見出し画像

第63回 カウンセラーのTシャツと言葉のサラダ ギャンブル依存とこころの光と影

カウンセラーとスタッフの日常会話の記録です。
 
Mi代表:深層心理学が専門のカウンセラー。Mitoce代表。
すたっふ:カウンセラー見習いのスタッフ。少々オタクらしい。


Mi代:先日、大リーガー日本人選手の通訳だった方がつかまりました。ああいう事件が起こったとき、カウンセラーとしてはいろいろと考えるのですが。すたさんはどのように考えましたか?

すた:ああ、あの方はギャンブル依存だったようで。依存症ってなると、本人は止めたいと思っていても、やめられなくなる。そういう状態になっていたのかなと思います。

Mi代:そうですね、ギャンブル依存に限らず、依存症の方々にみられる状態像と重なる部分がいくつも報道されていました。
依存症になると、自分ではその行動を止められなくなります。今回であればギャンブル依存症だとすればですが、ギャンブルをどうやって続けるかばかりを考えてしまって、それ以外の善悪について判断があまりできなくなってしまう。ギャンブルのためには嘘をつくし、自分の行動を隠すし、お金を盗む。いつかばれると思っていても、もう止められないんですね。そういった状態の方を「倫理的な問題」「犯罪をしている」などと責めても、本人もわかっていたけど止められなかった。それが依存症状態の怖さです。これはアルコール依存や薬物依存にも見られる行動の特徴ですね。

すた:怖いですね。

Mi代:はい、とても怖いです。それが依存症です。

すた:どうにかできなかったのでしょうか。

Mi代:その辺りが難しいところで。結局は依存状態にある人は、それが続けられない状況に陥ることで、ようやく止めないと仕方なくなる。こういうパターンはよくあります。自分で気づいて止める、ということはかなり難しい。もちろん例外はありますが。

すた:でも依存症になるって、なにか心の状態としてあるのではないですか?

Mi代:そうなんですよ、そのあたりが深層心理学の観点から私が気になっていることです。というのも、こころにはかならず光と影があるとされるからです。それがかならずセットになっているので。

すた:光と影?

Mi代:はい。というのも今回、話題になった大リーガーの選手はいわゆる光の集まりのような方です。スポーツ選手としても大きな結果を生んでいますし、普段の生活も品行方正で、性格も良いとされています。まさに光の化身みたいな素晴らしい人です。
しかしながら、私のような闇属性にいる人間は少し気になるんですね。あのような光の傍にいるのは苦しくないのかなと。近くにいる人の光が強すぎると、自分の闇がかえって強調されてしまってしんどくなる。そのようなことを連想しました。もちろん、いつも言うように当事者に確認を取っていないなので、あくまで私の解釈の一つですが。
アベンジャーズ好きのすたさんも、このあたりの心情が想像できるのではと思って。というのもアベンジャーズのような光にまみれた人の傍にいるとしんどくなるという話を知っているかもと思って。

すた:ああ。でも私だったら、べつにしんどくないですよ。あんなに光いっぱいの人だったら、サポートしようと思うだけですからね。そこに「自分も何か達成したい」という欲が出てくるとしんどくなるかもしれませんが。サポートに徹するようだったら、別に葛藤は出ないと思います。

Mi代:ああ、なるほど。自分というのが出てくると、光と比べてしまうのでしんどくなる。

すた:それはそうでしょうね。

Mi代:何か今回の事件における大切な解釈の一つかもしれませんね。選手の横で「自分も何か達成したい!」と思うと、それこそ光に圧倒されてしまう。

すた:その辺りの話は、アベンジャーズだったら、マイティ・ソーの話にあります。ソーには義理の弟がいて、それがロキなんですが。幼い頃からソーと比較されてきて、ロキはダメな人とされてきました。でもソーはそれに全く気付いていなくて。
ロキは変身したり、ソーをだましたりします。ソーってとても賢くて、強いはずなのに、どこか抜けているんですね。それを出し抜いて、ロキはソーを貶めようとする。ソーの父親を変身させて、地球の老人ホームに入れてしまうこともあります。しかもそれをソーは気付かない。そういった無頓着な部分もあって。それは今回の選手とも重なりますね。

