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最近読んだ本まとめ②

儚い羊たちの祝宴/米澤穂信

夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。

基本的に通勤中の電車の中で読書をするので、短編集が読みたいなあと思って買った。

どれもお金持ちの家の話で、暗黒ミステリとうたわれているようにどれも後味悪めのブラックな話だった。ミステリではあるけれど、犯人やトリックではなくて話のブラックな雰囲気を楽しむような作品だった。

そしてどれもラスト一行の衝撃にこだわったらしいのだけど、その意味でいったら最初の「身内に不幸がありまして」がうわっ!ってなったな。それ以外の話もすごく面白くて、またこの作者の作品を買いたいなと思わされる1冊だった。

鏡は横にひび割れて/アガサ・クリスティー

新興住宅地が作られ、セント・メアリ・ミードの風景もどんどん変わってゆく。だがミス・マープルの好奇心だけはいつも変わらない。有名女優が村に引っ越してきて、いわくつきの家に住み始めた。その引っ越しパーティの席上、招待客が死亡してしまう。永遠の名老婦人探偵マープルが謎に挑む。

ホワイダニットに定評のある作品ということで購入。

有名女優が開いた歓迎パーティーで、ある平凡な主婦が殺されるのだけど、その人は親切な良い人でとても殺されるような人ではない。もしかしたら被害者は有名女優の代わりに殺されてしまったのかもしれない、などと疑惑が疑惑を呼ぶようなストーリー。

やっぱりクリスティーはハズレないなあ。どれもめちゃくちゃ面白いなあ。結局犯人らしい人が犯人だし、ちゃんとヒントもばらまいているのに、それを気づかせないミスディレクションの上手さがすごすぎるよね。タイトルも読み終わった後になるほど……と思わされる。

そして定評通り動機にあっと驚かされた。うわそこか……と思ったし、切なさというか物悲しさが残るような読後感だった。

クリスティー作品色々読んでいるのだけど、だいぶ大昔に書かれた作品なのに一切古臭さを感じないのがすごいなぁと思う。本当に読みやすい。

ハッピーエンドにさよならを/歌野晶午

夏休みのたびに私は母の実家がある田舎へ行った。新鮮な山海の料理に、いとこたちとの交流。楽しい夏の日々だ。あの部屋にさえ入らなければ…。(「死面」)理恵が合コンで出会い、付き合ったのは、容姿はよいがかなり内気な男。次第に薄気味悪い行動を取り始め、理恵は別れようとするのだが…(「殺人休暇」)。平凡な日常の向かう先が、“シアワセ”とは限らない。ミステリの偉才が紡ぎだす、小説的な企みに満ちた驚愕の結末。

こちらもミステリー短編集。儚い羊たちの祝宴に引き続き、どれもブラックで後味の悪い話だった。タイトル通り。

個人的にミステリとして好きなのは、働かない夫のために身を粉にして働く妻がついに夫を殺してしまう「サクラチル」と、男子高校生が死体のフリをして川を流れる遊びをしていたところ、その高校生の仲間が殺されてしまう「玉川上死」

叙述トリックとして好きなのは、ホームレスを描いた「尊厳、死」。これは最後の文章にやられた!と思った。先入観ってすごい。

あとは合コンで知り合った男にストーカーされる女性が主人公の「殺人休暇」は最後の1行にゾクっとさせられたし、受験戦争に身を投じる親子を描いた「防疫」は母親の毒親ぶりがヤバすぎて読んでいて辛かったな……。ラストの後味の悪さも見事だった。

スカッとする話はないけれど、ブラックさが光っていてとても楽しめた。

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