の満足度はどれくらいなのか?」という質問によれば、「現状満足しているか?」という問いに対する日本人の平均的な回答は2005年で27位でした。

しかし、これが2020年には61位まで落ち込んでおり、さらに「”5年後”の人生の満足度はどれくらいなのか?」は、もともと70位であったのが、2020年には122位にまで落ち込んでいるのだそうです。

これは、すなわち「日本人全体の現状に対する満足度と、未来に対する期待感が落ち込んでいる」ということを表しています。

この幸福度は、世界的にみても低い基準にあります。しかも、それだけではなく、年長者よりも若者の方が低い幸福度になる傾向にあるといいます。すなわち、日本人の若者は、いまではなく未来に絶望しているのです。

未来に明るい見通しが持てない中で、将来の暮らしを明るくするために頑張ろうといわれても、頑張れるはずもありません。だからこそ、現代の子どもたちは、社会的な意義を掲げるのではなく、もっとエゴイスティックに「自分の暮らしを守るため」に戦ってもいいのではないでしょうか。

『ドラゴン桜』のシリーズでは、一貫して社会を一人で生き抜いていくための現実的な視点が付加されていました。

この視点がより多くの子どもたちに伝われば、きっと将来の自分の暮らしを明るくするために頑張ろうという気になる子どもたちも出てくるでしょう。意外と、日本の再建はそのようなところから始まるのかもしれません。

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