Mi代:とても面白い観点ですね。ロキって、北欧神話ですよね。北欧神話に出てくる神様をモデルにしてソーの話ってできていましたよね。
深層心理学では、北欧神話のロキはいわゆるトリックスターとされます。神話学によるとトリックスターとは盗人であって、変化自在。それでいて世界に新しいものをもたらしたりする特別な存在を指します。北欧神話でもロキはとても大切な役割ですが。こういうことを考えていくと、野球選手のまわりにトリックスター的なものが動いていて、大きな変化もたらしたといえるかもしれない。これはJung心理学でいう元型の話ですが。丁度、結婚が発表されたあとの事件だったので。選手のまわりでは大きな変化が起きていた。

すた:でもソーのときは、弟のロキは最後に殺されてしまいます。

Mi代:神話でもトリックスターの顛末をみると、最後はトリックスター自身はひどい目に合うことが少なくありません。今回ももちろん被害に遭った選手の心情も気になるところですが、盗みを働いてしまった通訳の方の今後の人生も気になるところです。
カウンセリングとは結局は人間の光と影、どちらの側面にも注目をし続けないといけません。いわゆる社会的に制裁を受けるようなことを体験された方であっても、その後、どうなったかを考えます。カウンセリングには人生の中で大きな失敗をしてしまった方も多く来られるので、光の側面も大事ですが、影の側面も大切にしないといけない。

すた:そうなるとカウンセラーの影はどうなのですか? さきほどMi代表が自分も闇属性といいましたが。

Mi代:カウンセラーは光というよりも闇の人だと私は思っています。
カウンセラーは人の悩みを解決していく光のような存在だとみられることもあるのですが、私はそうではないと思っています。どちらかというと他人の光に焦点を当てる一方で、自分が影の存在として相手の影を引き受けていく必要がある。そのためには自分自身の光の部分だけでなく、影の部分をしっかりと見ておかないといけないと思っています。自分に光を当てすぎると、結局影がクライエントの方に移ってしまう。それではカウンセリングにはならないので。クライエントの影の部分を引き受けていくと同時に自分の影もしっかりと見つめていく。そのなかでようやく、影からクライエントの光の部分を支えることが出来るかと思います。
この「影から」というのは象徴的な物言いになりますが、あまりカウンセラーが「私がクライエントを支えています!」と表に出て光を浴びるのは、私は好きではないですね。あくまでカウンセラーは闇の住人で、影まみれに暮らさないといけないかもしれない。 

すた:そうなると、Mi代表は自分の影を自覚している? 

Mi代:自覚するように心がけていますが、それほど簡単ではないですね。自分の影を自覚するというのは。

すた:ああ、それならよかったです。私がここでいつも指摘している「Mi代表はオタクだ!」という話はいつもMi代表の意識の影に追いやられてしまうようなので。影を自覚していないということを、きちんと理解されているようなので良かったです。

Mi代:いえいえ、私はそれほどオタクではないという自覚があって。

すた:ではなぜ、この春から始まった新作アニメでおススメはないですか?という質問をするのですか? フリーレンを喪失したので、それに代わるアニメがないかって聞いてきたじゃないですか!

Mi代:あくまでそれは現代の流れに取り残されないようにしていきたいという、学術的な理由からです…。

すた:それならわざわざフリーレン喪失だと、言及しなくてよいじゃないですか。まだまだ影との向き合うことは難しいようですね。

Mi代:影はあくまで影で居続けるから良いんですよ。光を当てすぎると影が遠のくので。

すた:それは自分にオタク要素があると認めたってことですか!?

(にやっと笑みを浮かべてMi代表は去っていく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?