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肉を科学し、五感で対話する夜 〜サイエンス夜話 Meat Tech編 イベントレポート〜

こんにちは、ミテモの高橋昌紀です。
10月4日(木)夜に開催された「サイエンス夜話 第四夜 うま味と脂味を科学する Meat Tech編」というイベントに参加してきましたので、そのレポートをお届けします。

サイエンス夜話とは、ミテモの乾善彦さんが、「平日仕事終わってから、サイエンスについて真剣に学べるような場があれば、楽しそう。」という思いつきから立ち上げたシリーズ企画です。

4回目となる今回は、はじめての有料イベントとなりました。
なぜ有料なのでしょうか?
それは、サイエンスについて知ることだけでなく、味わうことも今回のイベントのメインでもあるからです。

味わうべきは、肉。分厚い牛肉のステーキ。

科学と牛肉が、いかに橋渡しされたのか?
文章と写真で可能な範囲で、お伝えします。
味と香りと食感は、ご想像ください。

***

今回のイベントの水先案内人は、食に関わるこのおふたり。
株式会社ペリーCEOの中山智博さん。そして、ふだんは会社員をしながら、だし研究家でもある澤村詩織さん。

会場は、東京・神田の「風土はfoodから」という食堂型ミュージアムです。
総勢30名ほどの参加者が集まりました。

イベントは前後半の2部に分かれました。

前半は、まず中山さんから、牛肉の生産と流通における要点と課題、そして今回の肝である「肉のうまさの科学」について、講義していただきました。

こちらが、中山さん。サイエンスの雰囲気を出すために着用されたという白衣が、キマっています。

中山さんのお話は、こんな流れで進みました。

15年間のサラリーマン生活を経て起業し畜産、精肉事業を始めるに至ったのはなぜか。
肉の生産の仕組み、そして流通経路と市場価格形成はどうなっているか。
特に価格を大きく左右する、「格付け」という仕組みに内在する問題とはなにか。
中山さんが実現したい肉の生産、評価、流通のあり方、市場の作り方はどのようなものか。
その過程において重要となる「うまさ」の基準づくりとその評価運用に、どのように科学と技術を活用するか。

この多岐にわたるトピックとその莫大な情報量を、素人にもわかりやすく、楽しく説明してくれる中山さんの伝える力があまりに素晴らしかった。あっという間の1.5時間でした。
あの場にいることができて、幸せでした。

参加者たちは、中山さんのお話に真剣に聞き入っています。

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さて、お話を聞いていて、私がワクワクしたことは主に2つありました。

ひとつは、自分の知ることのなかった牛肉のビジネスの裏側を知ることができた、という知的好奇心の満足です。
特に、「A5、A4などの肉の格付け評価と、肉のうまさには、直接の関係がない」という真実には唖然としました。
今まで、A5の肉は格付けが高いから旨いのだろう、と信じていたのですが、それは業界に対する無知による誤りだったわけです。
プロが知っていて、素人が知らない真実。スーパーマーケットの精肉コーナーや飲食店のメニューなど、ごく身近にあったのだ、というそのこと自体の驚きが大きかったのです。

もうひとつは、中山さんの力強い信念と、それを形にするための事業の一貫性、というべきものです。
本当にうまい肉が評価され、私達がそれを選んで食べることができるような未来をつくるため、科学と技術を駆使し、基準をつくる。そして、基準をもとに価格が形成されて機能するマーケット自体を作っていく。
言葉にするだけなら容易ですが、前例のないこのやり方に取り組むことは、相当な「ハード・シングス」であろうことは想像できます。
柔らかな語り口でプレゼンされる中山さんの持つ、熱いハートと明確なロジックに、シビれました。
有り体にいえば、ファンになってしまいました(笑)。

中山さんのレクチャーの最後には、質疑応答タイム。それまで真剣に聞き入っていた参加者たちからは、たくさんの質問が出ました。
深く刺さるインプットを受けると、活発な質問が次々と出るものだ、というのを目の当たりにして、それにもまたびっくりしました。実は、私も気がついたら手を挙げて質問していました。

みな、真剣です。学びに没頭するというのは、こういうことかもしれません。

そして、イベント前半の最後は、お待ちかねの「肉の食べ比べ」です。鉄板の上で肉を焼き、味付けは塩だけで食べます。レクチャーを通して学んだ「品種ごとによるうまさの違い」を体感するのが目的です。

中山さんの取引のある牧場で生産される食用牛の品種のうち、次の4つをご提供いただきました。
なかやま牧場和牛、なかやま牧場ホルスタイン、なかやま牧場ホルス黒、ルミノ牧場ジャークロ。

品種ごとの違いだけを明確に感じることができるように、肉の月齢、部位はほぼ統一されています。そして、焼き具合もレアにしています。これぞ、「科学」な、こだわりです。

それぞれの肉のうまさの違いをどのように記述するか、については力不足で表現が難しいので、今回はパスさせてください(汗)。
参加者たちが肉をテイスティングしている写真を見ていただき、どのような雰囲気だったかを感じていただければ幸いです。

さて、イベントの後半は、会場「風土はfoodから」の1階に舞台を移します。
後半の主役は、だし研究家の澤村さん。
澤村さんが作ってくださった、肉の特長を引き出した料理に舌鼓を打ちました。

この日のために、中山さんと打ち合わせして、肉の品種ごとのうまさの違いを学び、それを活かす料理を考案して、2日かけて調理されたとのこと。プロのエピソードに、頭が下がります。
申し訳ないことに、澤村さんご本人のお写真を取り損ねてしまいました。
本当に素敵な笑顔で、参加者たちに美味しい料理で幸せを届けてくださったことに深い感謝しかありません。

肉のことを知り、考える。その上で、肉を食べる。
肉についてのテクノロジーや、肉のマーケットについて学び、対話する。そして肉の良さが引き出された料理を楽しむ。
これが真の意味での「肉尽くし」なのかもしれません。本当に稀有な体験でした。

中山さんが描く「ほんとうにおいしい肉が評価され、流通して、食卓に載る」世界が実現するということは、実は私達ひとりひとりが肉と、そこにまつわる人や仕組みのことを知ろうとすることが当たり前になっている、という状態でもあるのかもしれません。
そう考えると、私自身が、ただの消費者ではなくて、「食品と業界のことを興味を持って知り、学び、それについて対話する。そして、知識をもとに商品を選び、食を楽しむ」という姿勢を持つことが大事なのだ、と気づきました。

五感を通じて、学びが巡る夜でした。
中山さん、澤村さん、本当にありがとうございました。

最後に、参考リンクを貼っておきます。

中山さんの経営される株式会社ペリーのWebサイトはこちら。
https://perry.co.jp/

ペリーが手がける、最高級塊肉を届けてくれるサービス「Hello, Stranger」のサービスサイトはこちら。
500gから、肉をデリバリーしてもらうことができます。
https://hsmagazine.theshop.jp/

Webメディア "LOCAL LETTER"さん掲載の中山さんのインタビューはこちら。
中山さんの思いを、さらに知ってみたくなった方はぜひお読みください。
http://localletter.jp/hiroshima-meat-perry/ (前編)
http://localletter.jp/hiroshima-meat-perry-2/ (後編)

最後に、こころよく会場を提供くださり、そしておいしいフードを提供くださった「風土はFoodから」さん、ありがとうございました。
http://bunkai-san.jp/fudofood/

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さてさて、次回のサイエンス夜話は、いったいどんな学びと出会えるのか?
今から、楽しみです。


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